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  • 公開日時 : 2019/04/04 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/18 11:31
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【ワーファリン】 V‐15.周術期管理 ~ 皮膚科関連(診療科・領域別)(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
V‐15.周術期管理 ~ 皮膚科関連(診療科・領域別)(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

皮膚科関連の手術は、出血の確認や止血が比較的容易な場合もあり、多くが小手術として考えられる。比較的出血リスクが低い手技において、抗凝固療法継続下で実施した臨床研究、集積報告などいくつかあるが、十分なエビデンスがない。

 

1.ガイドライン

GL 米国胸部専門医学会(ACCP)ガイドライン(2012) 「抗血栓療法の周術期の管理」1,2)では、皮膚科の小手術において、処置を受ける必要がある患者では、処置前後もビタミンK拮抗薬を継続し、個々の症例で最適な止血方法を選択することを推奨している。

GL ドイツのガイドライン3)では、出血高リスクの手技では術前INRで治療域を超えていないように注意を加えている。

GL 国内の「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009)」4)では、エビデンスレベルは低いが、出血が起こった場合に対処が困難な体表の小手術については大手術に準じた対処とし、術後出血への対応が容易な体表の小手術時では抗凝固薬や抗血小板薬の内服継続としている。

 


 
2.総説など

Review Palamarasら(2015)5)は、総説で皮膚科手術の周術期管理と抗血栓薬に対する最新のエビデンスと経験に基づいた推奨を提案している。皮膚科手術でのワルファリンの中止は推奨されず、INR 3.5以下で注意して実施することとしている。出血の危険要因として年齢67歳以上、目・耳周囲の手術、皮弁(血流のある皮膚および皮下組織や深部組織を移植する手術法)、移植などを挙げている。

Review 国内の総説として、松村ら(2009)6)は皮膚科手術時の抗血栓薬中止の指針について解説している。ワルファリンを中止せずに皮膚科手術を施行しても、出血リスクを増大するが、重篤な転帰に至ることは少なく、中止する必要性は小さいと考えている。残念ながら、該当する手術などについて具体的な情報は示されていない。


3.皮膚科関連の手術

Case Alcalyら(2001)7)は、人工弁置換術後や心房細動へのワルファリン投与中に切除術やモース術(皮膚がん治療のための外科的手技)を実施した患者16例について集積報告を行い、INR 2-3.5でワルファリン継続投与にて皮膚手術を実施できると結論付けた。

OBS Dixonら(2007)8)は、皮膚癌手術後の継続投与下での出血性合併症の頻度についてプロスペクティブな観察研究を行った。INR3.0以下で抗血栓薬を継続投与した際の術後の出血/血腫の発生率はワルファリン群(2.1%/病変)、ワルファリン+アスピリン群(同6%)で投与なし群(同0.5%)に比べ有意に高かった。術後出血性合併症は、術式別では皮弁および皮膚移植術群で有意に多かった。ロジスティック解析では67才以上(オッズ比4.7)、ワルファリン投与(同2.9)、皮弁もしくは皮膚移植(同2.7)、耳及び近傍の手術(同2.6) が術後出血性合併症の有意な危険因子で、ワルファリン継続ではINRモニターをすべきと報告した。

Case Nelmsら(2009)9)は、皮膚軟部組織小手術時の合併症に関する集積報告を行い、ワルファリンは安全に継続でき、血栓塞栓症リスクを回避できると報告した。

OBS Peningtonら(2010)10)は、皮膚病変の手術後の創部感染症と術後出血の危険因子についてプロスペクティブな観察研究を行い、ワルファリンは術後出血の増加傾向(p=0.061)を報告した。

OBS Bordeauxら(2011)11)は、抗凝固薬と抗血小板薬の併用継続を含む皮膚科手術のプロスペクティブな観察研究を行なった。多剤併用継続においても皮膚科手術の合併症の比率は低かった。ワルファリンとクロピドグレルの併用では出血リスクが増加するが、血栓塞栓症の発現を避けるため、継続が必要としている。

Meta メタ解析として、Lewisら(2008)12)は、1966-2005年の報告の1373例について検討し、ワルファリン投与中の皮膚科手術患者での中等度・重篤の術後合併症のリスクは対照の6.7倍と算出した。


(国内報告)

Case 国内の症例報告として、梶浦ら(2012)13)は、心房細動でワルファリン投与中の患者でCO2レーザーによる腫瘍蒸散術(乳頭状扁平上皮癌の切除)をほとんど出血なしに実施できた87歳の日本人男性の症例症例を報告した。


[血栓塞栓症イベント]

Case Schanbacherら(2000)14)は、僧帽弁障害でワルファリン療法中の患者が左内眼角(めがしら)の基底細胞癌の外科手術のためワルファリン投与を中止し、術後に右後頭葉の血栓塞栓症を発症した症例を報告した。

OBS Kovichら(2003)15)は、皮膚科手術時にワルファリンやアスピリンを中断した際の血栓性合併症の頻度と重篤度のアンケート調査を行い、ワルファリン休薬では頻度を6219件に1件と算出した。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Douketis,J.D. et al.: Chest ,     133,     299S (2008)     WF-3002

2)Douketis,J.D. et al.: Chest,     141,    e326S (2012)     WF-3661

3)Sporbeck,B. et al.: J.Dtsch Dermatol.Ges.,    13,     346 (2015)    WF-4588

4)堀 正二ら: 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告),1 (2010) WF-4122

5)Palamaras,I. et al.: Br.J.Dermatol.,     172,     597 (2015)     WF-4365

6)松村 由美ら: 臨床皮膚科,     63,     155 (2009)     WF-3045

7)Alcalay,J. et al.: Dermatol.Surg.,     27,     756 (2001)    WF-4352

8)Dixon,A.J. et al.: Br.J.Surg.,     94,     1356 (2007)     WF-2666

9)Nelms,J.K. et al.: Ann.Plast.Surg.,     62,     275 (2009)     WF-2999

10)Penington,A. et al.: ANZ J.Surg.,     80,     642 (2010)     WF-3352

11)Bordeaux,J.S. et al.: J.Am.Acad.Dermatol.,     65,     576 (2011)    WF-4587

12)Lewis,K.G. et al.: Dermatol.Surg.,     34,     160 (2008)     WF-4353

13)梶浦 智嗣ら: 皮膚科の臨床,     55,     689 (2013)     WF-3942

14)Schanbacher,C.F. et al.: Dermatol.Surg.,     26,     785 (2000)     WF-1307

15)Kovich,O. et al.: J.Am.Acad.Dermatol.,     48,     233 (2003)     WF-3494

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