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S-ワルファリンの代謝に影響するCYP2C9の遺伝子多型が、明らかとなっている。
高橋ら8)は、日本人86例のCYP2C9とCYP2C19の遺伝子型を検索し報告した。CYP2C9のホモ野生型(CYP2C9*1/*1, n =83)の遊離形S-ワルファリンの経口クリアランスは632 mL/minであるのに対してCYP2C9*3のヘテロ接合体(CYP2C9*1/*3, n=3)では234 mL/minと約50%低下していた。また、S体ワルファリンの7位水酸化体への部分代謝クリアランスは、CYP2C9*1/*1(ホモ野生型)で0.80 mL/minであったが、CYP2C9*3のヘテロ接合体者では0.20 mL/minと低下していた。一方、遊離形R-ワルファリンの経口クリアランスに対してCYP2C9遺伝子多型の影響はなかった。また、遊離形光学異性体の経口クリアランスにはCYP2C19遺伝子多型の影響はなかった。
Aithalら9)は、ワルファリン投与量とCYP2C9遺伝子多型について白人患者で検討している。彼らは、ワルファリンで抗凝固療法を受けて良好な反応を得ている患者をワルファリン投与量により低用量群36例(1.5 mg/日以下)とそれ以上の投与量であった対照群52例にわけ(補足すると欧米白人の平均ワルファリン投与量は1日5mg前後である)、更に健康成人100例を合わせてCYP2C9遺伝子型を検索した。その結果、低用量群においてはCYP2C9の変異遺伝(白人の場合はアジア人と異なりCYP2C9*3の他にかなりの割合でCYP2C9*2変異を有する)を少なくとも1個有する患者は36例中29例(81%)存在し、この割合は対照群の52例中20例(38%)、健康成人群の100例中40例(40%)よりも有意に高かった。別の見方をすれば、低用量群と健康成人群のCYP2C9遺伝子多型出現のオッズ比は6.21(95%信頼区間2.48-15.6)であった。また、ワルファリン療法導入期にINRが4以上となり投与量の減量が必要であった症例は、低用量群で20例、対照群で9例であり、そのオッズ比は5.97(95 %信頼区間2.26~15.82)であった。また、維持治療中の経過を観察すると、重篤な出血は、低用量群で0.0828/人・年の頻度で発生しており、この値は対照群の0.0225/人・年よりも高く、オッズ比では3.68(95 %信頼区間1.43~9.50)であった。以上の結果から、CYP2C9の遺伝子多型を有することは臨床的に至適な抗凝固効果を得るために必要となるワルファリンの投与量が低用量となること、導入期に過剰な凝固反応が出現するリスクが高いこと、さらに維持期の出血副作用のリスクが高いことと関係していることが示唆された。
ワルファリンに対する応答性がCYP2C9の遺伝子多型と関連する理由は、薬理活性の高いS-ワルファリンの代謝がほとんど専一的にCYP2C9によりなされているからである。
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【更新年月】
2021年1月