心房細動におけるINRのコントロール域について、日本循環器学会の「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」(引用1)が2020年改訂され、心房細動におけるINRの治療域が下記のように記載されています。
1)非弁膜症性心房細動(生体弁は非弁膜症性心房細動に含める)
脳梗塞既往のない一次予防で,かつ比較的低リスク(たとえばCHADS2 スコア≦ 2 点)の患者は年齢によらずワルファリンINR1.6~2.6(引用2~4)
(非弁膜症性心房細動に対するワルファリンのINR1.6~2.6の管理目標については、なるべく2に近づけるようにする。)
脳梗塞既往を有する二次予防の患者や高リスク(CHADS2スコア≧3点、がん患者)では、出血リスクを勘案しつつ、年齢70歳以上でもINRはなるべく≧2.0に管理し、<70歳ではINR3.0の上限を許容してよいと考える。
2)弁膜症性心房細動(僧帽弁狭窄症、機械弁):ワルファリンINR2.0~3.0
【関連情報】
〔INRをなるべく2に近づける理由〕
2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン(引用1)に以下のように記載されています。
脳梗塞を発症した日本人心房細動患者を対象として、発症時のINR別に重症度や予後を評価した試験では、脳梗塞発生時の梗塞サイズやNational Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)、脳梗塞発生後の神経障害の重症度や機能的予後などが、INR1.6~2.0と弱めに管理されていた患者群では、INR<1.6 の管理不十分の患者群にむしろ近いことが示唆される一方で、INR≧2.0で強めに管理されていた患者群では梗塞容量も小さく、機能的予後も比較的良好であった。(引用5~6)
〔CHADS2スコア〕 最大スコア6点
心不全:1点
高血圧:1点
年齢(75歳以上):1点
糖尿病:1点
脳卒中/TIAの既往:2点
(C:Congestive heart failure、H:Hypertension、A:Age、D:Diabetes mellitus、S2:Stroke/TIA)
【引用】
1)2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン 第5章心房細動p49-54 (ZZZ-1199)
2)Inoue H, Okumura K, Atarashi H, et al.Circ J 2013; 77: 2264–2270 (WF-3871)
3)Yamashita T, Inoue H, Okumura K, et al.J Cardiol 2015; 65: 175–177 (WF-4180)
4)Kodani E, Atarashi H, Inoue H, et al.Circ J 2015; 79: 325–330 (WF-4175)
5)Matsumoto M, Sakaguchi M, Okazaki S, et al. Circ J 2017; 81: 391–396 (WF-4531)
6)Nakamura A, Ago T, Kamouchi M, et al.Stroke 2013; 44: 3239–3242 (WF-3992)
【作成年月】
2021年1月