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  • 公開日時 : 2017/10/16 00:00
  • 更新日時 : 2019/04/26 18:17
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【ワーファリン】 Ⅷ‐23.2.代謝拮抗剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)

【ワーファリン】  Ⅷ‐23.2.代謝拮抗剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)
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回答

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 399 他に分類されない代謝性医薬品〕


〔薬効分類 422 代謝拮抗剤〕



[相互作用の内容]1)

本剤の作用を増強する可能性がある。

本剤の作用を減弱する。【減弱:アザチオプリン、メルカプトプリンの添付文書に併用注意の記載がある】

アザチオプリンは分解されてメルカプトプリンになる。


[併用時の注意]

メルカプトプリンやアザチオプリンは、本剤の作用を増強するとも減弱するとも言われている。本剤の必要量を推定することはむずかしいので、血液凝固能検査値の推移を見ながら治療域に入るよう本剤の投与量を決める。

しかし併用開始時および併用中止時は、本剤投与量の大きな変更を要する可能性があるので、頻回に血液凝固能検査を行うこと。

また、抗腫瘍剤による副作用発生(骨髄障害など)にも注意し、出血症状をおこさないよう注意すること。

 

[相互作用の機序]2,3)

プロトロンビンの合成および活性化を増強し、本剤の抗凝固作用を減弱させるとの報告がある。

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>4)【アザチオプリンによるワルファリンの作用減弱】

50才女性。肺塞栓に対してワルファリン40 mg/週、自己免疫疾患に対してプレドニゾロン 40 mg/日、一硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、炭酸カルシウムを服用し、INRは2.9~3.4で安定していた。ステロイドの減量を意図してアザチオプリン100 mg/日が追加されたが、実際にはプレドニゾロンの減量はしなかった。アザチオプリン追加後、INRが低下し、ワルファリンを150~100 mg/週に増量したが、INRは2.0以下であった。アザチオプリン追加2ヵ月後、アザチオプリンは効果がないと判断され、中止になった。その後INRが上昇したので、ワルファリンを減量し、最終的に30 mg/週の投与量でINR 2.8となった。(海外)

 

<症例報告事例>5)【アザチオプリンによるワルファリンの作用変動】

深部静脈血栓症及び多発性脳梗塞のためワルファリンを服用中の患者に、プレドニゾロン5mg/日とアザチオプリンを併用投与した。アザチオプリンを150mgから100mgに減量した際、ワルファリンを20mgから15mgに減量が必要であり、アザチオプリンの投与量を戻した際、INRは2.4から1.3に減弱し、ワルファリンを11mgから17mgに増量しなければならなかった。(海外)

 

<症例報告事例>6)【アザチオプリンによるワルファリンの作用増強】

52才女性。抗リン脂質抗体症候群の症例である。脳梗塞後、アザチオプリンにワルファリンを長期併用し、プロトロンビン時間を15秒前後でコントロールしていた。原疾患が改善されたため、アザチオプリンの投与を中止したところ、鼻出血と吐血が生じ、プロトロンビン時間が32秒にまで延長した。(海外)

 

<症例報告事例>7)【アザチオプリンによるワルファリンの作用減弱】

41才女性。抗カルジオリピン抗体強陽性の全身性エリテマトーデス(SLE)の症例で、ワルファリン5mg/日でINRは治療域に安定していた。SLEの症候はプレドニゾロンとヒドロキシクロロキンでコントロールされていた。患者が肺塞栓症を発症し、呼吸困難と胸痛を訴えた為、原因を検索した所、6ヵ月前にヒドロキシクロロキンが中止され、ステロイド減量を企図してアザチオプリンの投与を開始されていたことが判明した。アザチオプリンは25mg/日から漸増され、直近では150mg/日投与であり、一方、プレドニゾロンは50mg/日から7.5mg/日に漸減されていた。アザチオプリン開始後、INRが目標治療域未満に低下した為、ワルファリンを増量していたが、呼吸困難での受診時のINRは1.8であった。INRを3.5に保つにはワルファリン12mg/日の投与を要した。(海外)

 

<症例報告事例>8)【メルカプトプリンによるワルファリンの作用減弱】

81才男性。前骨髄性白血病に対してメルカプトプリン100mg/日とメトトレキサートを投与すると、それまで概ね2~3で安定していたINRが低下し、ワルファリンを増量しても十分な薬効が得られなかった。メルカプトプリン、メトトレキサートを中止すると、ワルファリンはほぼ従前の用量で期待薬効が得られた。メルカプトプリンとメトトレキサートを再開すると、ワルファリンの薬効が減弱し、増量を要した。メルカプトプリンとメトトレキサートを中止すると、再びワルファリンの減量が必要になった。メルカプトプリンによりワルファリンの作用が減弱したと考えられた。(海外)

 

<基礎研究報告>2)【メルカプトプリンによるワルファリンの作用減弱】

ラットにメルカプトプリンを静注しても、ワルファリンの分布と排泄速度は変化しなかった。メルカプトプリンのin vitro及びin vivoの実験結果より得たプロトロンビン時間への影響、各種凝固因子活性への影響などから、6-メルカプトプリンはプロトロンビンの合成や活性化を増強して経口抗凝固薬の効果を減弱することが示唆された。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)USP-DI,22nd ed.,Vol.Ⅰ,        265(2002)    WF-1157
2)Martini A: J. Pharmacol. Exp. Ther.,    201,    547(1977)    WF-0676
3)Stockley IH: Drug Interactions 5th ed.(Blackwell Scientific Publications, Oxford),        228(1999)    WF-1428
4)Rotenberg M: Ann. Pharmacother.,    34,    120(2000)    WF-1226
5)Rivier G et al.: Am. J. Med.,    95,    342(1993)    WF-0793
6)Singleton JD et al.: Am. J. Med.,    92,    217(1992)    WF-0649
7)Walker J et al.: J. Rheumatol.,    29,    398(2002)    WF-1443
8)Martin LA et al.: Pharmacotherapy,    23,    260(2003)    WF-1540

 

 

 

 

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 422 代謝拮抗剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強したとの報告がある。


[併用時の注意]

臨床上問題にならない程度と思われるが、併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。

 

[相互作用の機序]

不明。

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>1)【ワルファリンの作用増強】

63才男性。心房細動のため目標INR2~3でワルファリンを投与していた。非小細胞肺癌と診断、ゲムシタビン2380mg/週の3週投与+2週休薬+3週投与の化学療法を施行した。化学療法施行前、ワルファリン57.5mg/週投与でINRは1.94~2.57(直近は1.94)であった。ゲムシタビンによる化学療法の第1クールの第1週、INRは3.52に上昇し、ワルファリンを52.5mg/週に減量した。化学療法第1クール第2週、第3週のINRはともに2.37であった。化学療法休薬第1週、第2週のINRは2.08、2.13と低下を示した。化学療法第2クール第1週、INRは3.17となり、ワルファリンは52.5mg/週から50mg/週へと減量した。化学療法第2クール第2週、INRは3.58へと更に上昇し、ワルファリンを48.5mg/週とした。化学療法第2クール第3週、INRは2.2となった。化学療法第2クール終了後、ゲムシタビンは中止となった。化学療法中止の翌週、INRは1.77に低下し、ワルファリンを57.5mg/週まで漸増して目標INRの維持が可能となった。ゲムシタビンによるワルファリンの作用増強と考えられた。(海外)

 

<臨床研究報告>2)【ワルファリンの作用増強】

イーライ・リリー社の安全性情報データベースでゲムシタビンと抗凝固薬の相互作用を検索した。文献、自発報告、臨床研究の中での副作用から、ワルファリン、フェンプロクモン、ヘパリンとの相互作用が疑われる報告が各々4報、1報、1報見出された。抗凝固薬併用症例は724例で、相互作用疑いの発現率は0.8%であった。このデータベースの検索期間内に、ゲムシタビンによる有害事象として登録された症例は13,496例で、抗凝固薬併用例は5.4%であった。抗癌剤使用患者では、化学療法施行による食欲不振、嘔吐、ビタミンK欠乏でワルファリンの作用増強を来し易いと考えられるが、ゲムシタビンとワルファリンの相互作用の報告は稀である。しかし、臨床医に対しては引き続き注意して併用することを推奨する。(海外)

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Kinikar SA et al.: Pharmacotherapy,    19,    1331(1999)    WF-1482
2)Kilgour-Christie J et al.: Lancet Oncol.,    3,    460(2002)    WF-1483

 

 

 

 

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 422 代謝拮抗剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強する。

【フルオロウラシル、カペシタビン、テガフール、ユーエフティ、ティーエスワンの添付文書に併用注意の記載がある】

 


 

[併用時の注意]

相互作用により出血症状を呈した症例がある。

併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に十分に注意し、必要に応じて本剤の用量調節を行うこと。

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(TS-1)では、併用中止後も、本剤の作用の増強が遷延し、出血やINR上昇に至った報告がある。

 


[相互作用の機序]1)

不明。

・カペシタビンがS-ワルファリンの代謝を阻害する可能性が考えられる。

・カペシタビンが本剤の肝薬物代謝酵素(CYP2C9)の酵素蛋白合成系に影響し、酵素活性が低下している可能性が考えられる。

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>2)【カペシタビンによるワルファリンの作用増強】

(症例1)81才男性。ワルファリン長期投与中で、INRは治療域内で安定していた。転移性大腸癌に対し、カペシタビンの投与を開始した。カペシタビン療法第1クール開始5日後、消化管出血によるショック状態で入院。ヘモグロビン7.2g/dL、INR>10であった。新鮮凍結血漿、ビタミンK、輸血、オメプラゾールで対処し得た。


(症例2)79才男性。ワルファリン長期投与中で、INRは治療域にあった。転移性大腸癌でカペシタビン療法を開始したところ、第2クール開始4日後に、消化管出血によるショック状態となった。ヘモグロビン8.0g/dL、INR>10であったが、新鮮凍結血漿、ビタミンK、輸血、オメプラゾールにより治療し得た。本症例では、カペシタビン療法の1年前より、5-FUとオキサリプラチンによる化学療法を施行していたが、この時は特に問題は認められていなかった。

 

 

<症例報告事例>3)【カペシタビンによるワルファリンの作用増強】

91才女性。直腸癌でカペシタビン療法を4コース施行(カペシタビン2000mg/m2/日分2で2週間投与、1週間休薬を1コース)。後に、左大腿静脈血栓を来した。目標INR2~2.5でワルファリン2.5mg/日の投与を開始。ワルファリン開始6週後(カペシタビン療法を2コース併用)、直腸と性器より出血。プロトロンビン時間72.9秒、INR>10、活性化部分トロンボプラスチン時間106.4秒。ワルファリンとカペシタビンを中止、ビタミンKを10mg静注し、48時間後にはプロトロンビン時間15.6秒、INR1.65、活性化部分トロンボプラスチン時間36.8秒に回復。(海外)

 

<症例報告事例>4)【フルオロウラシルによるワルファリンの作用増強】

54才女性。僧帽弁置換術後、プロトロンビン時間比30~40%を目標にワルファリン4~5mg/日にてコントロールされていた。子宮体癌の手術施行4ヵ月後よりフルオロウラシル200mg/日内服を開始した。フルオロウラシル併用開始3ヵ月後、上下肢に皮下出血を認めた。プロトロンビン時間比は9%であり、ワルファリンを1.5mg/日に減量した。

 

<症例報告事例>5)【フルオロウラシルによるワルファリンの作用増強】

75才男性。左下腿静脈血栓症のためワルファリン5mgとヘパリンを投与し、プロトロンビン時間は約11秒であった。結腸の腺癌のためフルオロウラシル1200mgを点滴静注したところ、2日後からプロトロンビン時間が延長し、ワルファリンを半量にした。しかし、プロトロンビン時間がさらに延長し続けたため、5日後からはワルファリン投与を中止した。ワルファリン中止後3日目のプロトロンビン時間はさらに延長し22.5秒になったが、5日目には13秒に回復した。

 

<症例報告事例>6)【フルオロウラシルによるワルファリンの作用増強】

59才男性。深部静脈血栓症でワルファリン2.5mgと5mgを隔日で交互に服用していた。1週前よりINRが上昇し、ワルファリンを減量していたが、血便と血尿で来院し、緊急治療室で吐血した。プロトロンビン時間は70.7秒、活性化部分トロンボプラスチン時間は87秒で、INRは35.9であった。本症例は1ヵ月前より5-FUを1200mg/週とロイコボリン1400mg/週の投与が開始されていた。新鮮凍結血漿とビタミンK1投与、ワルファリンの中止で対処した。(海外)

 

<症例報告事例>7)【カペシタビンによるワルファリンの作用増強】

59才男性。弁置換術後に目標INR2.5~3.5でワルファリンを投与していた。ステージ4の大腸癌(肝転移有)で切除術を施行、フルオロウラシルとロイコボリンによる化学療法を行った。その後、癌の肺・肝転移により、FOLFOX療法(オキサリプラチン、ロイコボリン、フルオロウラシルによる化学療法)を4サイクル行った。次いで転移性癌の増悪により、カペシタビンとイリノテカンによる化学療法を導入した。この化学療法は3週を1サイクルとし、第1日と第8日にイリノテカン120mg/m2、第2~15日にカペシタビン2000mg/m2を投与する。カペシタビン+イリノテカン療法第1サイクル開始前、ワルファリン3.6mg/日でINRが1.3だったため、ワルファリンを5日間で約6mg/日まで漸増、INRは第13日まで概ね治療域にあった。第16日、ワルファリン5.7mg/日でINRは5.83へと上昇しており、ワルファリンを2日休薬した後減量、第21日には3mg/日でINRは3.3となった。第2サイクル第7日、ワルファリンは2.8mg/日としていたにも関わらず、INRは7.09となり、ワルファリンを2日休薬した。第9日、INRは3.53で、ワルファリンを1.25mg/日で再開した。第3サイクル開始時、INRは2.19であったが、第5日には4.33となりワルファリンを漸減した。第21日、ワルファリン0.78mg/日でINRは2.57であった。カペシタビン療法終了後、ワルファリンは4mg/日に増量を要した。(海外)

 

<臨床研究報告>8)【フルオロウラシルによるワルファリンの作用増強】

フルオロウラシルを基本とする持続的癌化学療法を施行する患者連続95例に、鎖骨下静脈にカテーテルを挿入した翌日よりワルファリン1mg/日を経口投与し、INRを測定した。INRは0.90~1.18を正常値とし、>1.50となった場合に有意な上昇と判定した。カテーテル挿入時、INRは全例で正常値であった。化学療法施行中に、患者1例当り4~12回(中央値5回)、延べ488回のINR測定を行った。この内50回で、INR>1.5となった。有意なINR上昇を来したのは31例(33%)であった。INRが2.0~2.9となった例が6例、3.0~4.9となった例が18例、>5.0となった例が7例であった。また、28例で、INRが1.18~1.5となる軽度上昇を示した。8例で出血が認められ、これら症例のINRは1.34~8.8(7例が>1.5)であった。FOLFOX療法(フルオロウラシル、葉酸、オキサリプラチン)では12/21例(57%)、de Gramont療法(フルオロウラシル、葉酸)では11/40例(27%)、FOLFIRI療法(フルオロウラシル、葉酸、イリノテカン)では5/19例(26%)で、INRの有意な上昇を示した。(海外) 

 

<臨床研究報告>9)【カペシタビンによるワルファリンの作用増強】

乳房または大腸の進行癌/転移性癌の患者4例に対し、第1日にワルファリン20mgを単回投与した。第8日、カペシタビン療法を開始した。カペシタビン療法は1250mg/m2の1日2回14日間経口投与+7日間休薬を1サイクルとし、3サイクル施行して第70日に終了した。第61日(カペシタビン療法3サイクル目の第12日)、ワルファリン20mgを単回投与した。ワルファリン服薬後、INRが3.0を超えた場合や2回連続で2.5を超えた場合、安全性の観点よりビタミンKを5mg経口投与した。カペシタビン併用によりワルファリンのAUC0-∞はS体で57%(90%CI:32~88%)、R体で13%(90%CI:1~26%)の増大、半減期はS体で51%(90%CI:32~72%)、R体で15%(90%CI:4~26%)の延長、みかけのクリアランスはS体で36%(90%CI:24~47%)、R体で11%(90%CI:1~20%)の低下を示した。また、カペシタビンによりワルファリン投与前のINR値で補正したINR-時間曲線下面積0-144は2.8倍、INR最大値は2.9倍となった。4例中3例でビタミンK投与を要しており、この値は過少な評価である。カペシタビンの体内動態はワルファリンの影響を受けなかった。(海外)

注)90%CI=90% Confidential Interval(90%信頼区間)

 

<臨床研究報告>10)【TS-1によるワルファリンの作用増強/併用中止後の作用増強の遷延】

ワルファリンとフルオロウラシル系配合剤ティーエスワン(TS-1:テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム配合剤)の相互作用の検討。2004年12月~2008年12月に当院でワルファリンとティーエスワンを同時に投与した患者を抽出し、レトロスペクティブに相互作用を検討した。この期間にティーエスワンを投与した420例中11例(男7、女4、平均69.9才)がワルファリン併用例で、全例ティーエスワン投与前よりワルファリン療法施行中であった。平均投与量はワルファリン2.45mg(0.5~4.0mg)/日、ティーエスワン89.1mg(50~120mg)/日で、ティーエスワン開始にあたりワルファリンを事前に減量した例はなかった。11例全例でティーエスワン併用開始後にINRが上昇し、ワルファリンを9例で減量、2例で中止した。INRが7を超えた2例では、メナテトレノンを投与して対処した。概ねワルファリン減量・中止、メナテトレノン投与で速やかにINRは低下したが、1例はティーエスワンによるワルファリンの作用増強が遷延した。ティーエスワン併用前と比べ、ティーエスワン開始後のINR最大値は平均2.6倍となり、ワルファリン用量は平均で42.5%減少した(いずれも有意差あり)。また、3例で出血傾向を認めた。ティーエスワン開始からINRが最大となるまでの日数は平均29.2日で、INR上昇は最も速い例では併用12日目に認められた。

 

<臨床研究報告>11)【TS-1によるワルファリンの作用増強/併用中止後の作用増強の遷延】

ワルファリンとフルオロウラシル系抗癌剤ティーエスワン(TS-1)の相互作用発現時期の検討。2007年1月~2008年12月に当院でティーエスワンを投与した1122例の内14例がワルファリン併用例で、ワルファリンにティーエスワンを追加したのは11例であった。この内、ティーエスワン開始後にワルファリンが増量され、その原因が不明な1例、他院でワルファリンを投与され、ティーエスワン開始前後のワルファリン用量が不明の1例を除く9例(男3、女6、平均76.0才)を解析対象とした。ティーエスワン開始後、5例でワルファリンが減量または中止された。ティーエスワン併用開始11~34日後(中央値16日後)のINR測定では、併用前に比し平均1.63倍の有意な上昇を認めた。ティーエスワン投与前後で血清クレアチニン値、AST、ALT、血清アルブミン値の有意な変動はなかった。ティーエスワン併用開始1週以内にINRを測定した5例では、この期間に3例でINRが上昇し、内1例は併用前の1.5倍以上となった。併用開始2週後にINRを測定した6例中4例でINRが上昇し、内2例は併用前の1.5倍以上に上昇した。併用開始3週以内に9例全例でINRが測定され、全例でINR上昇を来たし、5例では併用前の1.5倍以上の値を示した。

 

<臨床研究報告>12)【UFT並びにTS-1によるワルファリンの作用増強】

フルオロウラシル系抗癌剤のテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)、テガフール・ウラシル配合剤(UFT)とワルファリンの相互作用の検討。検討対象はワルファリン投与中にテガフール配合剤を追加した症例(TS-1群5例、UFT群6例)とした。両群の年齢、性、テガフール配合剤開始時のワルファリン投与量(TS-1群2.70mg/日、UFT群3.29mg/日)に有意差はなかった。テガフール配合剤投与量はテガフール相当量でTS-1群96.0mg/日、UFT群333.3mg/日と、いずれも適正範囲内であった。INRはテガフール配合剤開始前、TS-1群1.87、UFT群1.66だが、テガフール配合剤開始後の最高値はTS-1群4.77、UFT群4.09であり、各々有意に上昇した。両群のINR上昇率に有意差はなかった。ワルファリンは両群とも全例で減量または休薬した。ワルファリン減量・休薬までの日数はTS-1群17.4日、UFT群107.2日、INRが最高値に達するまでの日数はTS-1群20.8日、UFT群117.2日で、いずれもUFT群が有意に長かった。また、ワルファリンを減量・休薬してもINRはさらに上昇した。減量後のワルファリン投与量はTS-1群1.20mg/日、UFT群2.08mg/日だが、その減量率に有意差はなかった。TS-1投与中にワルファリンを開始した例が1例あった。本例ではワルファリン併用開始後急激にINRが上昇し、7日目にワルファリンを休薬、その後休薬・減量を繰り返したがINRはコントロール出来ず、ビタミンK静注を要した。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Stockley IH: Drug Interactions 5th ed.(Blackwell Scientific Publications, Oxford),        228(1999)    WF-1428
2)BuycK HCE et al.: Clin. Oncol.,    15,    297(2003)    WF-1651
3)Copur MS et al.: Clin.Colorectal Cancer,    1,    182(2001)    WF-1498
4)米田 和子ら: 治療,    80,    3241(1998)    WF-1144
5)Wajima T et al.: Am. J. Hematol.,    40,    238(1992)    WF-0674
6)Brown MC: Pharmacotherapy,    17,    631(1997)    WF-1023
7)Janney LM et al.: Ann. Pharmacother.,    39,    1546(2005)    WF-2147
8)Masci GM et al.: J. Clin. Oncol.,    21,    736(2003)    WF-1618
9)Camidge R et al.: J. Clin. Oncol.,    23,    4719(2005)    WF-2144
10)五十嵐 弘幸ら: 日本病院薬剤師会雑誌,     45,    1321(2009)    WF-3101
11)山田 孝明ら: 薬学雑誌,     130,    955(2010)    WF-3304
12)高瀬 尚武ら: 医療薬学,      39,    91(2013)    WF-3833

 

 

 

 

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 399 他に分類されない代謝性医薬品、422 代謝拮抗剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強したとの報告がある。


[併用時の注意]

他の腫瘍用剤との併用時に本剤の作用が増強したとの報告がある。

十分な情報で評価が確立するまで、一応の注意が必要である。

 

[相互作用の機序]

不明。

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>1)【ワルファリンの作用増強】

(症例1)70才女性。乳癌に対する根治的乳房切除術後にシクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシルによる化学療法(CMF療法)を開始した。CMF療法第2サイクル終了後、右大腿静脈血栓症を来たしヘパリン、ワルファリンによる抗凝固療法を開始、プロトロンビン時間を18.2~21.0秒とした。続くCMF療法では、各サイクルの第15日までにプロトロンビン時間が44.2秒、39.0秒、31.0秒、29.0秒へと延長し、48~72時間持続した。鼻出血や血尿を来たしたため、ワルファリンの減量や休薬で対処した。 
 
(症例2)57才女性。乳癌に対し放射線療法、CMF療法を行った。CMF療法第2サイクル終了後、右大腿静脈血栓症を来たし、ワルファリンを投与した。プロトロンビン時間は14.8~17.2秒で安定したが、その後CMF療法を行うと、各サイクルの第15日にはプロトロンビン時間が24~26秒となり、鼻出血や尿潜血が認められた。


(症例3)62才男性。びまん性混合型リンパ腫に対しシクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、メトトレキサート、プレドニゾロンによる化学療法を6サイクル行った後、肺塞栓症を来たした。ワルファリン投与でプロトロンビン時間を18~20秒としたが、続く3サイクルの化学療法の開始1~8日後、プロトロンビン時間が45.0秒、30.0秒、36.0秒となり、出血が認められた。(海外)

 

 

<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用増強】

62才女性。乳癌のため乳房切除術を受けた。2年後に骨に転移した。患者は僧帽弁狭窄のためワルファリンの服用を開始した。以来、INRは2.02~2.80で安定していた。その後、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルによる化学療法を開始した。シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル療法の1サイクルが終了した時点ではINRが4.15~10に上昇したが、出血の徴候はなかった。(海外)

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]
1)Seifter EJ et al.: Cancer Treat. Rep.,    69,    244(1985)    WF-0420
2)Malacarne P et al.: Recenti Prog. Med.,    87,    135(1996)    WF-1054

【図表あり】

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