[ニトロール錠5mgの情報です]
電子添文及びインタビューフォームには、禁忌に関する以下の記載があります。
(1)重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用によりさらに血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。][9.1.1参照]注(引用1)
(2)閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。](引用2)
(3)頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。](引用3)
(4)高度な貧血のある患者[血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。(引用4)
(5)硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者(引用5)
(6)ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[10.1参照]注(引用6)
注:文中の番号は電子添文の各項目を示しています。
【関連情報】
(解説)
(1)硝酸イソソルビドをうっ血性心不全に投与し、前負荷の低下によりショックを生じたとの報告がある。本剤投与による前負荷の減少により、血圧低下が起こる。(引用7)
(2)硝酸剤は脈絡膜(硝子体をとりまく膜)の血管を拡張し、その容積増大によって眼圧を上昇させるといわれている。閉塞隅角緑内障は緑内障の中でも重篤で失明の危険性が高いため、特に禁忌とした。
亜硝酸アミルの投与により一過性に眼圧が上昇したとの報告があり、以来硝酸・亜硝酸製剤は緑内障に禁忌とされている。しかし、現在のところ、硝酸イソソルビドの投与で明らかな眼圧上昇や緑内障の悪化が認められたとの報告はない。(引用7)
(3)本剤の投与により、脳血管が拡張し、頭蓋内圧を上昇させるおそれがあり、再出血の可能性がある。
また、頭部外傷、脳出血の急性期には、脳循環異常があり、本剤の脳血管拡張作用により脳循環不全を起こすおそれがある。(引用7)
(4)高度な貧血のある場合には、組織細胞は極度の酸素欠乏状態にある。この状態に本剤を投与すると末梢血管拡張作用により血圧は低下し、諸臓器への血流は減少し、貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を更に悪化させる可能性がある。(引用7)
(5)過去に過敏症(薬物アレルギー)を起こして感作された患者に再投与すると、以前よりも重篤な症状があらわれるおそれがある。(引用7)
(6)硝酸薬は、グアニル酸シクラーゼを活性化して、cGMP濃度を高め、細胞内のCa濃度を下げて血管拡張作用を発現する。一方、シルデナフィルクエン酸塩やバルデナフィル塩酸塩水和物などのホスホジエステラーゼ5阻害剤は、cGMPを分解するホスホジエステラーゼ5を阻害してcGMP濃度を高め、細胞内Ca濃度を下げて血管拡張作用を発現する。硝酸薬とこれらのホスホジエステラーゼ5阻害剤を併用することにより、細胞内のcGMP濃度がより増大し、強い血管拡張作用を示し、血圧を強く低下させる可能性があるため投与しないこと。
また、グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤リオシグアトは、硝酸薬と同様にcGMPの産生を促進する作用を有することから、併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強することがある。硝酸薬とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は併用投与しないこと。(引用7)
【引用】
1)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.1
2)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.2
3)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.3
4)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.4
5)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.5
6)ニトロール錠5mg電子添文 2022年9月改訂(第1版) 2.禁忌 2.6
7)ニトロール錠5mgインタビューフォーム 2022年9月改訂(第12版) VIII.安全性(使用上の注意等)に関する項目 2.禁忌内容とその理由
【更新年月】
2023年3月