国内第III相試験(161試験)において全般臨床症状、認知機能、重症度尺度評価であるCDRの経時変化が評価されております。
アリセプトの製品情報概要に以下の記載があります。(引用1、2)
■軽度及び中等度アルツハイマー型認知症を対象とした国内第III相臨床試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)(161試験)
目的
アルツハイマー型認知症に対するアリセプトの有効性、安全性をプラセボを対照に比較検討した。
対象
軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症患者268例にアリセプトまたはプラセボを投与した(アリセプト群:136例 プラセボ群:132例)。そのうち、
安全性解析症例267 例(アリセプト群:136例 プラセボ群:131例)
有効性解析症例228 例(アリセプト群:116例 プラセボ群:112例)を解析対象症例とした。
方法
観察期間(4週間)ののち、アリセプトまたはプラセボのいずれかを1日1回、24週間経口投与した。
なお、アリセプトは最初の1週間は1日1回3mgを投与し、その後5mgに増量した。
評価方法
有効性評価項目:主要評価項目 全般的臨床症状評価(最終)、ADAS‐Jcog得点の投与開始時からの変化量(最終)
副次評価項目 全般的臨床症状評価、ADAS-Jcog得点の投与開始時からの変化量、CDR合計点数の投与開始時からの変化量、CMCS(家族または介護者の印象)合計得点の投与開始時からの変化量
■全般的臨床症状評価(最終※)[主要評価項目(検証的解析結果)]
全般的臨床症状評価(各評価時点)[副次評価項目]
主要評価項目(検証的解析結果)である全般的臨床症状評価(最終)において、改善率(改善以上の割合)はアリセプト群17.3%、プラセボ群12.5%、悪化率(軽度悪化以下と判定不能の割合)はアリセプト群17.2%、プラセボ群42.9%であり、プラセボ群と比較しアリセプト群の優越性が検証された(p=0.000、U検定)。副次評価項目である全般的臨床症状評価(各評価時点)においては、投与4週後より、アリセプト群とプラセボ群との間に有意差が認められた(p≦0.024、U検定)。
※最終:原則として24週時の評価であるが、中止、脱落例については、12週以上の評価がされている場合の欠測直前の最終データを解析の対象とした。
■ADAS‐Jcog得点の投与開始時からの変化量(最終) [主要評価項目(検証的解析結果)]
ADAS‐Jcog得点の投与開始時からの変化量(各評価時点)[副次評価項目]
ADAS‐Jcog得点の各評価時点における投与開始時からの変化量(平均値)を以下に示す。
主要評価項目(検証的解析結果)であるADAS‐Jcog得点変化(最終)(投与開始時からの変化量の平均値)は、アリセプト群では−2.70点、プラセボ群で−0.26点(変化量の差:2.44)であり、プラセボ群と比較しアリセプト群の優越性が検証された(p<0.01、U検定)。
副次評価項目であるADAS‐Jcog得点変化(各評価時点)は、投与12週時以降の各評価時点において、アリセプト群はプラセボ群に比較して有意な改善が認められた(p<0.01、U検定)。
ADAS-Jcogの経時変化
■CDR合計点数の投与開始時からの変化量(各評価時点)[副次評価項目]
CDR合計点数の各評価時点における投与開始時からの変化量(平均値)を以下に示す。
CDR合計点数はアリセプト群はプラセボ群に比較し、投与12週時以降の各評価時点において有意差が認められた(p<0.05、U検定)。また、最終におけるアリセプト群とプラセボ群との変化量(平均値)の差は0.85点であり、有意差が認められた(p<0.001、U検定)。
CDR合計点の経時変化
■副作用
本試験において発現した副作用は、アリセプト投与群では136例中14例(10.29%)に、プラセボ投与群では、131例中10例(7.63%)に認められた。
重篤な副作用はアリセプト群1例(過量服薬による嘔吐)、プラセボ群2例(意識混濁[傾眠]/右不全
麻痺、脱水)であった。
【関連情報】
ADAS-Jcog、CDRについてはインタビューフォーム「V.治療に関する項目」に以下の記載があります。(引用3)
■ADAS-Jcog
認知機能を評価するための方法であり、「単語再生、口頭言語能力、言語の聴覚的理解、自発話における喚語困難、口頭命令に従う、手指および物品呼称、構成行為、観念運動、見当識、単語再認、テスト教示の再生能力」の項目より評価する。得点の範囲は0~70点(正常→重度)である。
■CDR
認知症の重症度を評価するための方法であり、「記憶・見当識・判断力と問題解決・社会適応・家族状況及び趣味・介護状況」について、患者の診察や周囲の人からの情報で評価する。健康(CDR0)、認知症の疑い(CDR0.5)、軽度認知症(CDR1)、中等度認知症(CDR2)、重度認知症(CDR3)のいずれかに評定する。
【引用】
1)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%製品情報概要 臨床成績軽度及び中等度アルツハイマー型認知症を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験(161試験)(承認時評価資料) p3-6 (ART1692CSG)
2)Homma, A. et al. : Dement. Geriatr. Cogn. Disord. 11(6),p299-313,2000 [ART-0247] (本研究はエーザイ株式会社の支援を受けて実施されました)
3)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%インタビューフォーム 2024 年9月改訂(改訂第34 版) V.治療に関する項目 5.臨床成績 (4)検証的試験 1)有効性検証試験・臨床試験 軽度および中等度のアルツハイマー型認知症
【更新年月】
2025年1月
【図表あり】