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医療用医薬品一覧
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ビタミンK依存性エポキシドレダクターゼ(VKOR: vitamin K epoxide reductase complex)と ビタミンKキノンレダクターゼは、ワルファリンがビタミンK代謝サイクルを阻害して薬効を発揮する際に阻害の標的となる重要な蛋白である。
Review Tieら(2016)1)が、ビタミンK代謝サイクルに関連する酵素の分子構造及び機能について、最近までの知見をまとめている。
・VKOR蛋白の同定
VKORの実体は50年近く不明であったが、Rostら(2004)2)がビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体サブユニット1(VKORC1)を同定し、遺伝子解析よりVKORC1の遺伝子変異がワルファリン耐性に関与していることを発見した。さらにLiら(2010)3)は藻類の一種からVKORの立体構造を明らかにした。
新たな知見を加えて、ワルファリンの標的酵素、VKORの立体構造、ヒトのVKORモデル、耐性患者でのVKORのアミノ酸変異、VKOR分子内の電子伝達など、ワルファリンの作用機序について解説した総説4,5)が参考となる。
・VKORC1の遺伝子異常・遺伝子多型の研究
ワルファリンに抵抗性を示す患者、VKORC1の遺伝子多型によるワルファリン応答性の個体差などの臨床上のワルファリンの反応性の違いを検討する上で重要な知見となった。遺伝子異常に伴うワルファリン耐性6)や反応性の異なる遺伝子多型7,8,9)に関する報告が相次いだ。
・VKORC1の遺伝子多型の臨床応用
VKORC1の遺伝子多型は、ワルファリンの維持用量に影響する要因10-14)として、ワルファリンの主要な代謝酵素CYP2C9の遺伝子多型と共に注目され、用量調節への臨床応用の可能性15-18)についても検討されてきた。2種類の遺伝子多形から維持用量の約50%の説明可能と示されたが、投与開始後数日間のINRを数回測定するモニタリングで遺伝子多型の影響は把握可能と考えられる。
・遺伝子多型とワルファリン予測用量との関連性
VKORC1、CYP2C9以外にもCYP4F2のSNP(一塩基多型:Single Nucleotide Polymorphism)であるrs2108622の変異型でワルファリンの薬効は低下する19)など、他の変異遺伝子の研究も行われている。
OBS Lubitzら(2010)17)は、均質な集団を対象に作成された遺伝子に基づくワルファリン用量アルゴリズムで、遺伝的変異の用量予測能への影響について検討した。ワルファリン用量をCYP2C9およびVKORC1遺伝子変異を組み入れた既存の12のアルゴリズムによる予測用量と比較した。遺伝子に基づく用量アルゴリズムによりワルファリン必要量の変動の37~55%が説明された。ワルファリン用量に関連するCYP4F2、CALU、GGCX変異遺伝子型を追加したが、用量予測能は改善しなかった。
・基質ビタミンK誘導体及び拮抗物質ワルファリンの結合部位
Review Hiltonら(2017)20)は、Shenら(2017)22)及びCzogallaら(2017)21)の最新の研究を解説し、個別化の最適な治療への関わりや創薬への導入を示唆した。
基礎研究 Czogallaら(2017)21)は、ヒトVKORでの基質ビタミンK誘導体及び拮抗物質ワルファリンの推定の結合部位を同定した。ビタミンKとワルファリンそれぞれの結合部位に重複があり、重要な結合残基Phe55を含むヒトVKOR上の結合部位を共有することを示した。ワルファリンの結合は可逆的でビタミンKよりヒトVKORに対する親和性が高く、競合的、ゆっくりで強固な結合阻害を支持する結果であった。
基礎研究 Shenら(2017)22)は、ワルファリンによるCys51-Cys132の選択的阻害で電子伝達中の酸化還元の中間状態、ヒトVKORの構造変化にて、ワルファリン阻害機序を説明可能とした。結合相互作用による遺伝子異常の分析、構造シミュレーションからCys51-Cys132結合で安定化されたワルファリン結合部位を示した。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Tie,J-K. et al.: J.Thromb.Haemost., 14, 236(2016) WF-4553
2)Rost,S. et al.: Nature, 427, 537(2004) WF-2220
3)Li,W. et al.: Nature, 463, 507(2010) WF-4552
4)森田 隆司ら: Vasc.Med., 5, 356(2009) WF-3120
5)森田 隆司ら: 日本血栓止血学会誌, 21, 395(2010) WF-3360
6)Bodin,L. et al.: J.Thromb.Haemost., 3, 1533(2005) WF-2221
7)D-Andrea,G. et al.: Blood, 105, 645(2005) WF-2222
8)Bodin,L. et al.: Blood, 106, 135(2005) WF-2223
9)Sconce,E.A. et al.: Blood, 106, 2329(2005) WF-2224
10)Rieder,M.J. et al.: N.Engl.J.Med., 352, 2285(2005) WF-2247
11)Mushiroda,Taisei et al.: J.Hum.Genet., 51, 249(2006) WF-2308
12)Aquilante,C.L. et al.: Clin.Pharmacol.Ther., 79, 291(2006) WF-2502
13)Carlquist,J.F. et al.: J.Thromb.Thrombolysis, 22, 191(2006) WF-2506
14)Obayashi,Kyoko et al.: Clin.Pharmacol.Ther., 80, 169(2006) WF-4277
15)Aomori,T. et al.: Pharmazie, 66, 222(2011) WF-3623
16)Epstein,R.S. et al.: J.Am.Coll.Cardiol., 55, 2804(2010) WF-4305
17)Lubitz,S.A. et al.: J.Thromb.Haemost., 8, 1018(2010) WF-4308
18)土肥口 泰生ら: 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス, 41, 593(2010) WF-3300
19)池田 彩子ら: ビタミン, 87, 382(2013) WF-4317
20)Hilton,J.K. et al.: Nat.Struc.Mol.Biol., 24, 5(2017) WF-4554
21)Czogalla,K.J. et al.: Nat.Struc.Mol.Biol., 24, 77(2017) WF-4556
22)Shen,G. et al.: Nat.Struc.Mol.Biol., 24, 69(2017) WF-4555
【更新年月】
2021年1月