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  • No : 1466
  • 公開日時 : 2017/10/16 00:00
  • 更新日時 : 2019/05/07 18:17
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【ワーファリン】 Ⅷ‐14.3.蛋白同化ステロイド剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)

【ワーファリン】  Ⅷ‐14.3.蛋白同化ステロイド剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)
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回答

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 244 蛋白同化ステロイド剤〕


〔薬効分類 249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強する。特に17-α位にアルキル基を有する薬剤(スタノゾロール、オキシメトロン、メスタノロン、ダナゾール等)。

蛋白同化ステロイドによる本剤の増強作用は、C-17位がアルキル化されたアンドロゲンの投与患者に頻繁に起こり、臨床的に重篤な出血を誘発する可能性がある。

【ナンドロロン、メスタノロン、メテノロン、ダナゾールの添付文書に併用注意の記載がある】


[併用時の注意]

C-17位がアルキル化されているアンドロゲン(蛋白同化ステロイド剤も該当する)は、臨床用量で併用開始2~3日以内にも本剤の作用を増強し、重篤な出血症状を起こす可能性が大きい。

これらの併用時は、プロトロンビン時間などの血液凝固能検査の推移に応じて、本剤を減量すること。

C-17位がアルキル化されていないアンドロゲンは、本剤には影響を及ぼさないとの報告はあるが、十分に検討されているわけではないので、同様に注意することが望ましい。

 

[相互作用の機序]1)

不明。

蛋白同化作用を有する薬剤が、肝での凝固因子前駆体の合成あるいは異化を変化させる。

蛋白同化作用を有する薬剤が、本剤の作用部位への親和性を高めるとされているが、明らかでない。

 

[相互作用の事例]

<症例事例報告>2)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

36才女性。大動脈弁置換術後、ワルファリンとブコロームの併用でもトロンボテスト値が治療域まで下がらなかった。子宮内膜症に対しダナゾール400mg/日の投与を開始した。約1ヵ月後、月経の長期化に続いて大量の血尿があった。血尿出現の翌日、トロンボテスト値は5%以下であった。

 

<症例報告事例>3)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

45才女性。大動脈弁と僧帽弁の2弁置換術後にワルファリン3.5mg/日とジピリダモール300mg/日を投与し、トロンボテスト値は20%前後であった。子宮内膜症の治療にダナゾール300mg/日の投与を開始した。約1ヵ月後にクモ膜下出血を来し、トロンボテスト値は6%以下に低下していた。

 

<症例報告事例>4)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

40才女性。僧帽弁置換術後にワルファリンを長期投与中であった。ダナゾール400mg/日の併用を開始したところ、3週後に消化管出血を来たした。プロトロンビン時間は168秒と、コントロール値の14倍であった。(海外)

 

<症例報告事例>5)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

(症例1)47才女性。血栓塞栓症発作後、ワルファリンを開始、プロトロンビン時間のコントロールは良好であった。ダナゾール400mg/日併用開始1ヵ月後、血尿が出現し、プロトロンビン時間は48.2秒、部分トロンボプラスチン時間は115秒に延長していた。ワルファリンを中止した。2日後、プロトロンビン時間は55.7秒で、ビタミンKを投与しダナゾールは中止した。ワルファリンを以前の用量で再開し、プロトロンビン時間は正常値の1.2~1.5倍に維持した。その後もダナゾール投与時はワルファリンの減量を要した。


(症例2)28才。プロテインC欠損症でワルファリン10mg/日投与中。ダナゾール600mg/日投与開始3日後、それまで治療域にあったプロトロンビン時間は38.6秒に延長し、出血徴候を来した。ワルファリンとダナゾールを中止し、3日後にはプロトロンビン時間は治療域に戻った。ワルファリンを10mg/日で再開し、ダナゾールは再投与せず。(海外)

 

 

<症例報告事例>6)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

35才女性。リウマチ性心疾患があり、産後に肺塞栓を来して以降、ワルファリンを長期投与中で安定した効果を得ていた。ダナゾール800mg/日の投与開始2日後、トロンボテスト値は5%未満に低下した。ダナゾール開始前のトロンボテスト値は、ワルファリン9mg/日で約10%であった。ワルファリンを2日間休薬し、8mg/日に減量して再開したが、2週後のトロンボテスト値は5%未満のままであり、再びワルファリンを2日休薬して7mg/日で再開した。10日後、持続する腰・側腹部痛に加えて、血尿、吐血、挫傷、さらには喀血を来して、救急入院となった。トロンボテスト値は依然5%未満、ヘモグロビンは10g/dLで、鉄欠乏を認め、血小板数は正常であった。ワルファリンとダナゾールを中止。4日後にはトロンボテスト値は12%となり、ワルファリンを7mg/日で再開した。(海外)

 

<症例報告事例>7)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

先天性アンチトロンビンⅢ欠損症の40才男性にて、抗血栓療法中のビタミンK依存性凝固因子の血漿中濃度を測定した。ダナゾール400mg/日、600mg/日投与時(開始4、5、6、8週目の平均)、プロテインCは各々134.6%、155.3%、遊離形プロテインSは118.6%、124.5%、C4b結合蛋白質複合体型プロテインSは95.8%、96.0%、第Ⅱ因子は123.0%、131.3%、第Ⅹ因子は124.3%、130.0%であった。ワルファリン2mg/日、4mg/日投与時(開始2、3、4、5週目の平均)、プロテインCは各々54.3%、38.5%、遊離形プロテインSは40.1%、27.5%、C4b結合蛋白質複合体型プロテインSは93.5%、85.5%、第Ⅱ因子は55.5%、39.8%、第Ⅹ因子は51.5%、38.3%であった。ワルファリン2mg/日+ダナゾール400mg/日の併用時(開始1、2、3、4ヵ月目の平均)、プロテインCは71.2%、遊離形プロテインSは52.4%、C4b結合蛋白質複合体型プロテインSは97.0%、第Ⅱ因子は68.6%、第Ⅹ因子は58.0%であった。ワルファリンとダナゾールの併用で、ワルファリンによるプロテインC、遊離形プロテインSの減少が、また、ダナゾールによる第Ⅱ因子、第Ⅹ因子の増加が各々相手薬剤により相殺され、抗血栓効果が高まると示唆された。

 

<症例報告事例>8)【ダナゾールによるワルファリンの作用増強】

44才女性。脳梗塞発症後、精査にて僧帽弁狭窄症と診断されワルファリンの投与を開始、5mg/日でトロンボテスト値は20%台であった。脳梗塞発症約3ヵ月後、僧帽弁交連裂開術を受けた。その後もワルファリンは継続し、術後2ヵ月時点でトロンボテスト値は27%であった。この6日後より、他院にて子宮内膜症に対しダナゾール400mg/日投与が開始された。ダナゾール開始35日後頃より両側腹部痛、尿量減少が現れ、その3日後に入院した。腹部画像所見より両側腎盂・尿管の拡張を認め、尿と血液の混合物貯留が疑われた。また、腎腫大、腎盂・尿管・腸管の壁肥厚があり、同部位の出血、浮腫が疑われた。トロンボテスト値は5%以下で、新鮮凍結血漿とビタミンK2、輸液の投与を行った。翌日、血塊を含む尿の排出を得、症状も軽快した。13日後のCTでは、異常所見はほぼ消失した。その後ダナゾールの服用が判明し、ワルファリンとの相互作用が原因の出血傾向から腎出血、血尿の発生、凝血塊形成や尿管壁内の出血、浮腫を来たして急性尿路閉塞となったと推測した。

 

<症例報告事例>9,10)【スタノゾロールによるワルファリンの作用増強】

スタノゾロール(本邦販売なし)によりワルファリンの抗凝固効果が増強したとの症例報告がある。(海外)

 

<臨床研究報告、症例報告事例>11,12,,13,14,15)【オキシメトロン、メタンドロステノロンによる経口抗凝固薬の作用増強】

オキシメトロンやメタンドロステノロン(いずれも本邦販売なし)により、ワルファリン、ブロムインジオン、フェニンジオンの効果が増強した。ビタミンK投与を要した症例、出血を来たした症例も報告されている。


 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Stockley IH: Drug Interactions 5th ed.(Blackwell Scientific Publications, Oxford),        215(1999)    WF-1421
2)浅井 康文ら: 産婦人科の実際,    33,    287(1984)    WF-0155
3)日向 三郎ら: 胸部外科,    44,    555(1991)    WF-0650
4)Goulbourne IA et al.: Br. J. Obstet. Gynaecol.,    88,    950(1981)    WF-0463
5)Meeks ML et al.: Ann. Pharmacother.,    26,    641(1992)    WF-0665
6)Small M et al.: Scott. Med. J.,    27,    331(1982)    WF-0474
7)新名主 宏一ら: Med. Postgraduates,    29,    216(1991)    WF-0620
8)長友 美達ら: 循環器科,    31,    537(1992)    WF-0704
9)Shaw PW et al.: Clin. Pharm.,     6,    500(1987)    WF-0494
10)Acomb C et al.: Pharm. J.,     234,    73(1985)    WF-0448
11)Murakami M et al.: Circ. J.,     29,    243(1965)    WF-0673
12)久保 圭史: 内科宝函,    15,    147(1968)    WF-0731
13)Robinson BHB et al.: Lancet,    1,    1356(1971)    WF-0721
14)Longridge RGM et al.: Lancet,    2,    90(1971)    WF-0722
15)Edwards MS et al.: Lancet,    2,    221(1971)    WF-0723

【図表あり】

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