総合製品情報概要に、以下の記載があります。(引用1)
メトトレキサート(MTX)は、葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の働きを阻止し、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害して、細胞増殖を抑制する。一方、低用量のMTXによる関節リウマチ治療では、葉酸代謝拮抗作用以外にも複数の分子作用機序の存在が示唆されている。(引用2、3、4、5)
MTX及びその主な活性代謝物であるメトトレキサートポリグルタミン酸(MTXPG)が、プリン合成に重要な5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチド(AICAR)トランスホルミラーゼを阻害することにより細胞内AICARが増加する。増加したAICARはアデノシン及びアデノシン一リン酸(AMP)の主要な代謝酵素であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)及びAMPデアミナーゼ(AMPDA)を阻害する。アデノシン及びAMPの代謝阻害により、細胞外アデノシン濃度は増加する。アデノシンは好中球からの活性酸素種(ROS)産生並びに好中球の血管内皮細胞への接着及び血管外組織への遊走を抑制する。マクロファージでは、アデノシンは炎症性サイトカイン産生、破骨細胞形成及び骨破壊を抑制する。滑膜線維芽細胞(FLS)におけるMTXのNF-κB活性化抑制作用はアデノシン情報伝達促進作用を介していると考えられる。このようにMTXは、アデノシン情報伝達を増強させることにより、各種免疫細胞に対して抗炎症作用を示す。(引用5、6、7)
T細胞において、MTXはDHFRを介したジヒドロビオプテリン(BH2)のテトラヒドロビオプテリン(BH4)への還元を阻害し、一酸化窒素合成酵素(NOS)の脱共役により活性酸素種(ROS)の産生を増加させる。ROSにより活性化されたc-Jun N末端キナーゼ(JNK)は、アポトーシスに対する感受性と細胞周期の進行を調節するタンパク質をコードする遺伝子発現を促進させる。またT細胞において、MTXはDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)も活性化し、最終的に炎症誘発性転写因子であるNF-κBの活性化を抑制させ、抗炎症作用を示す。(引用6、8、9)
【引用】
1)メトジェクト皮下注7.5mg・10mg・12.5mg・15mg総合製品情報概要 作用機序 p37-38 (MTJ1001FSG)
2)Chan ES. et al. : Nat Rev Rheumatol. 6(3),p175-178, 2010 [MTJ-0050]
3)Bedoui Y. et al. : Int J Mol Sci. 20(20),p5023, 2019 [MTJ-0051]
4)Friedman B. et al. : Joint Bone Spine. 86(3),p301-307, 2019 [MTJ-0052]
5)Cronstein BN. et al. : Nat Rev Rheumatol. 13(1),p41-51, 2017 [MTJ-0025]
6)Cronstein BN. et al. : Nat Rev Rheumatol. 16(3),p145-154, 2020 [MTJ-0024]
7)Spurlock CF. 3rd. et al. : Rheumatology (Oxford). 54(1),p178-187, 2015 [MTJ-0035]
8)Spurlock CF. 3rd. et al .: Arthritis Rheum. 63(9),p2606-2616, 2011 [MTJ-0032]
9)Spurlock CF. 3rd. et al. : Arthritis Rheum. 64(6),p1780-1789, 2012 [MTJ-0037]
【更新年月】
2024年8月
KW:薬効、薬効薬理、メカニズム