電子添文には、特定の背景を有する患者に関する以下の記載があります。
9.特定の背景を有する患者に関する注意(引用1)
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.1.1ペニシリン系又はセフェム系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
交叉アレルギー反応が起こるとの報告がある。
9.1.2本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質の患者
9.1.3経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏症があらわれるおそれがある。
9.2腎機能障害患者
投与量を減ずるか、投与間隔を開けて使用すること。血中濃度が持続する。
9.5妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中へ移行することがある。
9.8高齢者
次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
・本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高齢者の体内薬物動態試験で高い血中濃度が持続する傾向が認められている。
・ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。
【関連情報】
インタビューフォームには、特定の背景を有する患者に関する以下の記載があります。
■合併症・既往歴等のある患者(引用2)
(解説)
・ペニシリン系又はセフェム系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
β-ラクタム剤(ペニシリン系又はセフェム系抗生物質)によって過敏症の既往歴のある患者に別のβ-ラクタム剤を投与した場合、交叉アレルギー反応が起こるおそれがあるので、準拠して設定した。
・本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質の患者
一般に気管支喘息やアトピー体質の患者では薬物アレルギーの頻度が高い。これらの体質は遺伝的要因が大きく関与しているといわれ、健康な家系に比べ薬物アレルギーの発現頻度が有意に高いという報告があり設定した。
・経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
ビタミンK欠乏の原因はビタミンK供給の減少とビタミンKの異常消費が考えられる。供給の減少はビタミンK摂取不良とビタミンKを合成する腸内細菌の減少あるいは消失(抗生物質による殺菌作用のため)が原因であるといわれている。異常消費はβ-ラクタム系抗生物質のうちN-メチルテトラゾールチオメチル基をもつ抗生物質に起こると考えられている。したがって、通常の摂食状態にない上記の患者では、β-ラクタム系抗生物質の投与によりビタミンK欠乏症があらわれやすい。以上の理由で設定した。
■腎機能障害患者(引用3)
(解説)
腎障害のある患者(Ccr0~30mL/min)では尿からの本剤の排泄が遅延し、血中濃度が腎機能正常者に比べ長時間高濃度に持続するとの報告があるので、投与量を減ずるか、投与間隔を開けて使用すること。(引用4)
■妊婦(引用5)
(解説)
妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
■授乳婦(引用6、7)
(解説)
本剤1g単回静脈内投与後の乳汁中濃度は投与3時間後にピークに達し、平均0.56μg/mLを示した(5例)。以降緩やかに低下し、投与6時間後では平均0.25μg/mLであった。(引用8)
■高齢者(引用9)
(解説)
〔参考〕外国の添付文書(2019年版)には、以下の記載がある。
Dosage in the Elderly
Renal status is a major determinant of dosage in the elderly; these patients in particular may have diminished renal function. Serum creatinine may not be an accurate determinant of renal status.
Therefore, as with all antibiotics eliminated by the kidneys, estimates of creatinine clearance should be obtained and appropriate dosage modifications made if necessary.
高齢者の投与量
高齢者では腎の状態が投与量を決定する大きな要因であり、特にこれらの患者では腎機能が低下している可能性がある。血清クレアチニンは腎状態の正確な決定因子ではないかもしれない。
したがって、腎臓から排泄されるすべての抗生物質と同様に、クレアチニンクリアランスの推定値を入手し、必要に応じて適切な投与量の変更を行うべきである。
【引用】
1)アザクタム注射用0.5g・1g電子添文 2024年6月改訂(第2版) 9.特定の背景を有する患者に関する注意
2)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (1)合併症・既往歴等のある患者
3)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (2)腎機能障害患者
4)水野全裕ら:日本化学療法学会雑誌,1985;33(S.1):126-131 [AZT-0041]
5)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (5)妊婦
6)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (6)授乳婦
7)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VII.薬物動態に関する項目 5.分布 (3)乳汁への移行性
8)高瀬善次郎ら:日本化学療法学会雑誌,1985;33(S.1):891-899 [AZT-0127]
9)アザクタム注射用0.5g・1gインタビューフォーム 2024年6月改訂(第9版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (8)高齢者
【更新年月】
2024年12月