電子添文には、禁忌に関する以下の記載があります。(引用1)
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.1消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍を悪化させることがある。]
2.2重篤な血液の異常のある患者[血液異常を悪化させることがある。]
2.3重篤な肝機能障害のある患者
2.4重篤な腎機能障害のある患者
2.5重篤な心機能不全のある患者
2.6重篤な高血圧症の患者
2.7重篤な膵炎の患者
2.8本剤の成分又はインドメタシン、サリチル酸系化合物(アスピリン等)に過敏症の患者
2.9アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者[重篤な喘息発作があらわれることがある。]
2.10妊婦又は妊娠している可能性のある女性
2.11トリアムテレンを投与中の患者
【関連情報】
インタビューフォームには、禁忌に関する以下の記載があります。(引用2)
禁忌内容とその理由
(解説)
■非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の消化管障害の機序は、
1)プロスタグランジン(PG)生合成抑制作用
1.胃粘膜血流減少 2.胃液分泌増加 3.粘膜の抵抗性低下
2)消化管粘膜に対する直接的な局所刺激(引用3、4)
といわれており、消化性潰瘍を増悪させるおそれがある。
■ピラゾロン系薬物には、顆粒球減少等の血液障害があることは広く知られている。それを基礎に発展してきたNSAIDsにも血液障害の危険性がある。(引用4)
■薬物代謝が低下し、薬剤の作用が増強される可能性がある。また、NSAIDsの肝障害はアレルギーによることが多いため、このような患者にNSAIDsを投与すると、更なるアレルゲンとして感作されやすくなり、肝障害を悪化させる可能性がある。(引用3、4)
■薬物の排泄が低下し、体内に蓄積が起こり、作用が増強される可能性がある。また、酸性NSAIDsの腎におけるPG生合成抑制により、腎血流低下や尿細管再吸収促進によるNa、水の貯留を引き起こし、腎障害を悪化させる可能性がある。(引用3、4、5、6、7)
■心機能低下のある患者へのNSAIDs投与は、Na、水貯留(前負荷増加)、全末梢血管抵抗上昇(後負荷増加)により心不全の誘発・増悪を引き起こすことがある。また、心不全、レニン-アンジオテンシン系の活性が亢進した状態等でNSAIDsを使用すると、PG生合成が抑制され、アンジオテンシンIIの血管収縮作用が優位となり、血圧上昇(後負荷増加)がみられ、血行動態の悪化をもたらすと考えられる。その結果、心機能不全を悪化させる可能性がある。(引用7、8、9)
■NSAIDsは、前項の如く、Na、水貯留(前負荷増加)、全末梢血管抵抗上昇(後負荷増加)を引き起こす。また、レニン-アンジオテンシン系の活性亢進状態でNSAIDsを使用すると、PG生合成が抑制されアンジオテンシンIIの血管収縮作用が優位となり、血圧上昇(後負荷増加)をきたし、血行動態の悪化をもたらすと考えられる。その結果、高血圧症を悪化させる可能性がある。(引用10)
■本剤での報告はないが、本剤の活性代謝物のインドメタシンで次の報告がある。
69歳の変形性関節症の男性がインドメタシン75mg/日を3カ月投与され、急性膵炎を発現した。
血清アミラーゼは712(Somogyi単位)まで上昇、入院加療により約1週間で軽快した。(引用11)
インドメタシンが原因薬物の可能性があることから、重篤な膵炎の患者への本剤の投与は禁忌である。機序としては膵臓のPG生合成抑制作用が疑われるが、詳細は明らかでない。
■本剤及び本剤の活性代謝物のインドメタシンにアレルギー歴(副作用歴)のある患者への再投与は同様な副作用が発現する可能性が高く、より重篤な副作用(アナフィラキシーショック等)にまで進展することも考えられる。
また、アスピリンにはインドメタシンと交差感受性があることから、サリチル酸系化合物は同様に禁忌である。(引用12、13)
■アスピリン喘息は非免疫機序により発症するといわれ、アスピリンを代表とするNSAIDs等によって誘発される。その発作は極めて重症となりやすく、生命の危険さえもたらすことがある。
<臨床的特徴>
1)成人喘息の約10%を占める。
2)遺伝の関与はなく、後天的に発症すると考えられる。
3)比較的中年以降に発症することが多く、やや女性に多い。
4)通年型で重症難治例が多い。
5)非アトピー性喘息の特徴を有する。(引用14)
<発生機序>
NSAIDsがシクロオキシゲナーゼを阻害し、アラキドン酸からのPG系の合成を阻害することにより、その分リポキシゲナーゼ系代謝産物のロイコトリエン(LT)C4、D4、E4などの産生が亢進し気道攣縮を引き起こすという説があるが、明確な機序はわかっていない。(引用15)
<注意事項>
NSAIDs等による喘息発作誘発の既往歴がある患者には、重篤な喘息発作が発現するおそれが高いことを考慮してNSAIDs等を投与しないこととし、また、NSAIDs等による喘息発作誘発の経験のない場合でも気管支喘息患者には喘息のタイプを確実に診断した上で慎重に投与すべきである。
■妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。妊娠中の投与に関し、次のような報告がある。(引用16)
・本剤の活性代謝物のインドメタシンで、妊娠後期に投与したところ、胎児循環持続症(PFC)、胎児の動脈管収縮、動脈管開存症、胎児腎不全、胎児腸穿孔、羊水過少症が起きたとの報告がある。また、妊娠末期に投与したところ早期出産した新生児に壊死性腸炎の発生率が高いとの報告、及び消化管穿孔、頭蓋内出血が起きたとの報告がある。
・本剤の活性代謝物のインドメタシンにおいて、動物実験(マウス)で催奇形作用が、また、本剤ではラットで着床率の減少、死亡吸収胚の出現頻度の増加が報告されている。
・妊娠末期のラットに投与した実験で、胎児の動脈管収縮が報告されている。
■本剤での症例報告はないが、本剤の活性代謝物であるインドメタシンで急性腎障害を起こした例がある。(引用17)
<作用機序>
トリアムテレンによる腎の強い血管収縮作用を代償するために腎でのPG合成が亢進されるが、インドメタシンによりそのPG合成が抑制され、腎障害が引き起こされるためであろうとされている。(引用18)
【引用】
1)インフリーカプセル100mg・Sカプセル200mg電子添文 2022年8月改訂(第1版) 2.禁忌
2)インフリーカプセル100mg・Sカプセル200mgインタビューフォーム 2023年1月改訂(第8版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 2.禁忌内容とその理由
3)水島 裕:臨牀と研究,1983;60(7):p2154-2157 [INF-0042]
4)鶴見介登:岐阜大学医学部紀要,1986;34:p927-938 [INF-0043]
5)中野幾太ら:綜合臨床,1986;35(10):p2677-2680 [INF-0045]
6)Clive, D. M. et al.:N. Engl. J. Med.,1984;310(9):p563-572 [INF-0046]
7)田部井薫ら:内科MOOK,1985;(27):p12-22 [INF-0047]
8)黒木昌寿ら:内科,1987;59(6):p1157-1161 [INF-0048]
9)Dzau V. J. et al.:New Engl. J. Med.,1984;310(6):p347-352 [INF-0049]
10)Ylitalo P. et al.:Prostaglandins Med.,1978;1:p479-488 [INF-0050]
11)Guerra M.:JAMA,1967;200(6):p552-553 [INF-0051]
12)Matthews J. I. et al.:Ann. Intern. Med.,1974;80:p771 [INF-0052]
13)Johnson N. M. et al.:Br. Med. J.,1977;2:p1291 [INF-0105]
14)末次 勧:呼吸,1987;6(1):p63-66 [INF-0271]
15)佐賀 務:現代医療,1989;21(1):p229-233 [INF-0053]
16)インフリーカプセル100mg・Sカプセル200mgインタビューフォーム 2023年1月改訂(第8版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 6.特定の背景を有する患者に関する注意 (5)妊婦
17)Weinberg M. S. et al.:Nephron,1985;40:p216-218 [INF-0156]
18)Favre L. et al.:Ann. Intern. Med.,1982;96(3):p317-320 [INF-0070]
【更新年月】
2024年5月