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  • 公開日時 : 2017/10/17 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/18 09:15
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【ワーファリン】 II‐3.2.抗凝固薬療法の臨床応用(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
II‐3.2.抗凝固薬療法の臨床応用(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

1950年代より抗凝固薬療法による急性心筋梗塞の二次予防を検討した成績は数多い11,12)。ワルファリンが臨床応用されたのは1948年頃米国での報告が最初とされている。しかし、臨床応用の初期に行われた対照群を有する臨床研究では、抗凝固薬の有効性は明らかにならなかった。抗凝固薬として、ビタミンK拮抗薬に分類されるフェニンジオン、ジクマロール、フェンプロクモン、アセノクマロールそしてワルファリンなど様々な薬剤が使用され、当時は用法・用量の設定や検査方法がまだ十分標準化されていなかった。その代表的な3つの研究報告、MRC(フェニンジオン、1964)13)、VAC(ジクマロールもしくはワルファリン、1969)14, 15)、German-Austrian(フェンプロクモン、1980)16, 17)では、死亡率で対照群とは有意差が認められなかった。

 

その後、1980年代にはいくつかの試験でINRが治療域・治療強度の指標として評価に用いられるようになってきた。プラセボ対照にはじまり、アスピリンとの比較、アスピリンとビタミンK拮抗薬の併用、ビタミンK拮抗薬の治療強度などを比較する様々な試験が行われた。経皮的冠動脈形成術(PCI)が普及する前の時期として、2000年代初頭までの抗凝固療法の成績をまとめた。

 

 

1)主な臨床試験

(1)プラセボ群との検討

RCT Sixty Plus(1980)18)では、心筋梗塞発症後6ヵ月以上経過した患者を対象とし、経口抗凝固薬群(アセノクマロール/フェンプロクモン:目標INR 2.7~4.5)とプラセボ群との無作為割付の比較で、60才以上の死亡率、心筋梗塞再発率、脳卒中発症率とも抗凝固薬により有意に抑制された。

RCT WARIS(1992)19,20,21)では、急性心筋梗塞から約1ヵ月後の患者を対象とし、ワルファリン群(目標INR 2.8~4.8)とプラセボ群の無作為割付の比較で、死亡率、心筋梗塞再発率に加え脳卒中発症率が同様に改善することが認められた。結論として急性心筋梗塞後の6ヵ月以上の長期間の抗凝固薬療法は推奨できるとしているが、出血性合併症の発症に留意すべきである。

RCT ASPECT(1994)74)では、心筋梗塞発症6週以内の急性期を脱した退院患者を対象とし、経口抗凝固薬群(アセノクマロール/フェンプロクモン:目標INR 2.8~4.8)とプラセボ群との無作為割付の比較で、再梗塞、脳血管事故発生で有意に減少した。死亡率では有意な差を認めなかった。重大な出血性合併症は有意に増加した。

 

(2)アスピリン群及び併用群との検討

これらの臨床試験では、目標INR 2.7~4.8周辺の高度な治療域を選択しており、出血リスクへの対応が課題であった。その後、強度の異なる治療域の検討、単独療法やアスピリンとの併用療法の検討を目的とし、標準治療薬として確立してきたアスピリンを対照またはベースとした臨床試験が行われた。

RCT WARIS-Ⅱ(2002)22)では、急性心筋梗塞発症から救命された75才未満の患者を対象とし、無作為割付によりアスピリン単独投与群、ワルファリン単独投与群(目標INR 2.8~4.2)、ワルファリン(目標INR 2.0~2.5)+アスピリン併用投与群の有効性および安全性を比較した。一次評価の複合イベント(死亡+非致死性再梗塞+脳血栓塞栓症)ではワルファリン単独投与群及び併用投与群ともに、アスピリン単独投与群より、有意な抑制効果を認め、一方出血リスクは有意な増加を認めた。

RCT ASPECT-2(2002)23)では、急性冠症候群のイベント発症後の患者を対象とし、無作為割付により経口抗凝固薬高度(アセノクマロール/フェンプロクモン:目標 INR 3.0~4.0)単独群、経口抗凝固薬中等度(目標INR 2.0~3.0)+アスピリン併用投与群、アスピリン単独投与群を比較した。一次評価の心筋梗塞/脳卒中/死亡の累積事故発生率において経口抗凝固薬高度単独投与群及び併用投与群ともに、アスピリン単独投与群より有意に抑制した。一方、大出血の発生率については有意差を認めなかった。

RCT OASIS(1998)24)では、パイロット試験として、非ST上昇急性冠症候群の患者を対象とし、無作為割付にてワルファリン低度(3mg固定用量/ INR 1.5程度)を標準治療に加えた群もしくはワルファリン中等度(目標 INR 2.0~2.5)を標準治療に加えた群と標準治療群を検討した。一次評価(心血管死、心筋梗塞新規発症、難治性狭心症)とし、固定用量を加えた群では、有意差を認めなかったが、中等度の用量調節群を加えた群では、有意に減少した。大出血では有意な差を認めなかった。

RCT OASIS-2(2001)25)では、不安定狭心症(非ST上昇急性冠症候群)の患者を対象とし、無作為割付にて標準治療にワルファリン中等度(目標 INR 2.0~2.5)を加えた群と標準治療群と比較した。一次評価(心血管死、心筋梗塞新規発症、脳卒中)と不安定狭心症での再入院を加えた二次評価にて、わずかに減少したが、有意差を認めなかった。ワルファリンを加えた群の良好なコンプライアンスは臨床的に重要な重度虚血性心血管イベントの減少を導く可能性が示唆された。一方、大出血は有意に増加した。両群ともに標準療法としてアスピリンが各々64%、65%と同程度投与された。

RCT ATACS(1994)35)では、アスピリン服用歴のない安静時不安定狭心症または非Q波梗塞患者に対して無作為割付を行い、アスピリンと抗凝固薬の併用療法群とアスピリン単独投与群の効果を比較した。併用療法群が有効であることが示された。

 

(3)低用量、固定用量のワルファリンの検討

他に低用量、固定用量のワルファリンを併用した場合などについても検討が行われたが、十分なベネフィットを得られない結果となった。

RCT CARS(1997)26,27)では、急性心筋梗塞後の患者を対象とし、無作為割付/二重盲検により、ワルファリン固定用量(1mg/日)とアスピリン併用投与群、ワルファリン固定用量(3mg/日)とアスピリン併用投与群、アスピリン単独投与群の3群で有効性と安全性を比較したが、併用による臨床的なベネフィットは認められなかった。

RCT CHAMP(2002)28)では、急性心筋梗塞後の患者を対象とし、無作為割付により、ワルファリン低度治療域(平均INR 1.8)及びアスピリン低用量の併用投与とアスピリ単独投与群を比較し、単独群を上回る有効性を認めなかった。

RCT LoWASA(2004)29)では、急性心筋梗塞後の患者を対象とし、無作為割付によりワルファリン固定低用量(1.25mg/日)とアスピリン併用投与群とアスピリン単独投与群を比較した。一次評価の心血管イベント(心血管死、再梗塞、脳卒中)、心血管死で比較した。併用投与群は複合リスクを低下させず、出血リスクが増加した。

 

 

2)主な観察研究

OBS 観察研究では、Buresly ら(2005)30)が1996-2000年の急性心筋梗塞後の患者において、抗血小板薬と抗凝固薬の併用により、高齢者の出血リスクが増加することを報告している。

OBS Smithら(2008)31)は、心筋梗塞の二次予防効果を検討したWARIS-Ⅱ(2002)22)のFollow-up研究を行い、平均4年の追跡期間中に一次エンドポイント(全死亡、非致死性心筋梗塞再発、非致死性脳梗塞)はワルファリン群16.7%、アスピリン群20.0%とオッズ比0.80でワルファリン群が有意に少ないと報告している。また、糖尿病例でワルファリンの効果減弱に影響する可能性を示唆したが、原因不明であった。

OBS Sorensenら(2009)32)は急性心筋梗塞後の虚血性イベント再発予防に使用する抗血栓薬の数が出血リスク増加に影響することを示した。

 

 

3)主なメタ解析

メタアナリシスについてはAnandら33)、Rothbergら34)の報告がある。

Meta Anandら(2003)33)は、冠動脈疾患(CAD)患者における抗血小板療法併用および非併用での経口抗凝固薬について検討結果を報告している。中等度治療域の経口抗凝固療法(INR 2.0~3.0)とアスピリンとの併用投与は、アスピリン単独投与より有効であり、安全性は同等との解析結果である。低度治療域の経口抗凝固療法(INR<2.0)とアスピリンとの併用投与は、心血管イベントを減少することなく、出血を増加するとの解析結果であった。

Meta Rothbergら(2005)34)が、急性冠症候群に対するワルファリン(INR >2.0)とアスピリンの併用療法について検討結果を報告している。冠動脈ステントはまだ含まれていない。出血リスクが低度、中等度の急性冠症候群の患者において、心筋梗塞、虚血性脳卒中、血行再建術はそれぞれ44%、54%、20%減少し、大出血は2.5倍に増加し、死亡率では差がなかった。結論としてワルファリン併用の心血管へのベネフィットは出血リスクを上回るとの結果であった。

 

 

また、次のテーマについて別途項目にまとめ、以下に述べる。

 

【参考文献】    [文献請求番号]
11)Loeliger EA et al. : Acta Med. Scand.,    182,    549(1967)    WF-0002
12)Meuwissen OJAT et al. : Acta Med. Scand.,    186,    361(1969)    WF-0003
13)Pickering G et al.: Br. Med. J.,    2,    837(1964)    WF-1993
14)Holzman D et al. : JAMA,    225,    724(1973)    WF-0914
15)Ebert RV et al. : JAMA,    207,    2263(1969)    WF-0044
16)Breddin K et al.: Haemostasis,    9,    325(1980)    WF-1942
17)Breddin K et al. : Circulation,    62,    63(1980)    WF-1994
18)Ross J et al. : Lancet,    2,    989(1980)    WF-0935
19)Smith P et al.: Arch. Intern. Med.,    152,    993(1992)    WF-0697
20)Smith P et al.: Ann. Epidemiol.,    2,    549(1992)    WF-0905
21)Smith P : N. Engl. J. Med.,    323,    147(1990)    WF-0908
22)Hurlen,M. et al.: N.Engl.J.Med.,     347,    969(2002)    WF-1593
23)van Es,R.F. et al.: Lancet,     360,    109(2002)    WF-1485
24)Anand,S.S. et al.: Circulation,     98,    1064(1998)    WF-4087
25)Yusuf,S. et al.: J.Am.Coll.Cardiol.,     37,    475(2001)    WF-4154
26)Goodman,S.G et al.: Am.J.Cardiol.,     74,    657(1994)    WF-0896
27)Fuster,V. et al.: Lancet,     350,    389(1997)    WF-1071
28)Fiore,L.D. et al.: Circulation,     105,    557(2002)    WF-2115
29)Herlitz,J. et al.: Eur.Heart J.,     25,    232(2004)    WF-4131
30)Buresly,K. et al.: Arch.Intern.Med.,     165,    784(2005)    WF-2199
31)Smith,P.J. et al.: Cardiology,     111,     161(2008)    WF-3056
32)Sorensen,R. et al.: Lancet,     374,     1967(2009)    WF-3130
33)Anand,S.S. et al.: J.Am.Coll.Cardiol.,     41,     62S(2003)    WF-4155
34)Rothberg,M.B. et al.: Ann.Intern.Med.,     143,     241(2005)    WF-4152
35)Cohen,M. et al.: Circulation,     89,     81(1994)    WF-4130
74)Stolk,LM et al.: Br.J.Clin.Pharmacol.        (2017)    WF-4446

【図表あり】
 
【更新年月】
2021年1月
 

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