男性下部尿路症状および女性下部尿路症状に対する国内ガイドラインには、薬物療法として次の記載があります。
■男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(編集:日本泌尿器科学会)
7治療 5薬物療法 8)その他の薬剤 g.コリン作動薬(引用1)
低緊張性膀胱による排尿困難(尿閉)に対する保険適用はある。ただし、活動膀胱に対して有効とする報告より、無効とする報告の方が多い(レベル1※2)。有害事象には、腹痛、下痢などのほかに、コリン作動性クリーゼ、狭心症、不整脈などの重篤なものもある。尿路閉塞のある患者は禁忌である。専門医のみが注意しつつ使用すべきである。
[推奨グレード※1:C1(専門医)、C2(一般医)]
※1推奨のグレード
C1行ってもよい C2行うよう勧められない
推奨のグレードは、1)根拠のレベル、2)結論の一貫性、3)効果の大きさ、4)臨床上の適用性、5)副作用、6)費用に関する委員の議論と合意で定められています。
※2根拠のレベル
レベル1複数の大規模RCTまたはMeta-analysisやSystematic reviewに裏付けられる
※1、2:男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(編集:日本泌尿器科学会)RichHill Medical、2017年 pvよりwww.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/27_lower-urinary_prostatic-hyperplasia.pdf (最終閲覧日:2023年4月28日)
■女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](編集:日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会)
2 Clinical Questions
CQ18 女性低活動膀胱の治療には何があるか?(一部抜粋)(引用2)
低活動膀胱を適応とした薬剤はないが、尿排出障害の薬剤として、ベタネコール、ジスチグミン、ウラピジルがある。現在、低活動膀胱患者を対象とした治験が進行中である。
ベタネコール:推奨グレードC1※3
8治療
2.薬物療法 3)排出障害の薬物療法
a.排尿筋の収縮力を増強させる薬剤
(1)ベタネコール (bethanechol) (一部抜粋)(引用3)
推奨グレード C1※3
アセチルコリン類似の薬剤の一つであり、類似の薬剤の正常膀胱平滑筋収縮作用の強さはカルバコール>アセチルコリン>ベタネコール>プロピニルコリンとされている。ベタネコールはアセチルコリンよりもアセチルコリンエステラーゼにより分解されにくいために臨床で使用可能となっている。またアセチルコリンに比べて膀胱と消化管への作用が主で、心血管系への副作用が少ないことも臨床上はメリットとなっている(レベル3※4)。
※3推奨のグレード(引用5)
C1行ってもよい C2行うよう勧められない
推奨のグレードは、1)根拠のレベル、2)結論の一貫性、3)効果の大きさ、4)臨床上の適用性、5)副作用、6)費用に関する委員の議論と合意で定められています。
※4根拠のレベル
レベル3無作為割り付けによらない比較対照研究に裏付けられる
※3、4:女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](編集:日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会)RichHill Medical 、2019年pⅶ よりwww.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/38_woman_lower-urinary_v2.pdf (最終閲覧日:2023年4月28日)
【関連情報】
ベサコリン散5%の効能又は効果、用法及び用量は以下の通りです。(引用4、5)
<効能又は効果>
消化管機能低下のみられる下記疾患
慢性胃炎、迷走神経切断後、手術後及び分娩後の腸管麻痺、麻痺性イレウス
手術後、分娩後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難(尿閉)
<用法及び用量>
ベタネコール塩化物として、通常成人1日30~50mgを3~4回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
【引用】
1)男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(編集:日本泌尿器科学会) RichHill Medical ,2017年p130 [ZZZ-1267]
2)女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](編集:日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会) RichHill Medical ,2019年 p36[ZZZ-1268]
3)女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](編集:日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会) RichHill Medical ,2019年p175 [ZZZ-1274]
4)ベサコリン散5%電子添文2023年4月改訂(第2版) 4.効能又は効果
5)ベサコリン散5%電子添文2023年4月改訂(第2版) 6.用法及び用量
【作成年月】
2023年12月
KW:排尿障害、尿閉