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  • No : 1499
  • 公開日時 : 2017/10/16 00:00
  • 更新日時 : 2019/04/26 18:07
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【ワーファリン】 Ⅷ‐30.1.トリアゾール系抗真菌剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)

【ワーファリン】  Ⅷ‐30.1.トリアゾール系抗真菌剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)
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回答

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 629 その他の化学療法剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強する。【イトラコナゾールの添付文書に併用注意の記載がある】


[併用時の注意]

併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意し、必要に応じて本剤の用量調節を行うこと。

「ワルファリンを投与中の患者」は慎重投与であり、重要な基本的注意にて「本剤とワルファリンとの併用において、ワルファリンの作用が増強し、著しいINR上昇を来した症例が報告されている。本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること。」が注意喚起されている。

 

[相互作用の機序]1)

・イトラコナゾールがR-ワルファリンの肝薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害する。 

(R-ワルファリンはS-ワルファリンより薬理活性が低い)

(CYP3A4及びp-糖蛋白に対して阻害作用を有する)

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用増強】

61才女性。再発性の肺塞栓症にワルファリン5mg/日を投与中で1年以上安定していた。合併症治療目的の吸入ステロイドに起因する口腔カンジダ症を発症し、イトラコナゾール400mg/日の投与を開始した。4日後、全身の挫傷と鼻出血で受診した際、INRは8を超えていた。ワルファリンとイトラコナゾールを中止した。翌日の入院時のINRは依然8を越えていたが、新鮮凍結血漿投与で2日後には2.4に復した。(海外)

 

<症例報告事例、臨床研究、基礎研究報告>3)【ワルファリンの作用増強】

ワルファリンとイトラコナゾールの相互作用を認めた67才男性で、R-ワルファリン、S-ワルファリンの血中濃度を測定した。急性リンパ性白血病で骨髄移植を行い、次いで化学療法と放射線療法を行った。アスペルギルス肺炎予防にイトラコナゾール投与を開始し、投与開始4日後に深部静脈血栓症予防にワルファリン投与を開始した。INRは開始3日後に0.98、10日後に2.43そして11日後のイトラコナゾール中止11日後に1.38であった。血漿R-ワルファリン濃度は556、545そして605ng/mLでイトラコナゾールの影響を受けなかった。S-ワルファリン濃度は216ng/mL、763ng/mLそして341ng/mLでした。、S-7水酸化ワルファリン濃度は12.8ng/mL、90.8ng/mLそして139ng/mLであった。後に本症例にフルコナゾール投与を開始したところ、INR、血漿S-ワルファリン濃度は再び上昇した。

In vitro実験では、ヒト大腸腺癌Caco-2細胞系を使って、R-ワルファリン、S-ワルファリンの細胞透過性に対するイトラコナゾールの影響を検討した。R-ワルファリン、S-ワルファリンとも、頂端部から基底部へ、基底部から頂端部への透過性にイトラコナゾールの影響は認めず、ワルファリンの消化管吸収にP-糖蛋白は関与しないと思われた。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Stockley IH: Drug Interactions 5th ed.(Blackwell Scientific Publications, Oxford),        243(1999)    WF-1433
2)Yeh J et al.: Br. Med. J.,     301,    669(1990)    WF-0558 
3)Miura M et al.: Clin.Chim.Acta,     412,     2002(2011)    WF-3874

 

 

 

 

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 629 その他の化学療法剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強する。ホスフルコナゾールはフルコナゾールのプロドラッグである。【フルコナゾール、ホスフルコナゾールの添付文書に併用注意の記載がある】


[併用時の注意]

併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意し、必要に応じて本剤の用量調節を行うこと。

「ワルファリンを投与中の患者」は慎重投与であり、重要な基本的注意にて「本剤とワルファリンとの併用において、ワルファリンの作用が増強し、著しいINR上昇を来した症例が報告されている。本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること。」が注意喚起されている。

 

[相互作用の機序]1)

フルコナゾールが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害する。

(CYP2C19、CYP2C9及びCYP3A4に対して代謝酵素阻害作用を有する)

ホスフルコナゾールが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害する。

(CYP2C19、CYP2C9及びCYP3A4に対して代謝酵素阻害作用を有する)

 

[相互作用の事例]

<基礎研究報告>1)【ワルファリンの作用増強】

ヒト肝ミクロソームを用いた実験で、フルコナゾールはCYP2C9によるS-ワルファリンの7-水酸化・8-水酸化、およびR-ワルファリンのCYP3A4による10-水酸化を強力に阻害した。

 

<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用増強】

73才女性。大動脈弁置換術後にワルファリン2.5mg/日を投与中であった。皮膚カンジダ症を発症し、フルコナゾール200mg/日を投与した。7日後に消化管出血を来して入院した。INRはフルコナゾール開始日には3.2であったが、入院2日前には12.9に上昇しており、ワルファリンを中止していた。入院時のINRは10.6であった。新鮮凍結血漿と赤血球を投与しフルコナゾールを中止、入院3日目にはINRは2.2となりワルファリンを2.5mg/日で再開した。(海外)

 

<臨床研究報告>3)【ワルファリンの作用増強】

ワルファリン投与によりINRが2~3に維持されている男性患者7例に、フルコナゾール100mg/日を7日間投与した。プロトロンビン時間はフルコナゾール投与開始前日には平均15.7秒だったが、併用5日目には18.9秒へと有意に延長した。2例が併用5日目、1例が併用6日目にプロトロンビン時間の過度の延長(>20.1秒,INR換算4.5)となり、フルコナゾールを中止した。フルコナゾール投与終了翌日(第8日)、プロトロンビン時間は更に延長し、平均21.9秒となった。(海外)

 

<臨床研究報告>4)【ワルファリンの作用増強】

健康成人男性6例を対象とし、ワルファリンを単回経口投与した時と、フルコナゾールの連続投与中にワルファリンを単回経口投与した時の薬物動態とプロトロンビン時間の推移を比較した。ワルファリン単独投与時、プロトロンビン時間は投与48時間後に最大値(21.3±2.4秒)に達し、以後低下した。一方、フルコナゾール併用時、ワルファリン投与96時間後にプロトロンビン時間は最大値(26.6±3.6秒)に達し、投与168時間後までその値が持続した。フルコナゾールの併用により、S-ワルファリンの消失半減期は36時間から99時間に延長し、AUCは161μg・hr/mLから458μg・hr/mLに増大した。また、フルコナゾールの併用により、R-ワルファリンの消失半減期は46時間から97時間に延長し、AUCは212μg・hr/mLから440μg・hr/mLに増大した。(海外)

 

<症例報告事例>5)【ワルファリンの作用増強】

39才女性。特発性肝硬変、食道動脈瘤、上部消化管出血、腸間膜静脈血栓、低酸素症の既往があり、ワルファリン2 mg/日、ラニチジン、フロセミド、スピロノラクトンを服用し、プロトロンビン時間は19~22秒(正常値=10.8~12.4秒)で安定していた。口腔内カンジダ症に対してフルコナゾール100mg/日が追加された。その2週間後にフルコナゾールが200mg/日に増量され、プロトロンビン時間は23.1秒であった。フルコナゾール追加開始後36日、プロトロンビン時間が36.7秒に延長したので、フルコナゾールとワルファリンを中止した。その4日後、患者が腹痛、鼻血、歯肉出血、メレナ、四肢の斑状出血を訴えて入院した。プロトロンビン時間は45.4秒に延長していた。新鮮凍結血漿の投与により、プロトロンビン時間は20.7秒に短縮した。(海外)

 

<症例報告事例>6)【ワルファリンの作用増強】

(症例1)75才男性。ワルファリン25mg/週を投与していたが、入院検査で食道潰瘍病変よりカンジダ属が検出された。フルコナゾールを800mg/日で1週、400mg/日で続く3週投与とした。退院時、ワルファリン22.5mg/週でINRは2.2であった。退院2日後、INRは4.1になったが、ワルファリン減量は行わなかった。5週後、両足に放散する背痛と足の脱力で地区の病院に救急受診となった。INRは40に達し、ビタミンK10mgを皮下注した上で緊急転院した。転院時、プロトロンビン時間は73.8秒、INRは34.3であった。MRIでT3~T10領域の後脊髄硬膜外出血を認めた。


(症例2)39才男性。フルコナゾールによりINRが2.8から5.2へ上昇した。


(症例3)73才女性。3.2だったINRがフルコナゾール併用により12.9となり、消化管出血を来した。


(症例4)68才女性。プロトロンビン時間が14秒からフルコナゾール併用で65秒に延長し、消化管出血を来した。


(症例5)37才女性。フルコナゾール併用後、プロトロンビン時間が170秒まで延長し、頭蓋内出血を起こした。(海外)

 

 

<症例報告事例>7)【ワルファリンの作用増強】

68才女性。僧帽弁置換術既往があり、ワルファリン18mg/週の投与で安定した抗凝固効果を得ていた。左母趾のMRSAによる骨髄炎の壊死組織除去目的で入院した。術中に得た母趾軟部組織および第一中足骨の培養にてCandida albicansが同定され、術後よりフルコナゾール200mg/日の投与を開始した。2日後、プロトロンビン時間は19秒、INRは2.9であった。1週後、手術創より出血が認められ、夕方には黒色便があった。プロトロンビン時間は54.2秒、INRは33、活性化部分トロンボプラスチン時間は84秒で、再検査では各々65秒、50.6、87秒を示した。ワルファリンを中止、ICUに搬送して新鮮凍結血漿と全血の投与を行った。輸血後、プロトロンビン時間は24.9秒、INRは5.5、活性化部分トロンボプラスチン時間は48秒となった。凝固能は翌週にかけて徐々に回復し、プロトロンビン時間24.9秒、INR4.2、活性化部分トロンボプラスチン時間39秒となった。本症例ではフルコナゾールをさらに2週継続し、投与終了2日後よりワルファリンを2mg/日で再開した。その後、ワルファリンは従前の用量に戻し安定した抗凝固効果を得ている。(海外)

 

<症例報告事例>8)【ワルファリンの作用増強】

39才男性。インスリン依存性糖尿病、網膜症、慢性腎不全、高血圧症、赤血球増多症があり、3年前に腎移植をした症例が、右下肢の動脈閉塞で入院した。まずウロキナーゼを投与し、次いでヘパリンとワルファリンの投与を開始した。ワルファリン療法は目標INRを2.0~3.0とし、5~7.5mg/日を投与した。ワルファリン開始8日後、真菌性尿道炎を発症し、フルコナゾール投与を開始した。フルコナゾールは初日100mg、2日目以降50mg/日を経口投与した。フルコナゾール開始2日後、INRは2.8から3,8へと上昇し、ワルファリンを2.5mg/日に減量した。ワルファリン減量にも関わらず、INRはフルコナゾール開始3日後には4.7となり、ワルファリンを休薬した。その翌日、INRは5.2に達した。フルコナゾールは7日間投与して終了とし、ワルファリン2.5mg/日を投与して退院となった。その後INRは1.5まで低下したので、ワルファリン再開8日目より増量した。(海外)

 

<症例報告事例>9)【ワルファリンの作用増強】

44才男性。アルコール中毒、膵炎があり、中心静脈栄養目的にて他院に入院中に内頸静脈の血栓症を来たしてワルファリン投与を開始した。約1ヵ月前から両眼の視力低下と浮遊物を訴え受診、両側のカンジダ眼内炎と診断された。左硝子体の生検を行った後、アムホテリシン-Bを5μg注射し、フルコナゾール400mg/日の経口投与を開始した。2週後、左眼の視力低下を来たした。検査にて右眼は網膜前方の出血が、左眼は出血性の脈絡膜剥離が認められ、プロトロンビン時間は67.8秒であった。ワルファリンを中止し、左眼出血に対しドレナージを行った。2ヵ月後、視力はさらに低下し、右眼の硝子体出血を認めた。硝子体切除術を行い、視力回復が得られた。(海外)

 

<臨床研究報告>10)【ワルファリンの作用増強】

Tecarfarinはワルファリンと同様のビタミンK拮抗剤として抗凝固効果を示す新規抗凝固薬である。フルコナゾールによるCYP2C9、CYP3A4阻害が薬物動態、薬力学への影響をワルファリンと比較した。第1日、健康成人10名にTecarfarin 50mgを投与した。次いでフルコナゾール400mg/日を21日間経口投与し、フルコナゾール投与第14日目(試験第21日目)にTecarfarin 50mgを投与した。同様のスケジュールで第1日、第21日にワルファリン17.5mgを投与した。Tecarfarinおよび不活性代謝物ATI-5900の最高血漿中濃度、同到達時間、AUC(0-168)及び半減期でフルコナゾール併用の明らかな影響は認めなかったが、見かけの経口クリアランスはフルコナゾールによりわずかだが有意に上昇した。ワルファリン(ラセミ体、R-体、S-体)の最高血漿中濃度、AUC(0-168)はフルコナゾール併用で生物学的同等の範囲を逸脱して有意に上昇し、半減期は延長した。また、ワルファリン(ラセミ体)のみかけの経口クリアランスはフルコナゾールにより有意に低下した。Tecarfarin群/ワルファリン群のINRは単独投与期1.10/ 1.30、フルコナゾール併用期1.32/ 1.51、第Ⅶ因子活性は単独投与期61.5% / 31.8%、フルコナゾール併用期34.5%/ 28.4%であった。(海外)

 

<症例報告事例>11)【ホスフルコナゾール】

66才男性。約4年前の僧帽弁置換術以降、ワルファリン4~5mg/日の投与でINRは2.8~3.0にコントロールされていた。悪性リンパ腫ステージ4期と診断され、癌化学療法を行ったところ、白血球減少に伴い発熱がみられた。セフピロム、メロペネム投与では解熱せず、β-Dグルカン(深在性真菌症の指標の1つ)も102と上昇していたため、セフォチアム(2g/日)とホスフルコナゾール(800mg/日で2日投与後、400mg/日)の投与を開始した。INRは、ホスフルコナゾール投与開始前は3.0であったが、併用5日目には14.8となり、出血傾向も認められた。フィトナジオン10mg/日を投与し、ワルファリンは漸減~中止した。ホスフルコナゾールは継続し、β-Dグルカン値は低下した。その後、抗真菌薬をフルコナゾール内服(200mg/日)とし、ワルファリンは2mg/日で再開したが、INRは2.1~2.6にコントロールされた。

当院で2004年9月~05年2月のワルファリンとホスフルコナゾールの併用例を調査したところ、本症例の他に3例が該当した。内1例では、ホスフルコナゾール併用開始後にINRが2.46に上昇したため、ワルファリンを休薬した。他の2例でも、ホスフルコナゾール併用開始後に軽度のINR上昇を認めた。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Kunze KL et al.: Drug Metab. Dispos.,    24,    414(1996)    WF-1033
2)Harry D: Am. J. Med. Sci.,    305,    164(1993)    WF-1221
3)Crussell-Porter LL et al.: Arch. Intern. Med.,    153,    102(1993)    WF-0810
4)Black DJ et al.: Drug Metab. Dispos.,    24,    422(1996)    WF-1034
5)Baciewicz AM et al.: Ann. Pharmacother.,    28,    1111(1994)    WF-1207
6)Allison EJ Jr et al.: Eur. J. Emerg. Med.,    9,    175(2002)    WF-1471
7)Seaton TL et al.: DICP, Ann. Pharmacother.,    24,    1177(1990)    WF-2071
8)Gericke KR: Pharmacotherapy,    13,    508(1993)    WF-2072
9)Mootha VV et al.: Arch. Ophthalmol.,    120,    94(2002)    WF-2073
10)Bavisotto,L.M. et al.: J.Clin.Pharmacol.,     51,     561(2011)    WF-3604
11)近藤 万友美ら: 日本病院薬剤師会雑誌,    42,    1484(2006)    WF-2337 


 

 


 
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 617 主としてカビに作用するもの〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強したとの報告がある。【ボリコナゾールの添付文書に併用注意の記載がある】


[併用時の注意]

併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意し、必要に応じて本剤の用量調節を行うこと。

 「ワルファリンを投与中の患者」は慎重投与であり、重要な基本的注意にて「本剤とワルファリンとの併用において、ワルファリンの作用が増強し、著しいINR上昇を来した症例が報告されている。本剤投与開始にあたっては、あらかじめワルファリン服用の有無を確認し、ワルファリンと併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与すること。」が注意喚起されている。

 

[相互作用の機序]

ボリコナゾールが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害すると考えられる。

(CYP2C19、CYP2C9及びCYP3A4に対して代謝酵素阻害作用を有する)

 

[相互作用の事例]

<臨床研究報告>1)【ワルファリンの作用増強】

健康成人男子17名にボリコナゾール300mgまたはプラセボを1日2回12日間投与し、各投与期の第7日朝に、ワルファリン30mgを単回経口併用投与した。プロトロンビン時間-時間曲線下面積0-144は、プラセボ期に比しボリコナゾール期が有意に大であった。また、ワルファリン投与前に比し、プロトロンビン時間はボリコナゾール期で最大17秒延長し、プラセボ期の8秒との間に有意差を認めた。ボリコナゾールのワルファリン薬効増強効果は、ワルファリン投与24時間後から現れ、144時間後まで持続した。ワルファリン投与96時間後のプロトロンビン時間は、ボリコナゾール期24.6秒、プラセボ期15.0秒であった。(海外)

 

<臨床研究報告>2)【ワルファリンの作用増強】

病院にてフルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾールをワルファリンと併用した症例をカルテから抽出して、相互作用をレトロスペクティブに検討した。フルコナゾール併用が11例、イトラコナゾール併用が6例、ボリコナゾール併用が3例であった。フルコナゾール併用例では11例中10例でINRが上昇し、そのうち6例は4.5≦の重大な過上昇であった。イトラコナゾール併用例では6例中3例でINRが上昇し、すべてINR 2倍以内の変動であった。ボリコナゾール併用例では3例中2例でINR上昇を認め、1例は重大な過上昇であった。また、INRに対する影響は1週以内に認める症例が多かった。

 

<症例報告事例>3)【タクロリムスの血中濃度上昇】

免疫抑制剤タクロリムスの主代謝酵素はCYP3A4である。50才代男性で生体肝移植後のアスペルギルス症に対するボリコナゾール投与、血栓予防目的のワルファリン投与により血中タクロリムス濃度が上昇した症例報告である。自己免疫性肝炎による急性肝障害で長男をドナーとする生体肝移植を施行、術後の免疫抑制療法にタクロリムスを使用した。術後より真菌感染予防目的でホスフルコナゾールを投与したが、8日目にアスペルギルス感染を認め、ミカファンギンに変更したが無効のため、術後20日目にボリコナゾールを追加した。術後23日目からは血栓予防のためにワルファリン、アスピリンを開始した。血中タクロリムス濃度は、術後20日目までは4ng/mL/mg以下であったが、術後27日目6.1ng/mL/mg、術後34日目8.4ng/mL/mgへと上昇した。報告者はワルファリンとボリコナゾールの間にCYP2C9の競合阻害が起こり、その代償としてCYP3A4を介するワルファリン、ボリコナゾールの代謝が増加し、結果としてCYP3A4を介するタクロリムスの代謝が阻害されたと考えた。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Purkins L et al.: Br. J. Clin. Pharmacol.,    56(S-1),    24(2003)    WF-1662
2)山本 浩貴ら: 第16回日本医薬品情報学会総会・学術総会,     16,     78(2013)    WF-3962
3)前田 雄太ら: TDM研究,     26,     132(2009)    WF-3098

【図表あり】

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