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  • No : 1012
  • 公開日時 : 2018/11/01 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/18 11:15
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【ワーファリン】 III‐12.3.コントロールの指標・評価 ~TTRを用いた検討(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
III‐12.3.コントロールの指標・評価 ~TTRを用いた検討(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

多くの臨床研究でTTR (time in therapeutic range)が高い集団が良好な成績を示し、それぞれの臨床研究の集団の中での検討ではTTRはイベントやコントロール状況との間でおおよその関連性が認められる。なお、各臨床研究間の比較では、測定回数、測定期間、治療方法などの条件の違いがあり、TTRを用いる評価には課題があると考える。

近年汎用されるRosendaalの方法は推定値で算出しているため、治療域外でも下限値以下や上限値以上と上下に振幅した変動でも60%程度の数値を算出する場合もあり、潜在する変動を反映できないことが考えられるので注意が必要である。

 

1)イベントとTTRとの関連

多くの臨床研究でTTRが高い集団が良好な成績を示し、それぞれの臨床研究の集団の中での検討ではTTRはイベントとの間でおおよその関連性が認められる。しかし、各臨床研究でTTRを評価する絶対値は異なり、数値の共有は難しい。

OBS Masakiら(2008)1)は、心臓弁手術既往のない心房細動の70才以上の患者(目標INR1.6~2.6)をINRが目標域内にある時間(TTR)が68%超の良好群と68%以下の不良群に分け、検討した。Kaplan-Meier曲線にて脳梗塞発症なしの比率は、良好群が不良群、対照群より有意に高かった。多変量回帰分析にてCHADS2スコア、高度僧帽弁逆流が脳梗塞の有意な予測因子として示された。TTRは脳梗塞の予測因子として傾向(p=0.07)を示したが、有意差はなかった。コントロールの質は、高齢者の脳梗塞発症に直接関与すると示唆された。

OBS Amouyelら(2009)2)は、非弁膜症性心房細動患者におけるINRコントロール不良に起因するリスクモデルを作成して、日常診療で抗凝固薬が投与されているフランス人患者に適応した。SPORTIF-3/5試験の患者に対するTTR<50%のフランス人患者での相対リスクは、虚血性脳卒中1.47、頭蓋内出血2.68、TTR≧50%のフランス人患者ではそれぞれ0.99、1.16であった。作成したモデルは、ビタミンK拮抗薬による抗凝固療法を行っている非弁膜症性心房細動患者において、INRコントロール不良に起因するリスク上昇の算出に有用であった。

OBS Grzymala-Lubanskiら(2014)3)は、機械弁の合併症リスクとTTRとの関連を検討するため、ワルファリンによる抗凝固療法中の機械人工弁患者にて観察研究を行った。TTRを四分位に分けて合併症リスクで比較し、多変量解析にて全合併症と出血についてTTR低値でリスクが有意に高まり、死亡と血栓塞栓症では有意差はなく、TTRが四分位最上位の83%以上の患者では最良の結果となった。個々の患者に良質なワルファリン療法が維持されれば、多くの重症出血を回避できると報告した。

OBS Takaradaら(2014)4)は、国内の観察研究にて、非弁膜症性心房細動のワルファリン投与患者について70才以上、70才未満に分け、さらに各々INR平均値1.60~1.99のLow群、2.0~2.59のHigh群で4つの群に分け、検討した。目標INRを1.6~2.6とした場合のTTR(INRが目標域内にあった期間の比率)は70才以上・Low群61.8%、70才以上・High群74.1%、70才未満・Low群74.5%、70才未満・High群79.4%であった。脳梗塞発症率は各々1.49%/年、1.78%/年、1.87%/年、0.80%/年で、70才以上、70才未満とも抗凝固療法強度による脳梗塞発症率に有意差はなかった。TTRは70才以上において脳梗塞の予測因子であった。また、虚血性脳卒中発生時のINRは41.9%(13/31例)が1.6未満であった。抗血小板薬投与は70才以上で頭蓋内出血の有意なリスク因子であった。

 

2)コントロール状況とTTRとの関連

多くの臨床研究でTTRが高い集団が良好な成績を示し、それぞれの臨床研究の集団の中での検討ではTTRはコントロール状況との間でおおよその関連性が認められる。各臨床研究でTTRによる評価方法が違い、コントロール状況の比較は難しい。

OBS Dlottら(2014)5)は、ワルファリン療法施行中の心房細動患者においてTTRで抗凝固コントロールを評価した。INRの目標域2.0~3.0にて、測定されたINRは50.6%が目標域内、16.9%が目標域超、32.5%が目標域未満であった。TTRは53.7%であった。TTRにはワルファリン投与期間の有意な影響を認め、ワルファリン投与6ヵ月以上の群は57.5%、6ヵ月未満の群は47.6%であった。米国の心房細動患者における抗凝固コントロールは不十分であり、緊急に経口抗凝固療法を改善する必要があることを示唆した。

OBS Sjogrenら(2015)6)は、スウェーデンの全国抗凝固薬登録Auriculaのデータを用いて、ワルファリンによる強化コントロール療法を行っている患者を抽出し、出血と血栓塞栓症のリスクをレトロスペクティブに検討した。主な適応症は心房細動で(68%)、INRが目標域内(2.0~3.0)のTTRは76.5%であった。大出血の年間発生率は2.24%、血栓塞栓症の年間発生率は2.65%で、頭蓋内出血の発生率は、全患者では0.37%/年、心房細動患者では0.38%/年であった。TTRの高い患者におけるワルファリン治療は安全かつ有効であることから、新規経口抗凝固薬の時代においても妥当な治療選択であるとの見解を示した。

OBS Patelら(2015)7)は、カナダにて、弁疾患のない18歳以上の心房細動患者例の医療記録審査により、プライマリケア医による非弁膜症性心房細動患者の脳卒中の頻度と出血リスク評価の精度、抗凝固療法の概要、ワルファリン処方患者におけるPT-INRのTTRについて検討した。大出血リスク評価は25%で行われず、47%では公式リスク評価ツールを用いずに推定され、HAS-BLED推定との一致は64%で認められた。ワルファリン治療患者では、PT-INRの中央値は2.4でTTRは73%であったが、25%の患者ではTTR 50%未満、20%の患者ではTTR 50~69%、55%の患者のみTTR 70%超であった。

 

3)その他の臨床研究

RCT Schulmanら(2011)8)は、6ヵ月以上安定したワルファリン療法中の患者にてINRモニタリングを4週毎に行うA群と12週毎に行うB群に無作為割付け、1年間のTTRについて比較した。TTRはA群74.1%、B群71.6%でB群がA群に対する非劣性を示したことを報告した。

OBS Anら(2015)9)は、実臨床における非弁膜症性心房細動の抗血栓療法と転帰の関係をレトロスペクティブなコホート研究にて検討した。ワルファリン投与期間内でTTR≧55%の群、TTR<55%の群、ワルファリン投与終了後の群、アスピリン投与期間内の群、アスピリン投与終了後の群、抗血栓療法なしの群で脳卒中/全身性の塞栓症の発生率、大出血の発生率を比較した。TTR≧55%では、アスピリン使用時の出血と同程度で脳卒中/全身性塞栓症を有意に減少し、TTR<55%では、有意に出血が増加することを報告した。

Review Vazquezら(2016)10)は、大出血、頭蓋内出血、頭蓋外出血のオッズ比について、ビタミンK拮抗薬単剤と低用量アスピリン単剤とを比較するために、システマティックレビューを行った。ビタミンK拮抗薬、アスピリンの出血リスクはほぼ同じであった(オッズ比1.16(95%CI;0.79~1.71))。アスピリンと比較して、ビタミンK拮抗薬による大出血のリスクは高いことが示唆されたが、良好なTTR(≧65%)が保たれた患者の出血リスクはほぼ同じと報告した。

 

4)TTRのメタ解析

Meta Heneghanら(2012)11)は、無作為割付比較試験のメタ解析により経口抗凝固療法の自己管理の有用性を検討した。11試験、6417例、12800患者・年で、追跡期間は平均1.99年、最長5.17年であり、主要評価項目は死亡、初回大出血、初回血栓塞栓性イベントまでの日数とした。自己管理群では対照群と比べ、血栓塞栓性イベントがハザード比(HR)0.51で有意に少なかった。大出血(HR 0.88)、死亡(HR 0.82)には有意差はなかった。自己管理群では対照群と比べ、血栓塞栓性イベントが55才未満の患者(HR 0.33)、機械弁置換術後の患者(HR 0.52)で有意に少ないことを報告した。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Masaki,N. et al.: Intern.Med.,     49,     1711(2010)    WF-3311

2)Amouyel,P. et al.: Eur.J.Intern.Med.,     20,     63(2009)    WF-4135

3)Grzymala-Lubanski,B. et al.: Thromb.Res.,     133,     795(2014)    WF-4321   

4)Takarada,K. et al.: J.Cardiol.,     64,     127(2014)    WF-4179

5)Dlott,J.S. et al.: Circulation,     129,     1407(2014)    WF-4234

6)Sjogren,V. et al.: Thromb.Haemost.,     113,     1370(2015)    WF-4171

7)Patel,A.D. et al.: Am.J.Cardiol.,     115,     641(2015)    WF-4161

8)Schulman,S. et al.: Ann.Intern.Med.,     155,     653(2011)    WF-3987

9)An,J. et al.: J.Am.Heart Assoc.,     4,     1(2015)    WF-4236

10)Vazquez,F.J. et al.: Thromb.Res.,     138,     1(2016)    WF-4327   

11)Heneghan,C. et al.: Lancet,     379,     322(2012)    WF-4147

 

【更新年月】

2021年1月

 

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