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ワルファリンによる皮膚壊死は、ワルファリン誘発性皮膚壊死(WISN:Warfarin Induced Skin Necrosis)と称され、ワルファリン療法中に皮膚および脂肪組織の壊死を発現することで知られている1)。
壊死は局所血栓に関係すると考えられ、一般に抗凝固薬療法開始から数日以内に生じる。重篤な壊死の症例では、壊死が生じた組織、肢、乳房または陰茎の切除または切断による治療が報告されている。壊死の原因となる基礎疾患がないかを慎重に診断する必要がある。壊死発生の原因としてワルファリンが疑われる場合にはワルファリン療法を中止する必要があり、その際には、ヘパリンなど、他の抗凝固薬の使用を検討する。壊死に対し各種の治療が試みられているが、有効な治療法はみられていない。
発現状況では、皮膚壊死は日本人には非常にまれな副作用と考えられる。海外では多数の症例が報告されているが、国内での報告数は少ない。その多くは凝固抑制因子のプロテインC、S欠乏症を有している。国内で少ない理由は不明であるが、ワルファリン導入量を欧米より少量の1~5mgとしている点や先天的な凝固抑制因子の欠乏、欠損の症例が欧米、特に北欧より国内で少ない点が、その一因かもしれない。
ワルファリン療法中に遭遇する皮膚疾患の中で、ワルファリン誘発性皮膚壊死(WISN)と類似した皮膚疾患が知られている1)。コレステロール結晶塞栓症(CCE : Cholesterol Crystal Embolization)、カルシフィラキシスそしてヘパリン起因性血小板減少症(HIT: Heparin-Induced Thrombocytopenia)などの血栓性血管炎に起因する皮膚疾患などであるが、WISNとは発現機序や治療方法が異なる。症状の進展が早く、予後不良となる症例も報告されているため、WISNとの鑑別が必要であり、個々の疾患に適した治療方法を選択することが重要である。なお、副作用としてWISN(「皮膚壊死」として)と「カルシフィラキシス」が国内添付文書に記載されている。
以上より、WISNとその類似する疾患との鑑別を踏まえ、下記の項目について説明する。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Comp PC et al.: Semin. Thromb. Haemost., 16, 293(1990) WF-0618