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医療用医薬品一覧
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[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 114 解熱鎮痛消炎剤〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強する。【ブコロームの添付文書に併用注意の記載がある】
(Ⅲ-18「ワルファリンとブコロームの併用について」の項参照)
[併用時の注意]
本剤の作用を増強する。
併用開始時および併用中止時は、必ず血液凝固能の変動に十分注意し、本剤の用量調節を行うこと。
[相互作用の機序]1)
ブコロームが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害するため、持続した抗凝固効果の増強を生じる。
また、ブコロームは本剤の血漿蛋白結合置換作用も有する。
[相互作用の事例]
<臨床研究報告>2)【ワルファリンの作用増強】
(1)16例でワルファリンとブコロームを併用した。平均ワルファリン投与量、平均トロンボテスト値は、延べ18回のワルファリン単独期(平均85日)で各々2.75mg/日、36.0%、延べ19回のブコローム併用期(平均146日)で各々1.17mg/日、19.3%であった。
(2)ワルファリン単独投与からブコローム併用に変更する際、ワルファリン用量は7例で不変、14例で減量とした。ワルファリン単独期のトロンボテスト値は群間に有意差はなかった。併用後、トロンボテスト値が5%以下となった症例がワルファリン用量の不変群で4例、減量群で2例あった。
<臨床研究報告>3)【ワルファリンの作用増強】
日本人のワルファリン平均投与量は3mg/日前後であるが、ブコローム300mgを併用すると、ワルファリン1~2mg/日で2週毎にトロンボテスト値をチェックして、トロンボテスト値10~25%の良好なコントロールが得られる。
<臨床研究報告>4)【ワルファリンの作用増強】
人工弁置換術後のワルファリン投与量を検討した。大動脈弁置換術後の症例では、ワルファリンとブコローム300mgの併用群21例で平均1.3mg/日、ワルファリン単独群8例で平均2.9mg/日であった。僧帽弁置換術後の症例では、ワルファリンとブコローム300mgの併用群11例で平均1.2mg/日、ワルファリン単独群5例で平均2.2mg/日であった。何れもブコローム併用でワルファリン必要量が有意に減少した。
<臨床研究報告>5)【ワルファリンの作用増強】
In vitroで、ヒト遺伝子組換えCYP2C9によるS-ワルファリンの7位水酸化は、フェニルブタゾンとブコロームにより強力に阻害された。
<臨床研究報告、基礎研究報告>1)【ワルファリンの作用増強】
ワルファリンを単独投与中の34例と、ブコローム300mg/日を併用投与中の21例で、ブコロームのワルファリン体内動態への影響を検討した。平均ワルファリン投与量は、ブコローム併用群で1.4mg/日、単独群で3.3mg/日、INRは併用群で2.3、単独群で1.5といずれも有意差を認めた。ブコローム併用群では、抗凝固活性が3~5倍強いS-ワルファリンの遊離形の血漿中濃度は4.77ng/mLと、単独群の1.82ng/mLより有意に高かった。逆に血漿中遊離形R-ワルファリン濃度は、併用群で2.66ng/mLと、単独群の4.77ng/mLより有意に低かった。ブコローム併用で、遊離形S-ワルファリンの全身クリアランスは674mL/minから107mL/minへ有意に低下し、7位水酸化も89%の有意な低下を示した。
ヒト肝ミクロソームCYP2C9発現系の実験で、ブコロームはS-ワルファリンの7位水酸化酵素であるCYP2C9を競合的に阻害すると示唆された。
<臨床研究報告>6)【ワルファリンの作用増強】
人工弁置換術後にワルファリンを投与中だが、効果不十分でワルファリン投与量の多い10例にブコローム300mg/日を併用した。
(症例1~3)術後1ヵ月以内にブコローム併用療法を開始した。併用開始前日、ワルファリン用量は3~4mgでトロンボテスト値は23~58%であった。併用開始後、3~7日でトロンボテスト値が20%以下となった。トロンボテストが治療域になった日のワルファリン投与量は、症例1と2で1.5mg、症例3で1mgに減少した。
(症例4~7)術後1ヵ月以上(3ヵ月~4.9年)経過後、外来通院でブコローム併用を開始した。併用開始前日(症例5は併用開始当日)、ワルファリン投与量は4.5~8mgで、トロンボテスト値は35~45%(症例7はINRで1.5)であった。併用開始1~2週後、症例4と6はワルファリン2mgでトロンボテスト値が20%以下となり、症例7はワルファリン1.5mgでINR2.0となった。症例5は2週後にワルファリン7mgでトロンボテスト値8%であったが、翌週にはワルファリン3mgでトロンボテスト値が4%となった。
(症例8~10)術後1ヵ月以上(2ヵ月~2年)経過後に、入院管理下でブコローム併用を開始した。併用開始前日、ワルファリン投与量は6~8mgでトロンボテスト値は23~26%であった。症例10はINRで1.5であった。併用開始3~6日後、ワルファリン用量は1~2mgでトロンボテスト値は20%以下(症例10はINR2.3)となった。術後早期よりブコロームを併用する場合、慎重な凝固能管理が必要であり、術後1ヵ月以上経過例ではワルファリンを初期維持量から数日後に1.5mg/日になる様に漸減するのが良いと思われた。
<臨床研究報告>7)【ワルファリンの作用増強】
2000年1月~02年6月の間に当院でブコロームを投与した患者は55例で、平均年齢62.8才、ブコローム投与量1日1回300mgで、全例ワルファリン併用例であった。検討期間中にワルファリンにブコロームの追加投与を開始したのは5例、逆にブコローム併用を中止したのは9例であった。これら14例の内11例では、ブコローム開始または中止に伴い、ワルファリン用量が変更されていた。この11例の平均ワルファリン1日用量は、ブコローム併用時で1.6mgと、ブコローム非併用時の3.7mgに比し有意に少なかった。トロンボテスト値はブコローム併用時23.2%、ブコローム非併用時30.5%で、有意差はなかった。ブコロームを中止したがワルファリン用量の変更を行わなかった3例では、ブコローム中止後にトロンボテスト値が上昇した。
<臨床研究報告>8)【ワルファリンの作用増強】
心疾患患者55例に対しワルファリンを3mgから投与開始した。ワルファリン用量はINRに従い調整した。目標INRは1.7~3.0であった。30例はワルファリン維持用量を単独で7日以上投与し、コントロール群とした。25例に対してはブコローム300mg/日を併用で投与し、ブコローム投与前~投与21日後に採血を行った。コントロール群においては、ワルファリン維持用量は3.97mg/日で、ワルファリン1mg当りのS-ワルファリン血清中濃度のR-ワルファリン血清中濃度に対する比(S/R比)は0.395であった。ブコローム併用群では、ワルファリン投与量は全平均で2.48mg/日、併用1日目4.67mg/日、4日目2.50mg/日、7日目2.57mg/日、14日目1.33mg/日、21日目1.52mg/日、S/R比は全平均で1.20、併用1日目0.366、4日目0.875、7日目1.30、14日目1.45、21日目1.65と推移した。ブコローム併用群のワルファリン投与量当り血清中濃度はR体では有意な変動はなくコントロール群と同程度であったが、S体では時間とともに上昇し、併用7日目以降ではコントロール群に比し有意に高くなった。INRをワルファリン投与量で除した値も、ブコローム併用群では併用前に比し併用7日目と21日目で有意に高値であったが、7日目以降には更なる上昇は認められなかった。
<臨床研究報告>9)【ワルファリンの作用増強】
本研究に参加した5施設でワルファリンを投与されていた外来患者は177例で、78例ではブコロームが併用されており、99例ではブコローム併用はなかった。ブコローム併用群のワルファリン1日用量は非併用群と比べて40%少なく、有意差が認められた。ブコローム併用群では約半数の患者でトロンボテスト値が目標域の8~15%にあったが、非併用群のトロンボテスト値は約80%で目標域よりも高値であった。ブコローム併用群のトロンボテスト値は、非併用群に比し有意に低かった。ワルファリンの肝内因性クリアランスを計算したところ、ブコローム併用群では非併用群に比し有意に低く、非併用群では患者毎のバラツキが大きかった。また、解析結果からブコローム以外の併用薬は、ワルファリン1日用量、トロンボテスト値、肝内因性クリアランスに影響していないと考えられた。
<症例報告事例>10)
65才男性。心房細動のため62才時よりピルジカイニド、ワルファリンを投与中であった。63才時、尿閉があり、当科にてα1ブロッカーを投与し経過観察とした。64才時、PSA(前立腺特異抗原)高値で生検を行ったが病理にて悪性は認めず、経尿道的前立腺切除術(TURP)を行った。生検、TURP施行の前後各2週間は、ワルファリンを休薬した。TURPの27日後(ワルファリン再開13日後)、肉眼的血尿を来たし術後出血と診断、ワルファリンを10日間休薬した。65才時、内科にてワルファリン療法が3mg/日から1.5mg/日+ブコローム300mg/日併用へと変更された。その17日後、肉眼的血尿を認め、翌日入院となった。INRは18.57へと上昇しており(処方変更前は2.32)、ワルファリンとブコロームを中止した。血尿は徐々に改善したが貧血が進行し、入院3日目に排泄性尿路造影を行った。入院4日目、腹部CTにて右尿管壁の肥厚を認め、その中心には造影剤が貯留していた。右尿管壁内に発生した血腫と診断、ビタミンKを2日間静注した。推定出血量は1200mLであったが、貧血は輸血を要することなく改善した。4ヵ月後、CTにて血腫吸収が認められた。
<症例報告事例>11)
83才女性。ワルファリンとブコローム、ベラパミルとジゴキシンの相互作用が疑われた。排尿障害、悪心、嘔吐で近医を受診、INR上昇とジギタリス中毒疑いで当院紹介となった。BUNは66.2mg/dL、クレアチニンは3.79mg/dL、INRは8.79、血中ジゴキシン濃度は2.44ng/mLで、全内服薬を中止し点滴を行ってINR、血中ジゴキシン濃度の低下をみた。薬物中毒の原因として、腎機能低下と薬物相互作用が疑われた。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Takahashi H.: Drug Metab. Dispos., 27, 1179(1999) WF-1224
2)真島 正ら: 新潟医学会雑誌, 88, 95(1974) WF-0021
3)Sakuragawa N et al.: 日本血液学会雑誌, 45, 830(1982) WF-0168
4)浅井 康文ら: 薬理と治療, 12, 4671(1984) WF-0073
5)Takigawa T et al.: Biol. Pharm. Bull., 21, 541(1998) WF-1096
6)松崎 浩史ら: 心臓, 34, 947(2002) WF-1468
7)小嶋 文良ら: 医療薬学, 29, 740(2003) WF-1648
8)Matsumoto K et al.: J. Clin. Pharmacol., 41, 459(2001) WF-2052
9)Osawa M et al.: Int. J. Pharm., 293, 43(2005) WF-2145
10)室崎 伸和ら: 日本泌尿器科学会雑誌 96, 564(2005) WF-2155
11)薮田 慶子ら: 第28回 日本病院薬剤師会近畿学術大会 抄録集 199(2007) WF-2401