レビー小体型認知症を対象とした国内第II相臨床試験において、注意・集中力について評価し、結果は以下の通りでした。(引用1、2、3)
WMS-R注意/集中力指標の合計得点の投与開始時からの変化量(各評価時点、最終※)
注意/集中を評価するWMS-R注意/集中力指標の合計得点(最終※)の投与開始時からの変化量(平均値)のプラセボ群との差は、3mg群、5mg群、10mg群それぞれ3.4点、5.6点、6.2点であり、5mg群と10mg群でプラセボ群と比較して有意差が認められた(p=0.016、p=0.004、t検定)。3mg群では有意差は認められなかった(t 検定)。
WMS-R:Wechsler Memory Scale-Revised
※ 最終:原則として12週時の評価であるが、中止、脱落例については、欠測直前の最終データを解析の対象とした。
試験概要:レビー小体型認知症を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験(プラセボ対照二重盲検比較試験、用量探索試験)(431試験)
目的:レビー小体型認知症(DLB)患者におけるアリセプトの有効性及び安全性を探索的に検討した。
試験デザイン:国内第Ⅱ相、多施設共同、プラセボ対照、二重盲検、無作為化、並行群間比較試験
対象:レビー小体型認知症患者※1140例
プラセボ群 35例、3mg群 35例、5mg群 33例、10mg群 37例
有効性解析対象例※2 127例 安全性解析対象例 139例を解析対象例とした。
なお、認知症発症の1年以上前にパーキンソン病と診断されている患者、脳卒中、脳腫瘍、統合失調症、てんかん、正常圧水頭症、精神遅滞、意識消失を伴う頭部外傷、残存欠損を伴う脳手術既往歴等の重大な神経・精神疾患を合併している患者は除外した。
※1:probable DLB(第1回国際ワークショップ版診断基準に基づく) MMSE10~26点、CDR0.5以上、改訂版NPI-12 8点以上
※2 PPS
方法:観察期間(2週間)ののち、アリセプトまたはプラセボを1日1回朝、12週間経口投与し、下記項目にて評価した。なお、3mg投与群は3mg/日、5mg投与群は最初の2週間は3mg/日を投与し、その後5mg/日へ増量した。10mg投与群は最初の2週間は3mg/日を投与し、その後4週間は5mg/日、さらにその後10mg/日へ増量した。
評価項目:本試験は探索的試験であり、主要評価項目は選択していない。
有効性評価項目: CIBIC-plus(全般的臨床症状評価)※3、MMSEの投与開始時からの変化量※4、WMS-R注意/集中力指標の合計得点の投与開始時からの変化量※4、NPIー2(幻覚及び認知機能変動)の投与開始時からの変化量、NPI個別項目の投与開始時からの変化量※3
※3:投与開始時、12週、最終 ※4:投与開始時、投与4、8、12週、最終
安全性評価項目:有害事象、副作用、UPDRS partIII(パーキンソン病統一スケール) 等
解析計画:有効性解析対象はPPS集団を主要結果とした。連続変数(MMSE、WMS-R下位検査、言語流暢性課題、WAIS-III下位検査、VPTA下位検査、NPI、NPI-D、ZBI)に関しては、各評価時期及び最終評価時の変化量に対して、投与群ごとに要約統計量を算出した。また、求めた変化量を用いて、アリセプト各群に対するプラセボ群との比較をt検定で行った。さらに、縦軸に変化量、横軸に評価時期を取り、投与群ごとにグラフ(平均値±S.E.)を作成した。CIBIC-plus(全般的臨床症状評価)は、投与群ごとに最終評価時の各判定の例数及び割合を算出した。次に、アリセプト各群に対するプラセボ群との比較を2標本Wilcoxon検定で行った。また、安全性解析対象において、副作用の例数を集計した。
副作用:プラセボ群15/34例(44.1%)、3mg群16/35例(45.7%)、5mg群16/33例(48.5%)、10mg群16/37例(43.2%)に認められた。
主な副作用は、プラセボ群では尿中血陽性3例(8.8%)、下痢、心電図QT延長が各2例(5.9%)、3mg群では徘徊癖、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、血圧上昇が各2例(5.7%)、5mg群では下痢3例(9.1%)、パーキンソニズム、便秘、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、血圧上昇が各2例(6.1%)、10mg群では血中クレアチンホスホキナーゼ増加、白血球減少、転倒・転落が各2例(5.4%)に認められた。
重篤な副作用は、プラセボ群の不穏1例、3mg群のくも膜下出血1例であった。死亡は認められなかった。投与中止に至った副作用は、プラセボ群で下痢/血圧低下、不穏、横紋筋融解症、精神症状の悪化が各1例、3mg群でせん妄、不眠症、落ち着きのなさ、くも膜下出血が各1例、10mg群で胃腸障害が1例であった。
アリセプト錠の効能又は効果は以下の通りです。(引用4)
アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
レビー小体型認知症における用法及び用量は以下の通りです。(引用5)
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。投与開始12週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること
【引用】
1)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%製品情報概要 臨床成績 レビー小体型認知症を対象とした国内第II相臨床試験(431試験) p12 (ART1692CSG)
2)レビー小体型認知症を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験(431試験)(承認時評価資料)
3)Mori, E. et al.: Ann. Neurol., 72(1), 41-52(2012) [ART-2536]
[利益相反:本試験はエーザイ(株)が支援した。著者にエーザイ(株)から金銭を受け取った者が含まれる。]
4)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%電子添文 2024年9月改訂(第4版) 4.効能又は効果
5)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%電子添文 2024年9月改訂(第4版) 6.用法及び用量
【更新年月】
2024年12月
【図表あり】