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  • No : 19951
  • 公開日時 : 2024/10/02 17:01
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【ベサコリン】 前立腺肥大症のある患者への投与はできますか?

【ベサコリン】 

前立腺肥大症のある患者への投与はできますか?
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回答

電子添文には以下の記載があります。
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.3 消化管及び膀胱頸部に閉塞のある患者(引用1)
[消化管の通過障害、排尿障害を起こすおそれがある。]
 
前立腺肥大症は必ずしも禁忌に該当するわけではありませんが、膀胱頸部(膀胱出口部)に閉塞がある場合は禁忌に該当すると考えられますので、閉塞がないかをご確認ください。
 
前立腺肥大症の病態には、前立腺の腫大(BPE)・前立腺による閉塞(BPO)・下部尿路症状(LUTS)の3要素が関与するとされていますが、前立腺の腫大が必ずしも前立腺による閉塞を伴うとは限らず、前立腺による閉塞が必ずしも下部尿路症状を引き起こすとは限りません。逆に、中高年男性の下部尿路症状がすべてBPOに起因するわけでもありません。(引用2 p48)
 
前立腺肥大症の患者様に使用される場合は、排尿障害の悪化がないかを観察いただくようお願いいたします。
なお、本剤の排尿困難に関する効能又は効果は、「手術後、分娩後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難」です。前立腺肥大に伴う排尿障害に対する適応はありません。(引用3)
 
【関連情報】
膀胱頸部の閉塞については、ガイドラインに膀胱出口部閉塞に関する記載があり、膀胱出口部閉塞を示唆する症状症候群として、前立腺肥大症があります。
 
■前立腺肥大症の定義(用語と疾患概念)(引用2 p48)
前立腺肥大症を“前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害を呈する疾患で、通常は前立腺腫大と膀胱出口部閉塞を示唆する下部尿路症状を伴う”と定める。
 
■1下部尿路症状総論より抜粋(引用2 p41~)
1)下部尿路症状(lower urinary tract symptom: LUTS)
LUTS とは、蓄尿と排尿(尿排出)に関連する症状を網羅する用語である。原因としては下部尿路機能障害が示唆されるが,膀胱炎、前立腺炎、尿道炎、膀胱癌、膀胱結石などの器質的疾患でも起こりうる。
a.蓄尿症状
b.排尿症状
c.排尿後症状
d.その他の症状 ...
e.症状症候群
生殖器・尿路痛症候群および下部尿路機能障害を示唆する症状症候群があり、重要なものとして以下の3つがある。
(1)膀胱痛症候群
(2)過活動膀胱
(3)膀胱出口部閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)を示唆する症状症候群(引用2 p45)
中高年男性が主として訴える排尿症状であり,前立腺肥大症による膀胱出口部閉塞以外に感染や他の明らかな病的状態が認められないものをいう。
2)男性下部尿路症状(male lower urinary tract symptom: MLUTS)
3)下部尿路症状と類似・関連した用語
a.従来から使用されている広義の排尿症状
b.刺激症状(irritative symptoms),閉塞症状(obstructive symptoms)
c.前立腺症(prostatism)
d.下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction: LUTD)
下部尿路の機能障害を総称する。蓄尿(機能)障害(storage dysfunction)と排尿(機能)障害(voiding dysfunction)の2つに分類される。(中略)下部尿路機能障害には、膀胱出口部閉塞、膀胱機能障害(排尿筋過活動・排尿筋低活動)、尿道機能障害(過活動・不全)、骨盤底機能障害が含まれる。
e.低活動膀胱(underactive bladder)
f.尿閉(urinary retention)
g.溢流性尿失禁(overflow incontinence)
h.過知覚膀胱(hypersensitive bladder)
 
■5 病態より抜粋(引用2 p58~)
2 前立腺・下部尿路の疾患・病態
1) 前立腺肥大症
a.前立腺腫大と相関しない膀胱出口部閉塞
b.膀胱出口部閉塞による膀胱の排尿(排出)障害
手術などにより閉塞を解除しても1/3では排尿症状が持続する。特に70歳以上の排尿症状は膀胱収縮障害に起因することが多く(48%)、尿閉の既往を有する症例ではさらに多いとされている。80歳以上では排尿障害があっても 60%は下部尿路閉塞を証明できない。
下部尿路閉塞に対し膀胱平滑筋は肥大し、また虚血に対する抵抗性を獲得して、ミオシンのような収縮蛋白の発現を変化させて収縮能を維持する。閉塞に対し代償しきれなくなると、平滑筋細胞間gap junctionの構成蛋白である connexin 43 の発現低下などにより収縮の同期ができなくなり、収縮障害が生じる。また、膀胱壁のコラーゲンも増加しLUTS も悪化する。これらの変化は加齢によっても生じる。すなわち、膀胱出口部閉塞を解除しても排尿症状が持続する原因として、膀胱収縮力の低下やコラーゲンの増加が考えられる。
c.膀胱出口部閉塞による膀胱の蓄尿障害
膀胱出口部閉塞による排尿症状は、尿流が抵抗を受けた結果で生じるとして理解しやすい。しかし、膀胱出口部閉塞による膀胱機能障害で過活動膀胱(OAB)などの蓄尿症状も生じるとされている。前立腺肥大症では蓄尿・排尿のサイクルごとに膀胱伸展・高圧・虚血・再灌流が繰り返され、徐々に上皮・神経・平滑筋に様々な変化がもたらされる。特に膀胱血流障害は酸化ストレスを引き起こし、ラジカルが上皮・神経・平滑筋の障害をもたらす。

【引用】
1)ベサコリン散5%電子添文 2023年4月改訂(第2版) 2.禁忌 2.3
2)男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン p44-47、48、58~60
www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/27_lower-urinary_prostatic-hyperplasia.pdf  (最終閲覧日:2024年4月17日)
3)ベサコリン散5%電子添文 2023年4月改訂(第2版) 4.効能又は効果
 
【作成年月】
2024年9月
 

 
KW:前立腺、膀胱頚部、膀胱頸部、閉塞、肥大

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