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  • 公開日時 : 2018/04/20 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/18 08:13
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【ワーファリン】 II‐5.1.人工弁置換術の概要(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
II‐5.1.人工弁置換術の概要(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

・人工弁置換術後の抗凝固療法

1980年代から1990年代にかけて、人工弁置換術後の抗凝固療法による血栓塞栓症予防が一般的になり、抗血小板薬との併用療法の評価、人工弁の種類間、弁の置換部位間あるいは生体弁との比較や使用成績などが報告され、徐々に確立してきた。


・人工弁の種類

人工弁には機械弁(機械人工弁)と生体弁があり、弁の機能を回復し、良好な血行動態を得ることと共に、耐久性、抗血栓性がポイントとなる。機械弁は耐久性に優れるが、血栓塞栓症を合併する頻度が高いため、弁の材質、デザインなどの改善が行われ、さらに抗血栓療法が検討されてきた。

 

 

・機械弁としてのSt.Jude Medical(SJM)弁に代表される二葉弁の普及

抗凝固療法の程度と血栓塞栓症の発症率の比較は、Nakanoら1)、Baudetら2)、Horstkotteら3)のSt.Jude Medical(SJM)弁による報告が参考となる。国内ではNakanoら1)が1,000例を越える症例での成績を報告している。他にCarbomedics弁(CM弁)、ATS弁、SorinBio弁、On-X弁などの二葉弁も使用され、遠隔期を含めた使用実績についての報告も増加している。

 


 

・人工弁置換術に関する目標INR

INRによる国際基準によれば、従来機械弁置換術例では3.0~4.5の強い低凝固能状態が推奨(Ⅲ-7「治療域の設定根拠」の項参照)されてきたが、現在米国ではINR2.0?3.0を中心とする緩やかな治療域に見直されている。本邦におけるコントロール域は比較的緩やかで、欧米に比べて差があるとの報告4)もされてきた。

日本循環器学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン』5)、「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)」6)を参考に人工弁置換術後及び弁形成術後の抗凝固療法について以下に示す。

三尖弁置換術の場合は大動脈弁置換術と同等、複合弁置換術の場合は僧帽弁置換術と同等あるいはそれ以上に強力な抗凝固療法が必要と考えられる。

 

 

・国内の人工弁置換術

現在、国内の人工弁置換術の年間の件数は10,000例以上に達している。機械弁による手術を受けた患者は、ほぼ100%近くがワルファリンによる抗凝固療法を受け、かつ半永久的に継続され、人工弁置換術後の患者が累積して増加していくこととなる。しかし、どのような治療コントロールが良いかは、比較試験による日本人の情報が不足しているが、遠隔期を含めた使用成績など、観察研究を参考とする。

 


・抗血小板薬との併用療法

日本におけるワルファリン療法へのアスピリンなど抗血小板薬の取扱いについて、国内のガイドライン5,6)では議論が必要としている。欧米の臨床試験でも、ワルファリンとアスピリンとの併用の有用性を示す明確なデータはない。アスピリンとの併用は、ワルファリンと同じビタミンK阻害薬(VKA)のアセノクマロールのデータがほとんどであり、半減期の長いワルファリンへの適用の可否について注意が必要である。併用による有効性についてベネフィットを示すデータは不十分と考えられる。


・機械弁以外での弁膜疾患の治療

機械弁以外には生体弁、弁形成術、経カテーテル大動脈弁置換(TAVI)での抗血栓療法の必要性、方法を検討する報告もある。


・抗凝固療法でのワルファリン以外の代替薬

人工弁置換術後の抗凝固療法において、ワルファリン以外の選択肢が望まれるが、現時点ではまだ代用となる薬剤はない。


・妊婦での抗凝固療法

人工弁置換術後のワルファリン服用患者が出産を希望する場合があり、妊婦での抗凝固療法が不可避であり、課題となる。妊婦に関連する人工弁置換術後の観察研究を参考とするが、その管理の難しさが把握できる。人工弁置換術の選択を含めた計画的な妊娠・出産が求められる。(Ⅴ-1「妊婦への使用(禁忌)」の項参照)


・小児での抗凝固療法

小児での人工弁置換術後の抗凝固療法では、投与量、治療域などの設定に課題があり、患者の成長に対応する必要があり、長期に安定した療法を維持することが難しい。外傷に伴う出血に遭遇する機会が多く、成人より管理が難しい。また、小児に関する報告は限られ、情報が不十分な点も課題である。(Ⅲ-14「小児への使用」の項参照)

・弁膜疾患に対する医療の進歩

近年では生体弁が機械弁より多く使用されており、永続的な抗血栓療法を回避する可能性について考慮することは、QOLの観点から重要である。また、経カテーテル大動脈弁置換(TAVI)、大動脈弁再建術など、新規治療も臨床適用されており、将来、医療の進歩により、抗血栓療法を必要としない材質の弁、術式などが実現し、普及する時代が訪れることを期待したい。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Nakano K et al.: Ann.Thorac.Surg.,     57,     697(1994)    WF-0917

2)Baudet E,M. et al.: J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,     90,     137(1985)    WF-0936

3)Horstkotte D. et al.: J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,     107,     1136(1994)    WF-0924

4)北村 昌也ら: 胸部外科,     52,     1001(1999)    WF-2233

5)堀 正二ら: 【ダイジェスト版】循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版),     ,     1 (2010)    WF-4122

6)大北 裕 et al.: 【ダイジェスト版】弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版),     ,    1 (2012)    ZZZ-0835

【図表あり】
 
【更新年月】
2021年1月
 
 

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