電子添文にはQT延長について以下の記載があります。
8. 重要な基本的注意(引用1)
8.2 QT間隔延長があらわれたとの報告があるので、投与開始前は心電図検査及び電解質検査を行うこと。本剤投与中は適宜心電図検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。
QT間隔延長について乳癌の適正使用ガイドには悪性軟部腫瘍の情報も含め以下の記載があります。(引用2)
■まとめ
〈乳癌:臨床データ〉
●乳癌患者を対象とした国内臨床試験(221試験※1)および外国臨床試験(305試験※1)において、QT間隔延長は認められませんでした。
●乳癌患者を対象とした製造販売後の国内の自発報告において、アントラサイクリン系薬剤による心筋障害(心不全)を合併している患者に、それに伴う重篤なQT間隔延長が1例認められ、外国の自発報告において、重篤なQT間隔延長が2例認められました。
●国内外の臨床試験および国内外の製造販売後の自発報告において、QT間隔延長による安全性上の懸念点であるトルサード ド ポアントの発現は認められておりません。
〈悪性軟部腫瘍:臨床データ〉
●悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験※1)において、Grade2のQT間隔延長が1/51例(2.0%)認められました。
●悪性軟部腫瘍患者を対象とした外国臨床試験(309試験※1)の本剤群において、QT間隔延長が14/226例(6.2%)認められました。Grade3以上のQT間隔延長の発現が5/226例(2.2%)認められており、投与中止に至った患者も1/226例(0.4%)認められました。その多くは、一過性のQT間隔延長であり、他の要因が影響を及ぼした可能性も示唆されました。
〈投与に際しての注意事項〉
●投与前は、心電図検査および電解質検査※2を行い、心機能の状態を把握してください。
●投与中は、適宜心電図検査を行うなど、観察を十分に行ってください。
●異常が認められた場合には、適切な処置を行ってください。
※1 乳癌患者を対象とした国内臨床試験(221試験)および外国臨床試験(305試験)、また悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験)および外国臨床試験(309試験)において、12誘導心電図測定の回数は異なります
※2 電解質検査の対象はカリウム、マグネシウム、カルシウムなどが考えられます[参照:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)]
[参考]各種臨床試験の12誘導心電図の測定回数
米国の乳癌承認時の添付文書にQT間隔延長の記載があることから、その後実施する試験ではQTを頻度高く測定することとしました。下記のうち、悪性軟部腫瘍試験が該当します。
■発現状況
悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験)において、51例中1例1件の心電図QT延長の副作用が認められました。
悪性軟部腫瘍患者を対象とした外国臨床試験(309試験)の本剤群において、226例中14例20件の心電図QT延長の副作用が認められました。なお、一過性のQT間隔延長が多く、発現時期に一定の傾向はみられませんでした。
[参考]ベースラインからQTcF増加量60msecまたは投与後のQTcFが500msecを超えた患者
心電図QT間隔延長のうち、ベースラインからのQTcF増加量が60msecまたは投与後のQTcFが500msecを超えた悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験)および外国臨床試験(309試験)の本剤群の結果は下記の通りでした。
●悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験)の51例において、上記に該当する患者は、非重篤のGrade2の1例1件であり、本剤の用量変更なく継続投与し回復しました。
●悪性軟部腫瘍患者を対象とした外国臨床試験(309試験)の本剤群226例において、上記に該当する患者は6例10件であり、Grade1が2例、Grade2が2例およびGrade3が2例で全て非重篤でした※。なお、これら6例の患者はいずれも本剤の用量変更なく継続投与し回復しました。
●悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内臨床試験(217試験)および外国臨床試験(309試験)の本剤群の上記患者のほとんどは、電解質異常[低カリウム血症、低マグネシウム血症]、有害事象(悪心、嘔吐、下痢)、不十分な食物摂取/食欲不振またはQTc延長作用を有する薬剤の併用、心筋障害作用を有する薬剤の投与歴などが認められました。本剤の投与前・投与中には十分な経過観察と事象発現時には適切な処置を行ってください。
※最もGradeが高いものに分類した
【引用】
1)ハラヴェン静注1mg電子添文2022年1月改訂(第1版) 8. 重要な基本的注意 8.2
2)【手術不能又は再発乳癌】ハラヴェン静注1mg適正使用ガイド IIIその他の注意すべき副作用 QT間隔延長 p19-22(DI-J-806)
【更新年月】
2024年10月
【図表あり】