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  • No : 1405
  • 公開日時 : 2017/10/12 00:00
  • 更新日時 : 2021/08/18 10:30
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【ワルファリン】 III-19.ワルファリンと抗血小板薬の併用(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワルファリン】 
 
III-19.ワルファリンと抗血小板薬の併用(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

抗血栓療法において、単独療法もしくは抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)の併用療法のいずれを選択するかは最重要課題の一つである。
 
ワルファリンと抗血小板薬の併用に関しては、次の基本的な考え方がある。
( 1 )ワルファリンと抗血小板薬の併用により、それぞれの単独投与に比べワルファリンの抗凝固作用と抗血小板薬の血小板凝集抑制作用は相乗的に働き、抗血栓作用はより効果的となるが、同時に出血の副作用も増加する。
( 2 )ワルファリン投与患者に抗血小板薬を追加してもINR 値への影響は少ないが、併用当初はINR 値の頻回な測定を行ない、出血性合併症の所見に注意する。
( 3 )抗血小板薬を併用しても、一般的にINR のコントロール値を特に変える必要はない。
 
ワルファリンと抗血小板薬を経験的に併用される場合が少なくないが、必ずしも妥当とは言えない。併用については、リスクがベネフィットを上回る可能性を示唆する報告が多いことなど、リスクマネジメントの観点から、実践的な対応が必要である。未解決の部分があるものの、臨床研究、臨床経験やノウハウから集積されてきた知見は少なくはない(引用1~5)。
例えば、冠動脈疾患にアスピリンを使用していた患者に心房細動などでワルファリンの処方を開始する際、それぞれの疾患に対する薬剤を単に合わせた併用療法を選択するのではなく、ワルファリンが冠動脈疾患に対する効果も有することを踏まえ、例えばアスピリンを中止し、ワルファリン単独の治療でアスピリンの代替と共に出血リスクを回避する治療が推奨される場合がある。
これまでの臨床研究やガイドラインなどの見解を整理し、より具体的な方向性を提示する。
 
1.抗血小板薬との併用の概要 ~ リスクとベネフィット/適正使用の見解
多くの臨床研究(引用5~7)で抗血小板薬との併用による出血リスクの増加が明らかとなっている。一方、有効性において、ワルファリン療法に抗血小板薬を追加しても併用による上乗せ効果が十分でないとの臨床研究報告もあり、適正使用の観点から、併用による出血リスクがベネフィットを上回る可能性を考慮することが重要である。
 
1) 抗血小板薬との併用での出血リスク増加は明確
出血リスクの増加はいずれの研究(引用5~7)によっても明確となっている。Sorensen(引用6)らの検討をはじめ、海外の臨床研究のデータは数多い。日本人の情報は限られているが、BAT study(引用7)にて日本人でも併用による出血リスクの増加が示されている。
ワルファリンに抗血小板薬を併用することで、出血リスクが約2倍増加、3剤併用では約4倍増加するなど、さらに増加する可能性を認識する。
 
2) 抗血小板薬との併用のベネフィットは限定的
併用のベネフィットとして、有効性が向上するとの情報が不十分である。適応疾患毎に、併用によるリスクとベネフィットのバランスは異なると考えられる(引用1~5)。心房細動などではワルファリン療法の単独療法にて有効性・安全性を評価されており、抗血小板薬との併用による有効性(上乗せ効果)を認めた適応疾患(急性冠症候群など)は限定的である。抗血小板薬との併用では、有効性(上乗せ効果)を認めた対象疾患以外では、併用する根拠が不十分である。
 
3) 低強度あるいは低用量ワルファリンと抗血小板薬の併用療法
ワルファリンの治療域・強度を下げることや、低用量・固定用量で抗血小板薬と併用することでリスクを低減しつつ有効性を期待した仮説は否定されている(引用8~12)。例えば心房細動を対象とした臨床試験SPAFIII(引用8)の結果で、治療域を下回るINR では併用による出血の増加を回避できないだけでなく、有効性は低下し、安全性・有効性ともにリスクを増加したことは良く知られたエビデンスである。実臨床で危惧される状況としては、併用による出血を懸念し、治療域を下回るINR でのワルファリン療法となることである。
併用による出血リスクに対し、ワルファリンの作用を弱めることは、有効性も安全性にも悪影響となる可能性を認識する。「INR<1.5」または「固定用量」は、いずれの疾患においてもガイドラインでも認められておらず、添付文書、ガイドラインを参考に適応の目標INR を目指して使用する。
 
4) ワルファリンの単独療法に基づくエビデンス
ワルファリンによる治療の原点は、多くがワルファリンの単独療法からのエビデンスに基づく(引用13~17)。単独療法に対して、抗血小板薬との併用は妥当性のある適応の場合に限られる。心房細動に対しては2000 年代の半ばには、抗血小板療法が必須となる対象疾患以外では併用を避けるべきとのLip らの見解(引用18~21)が示され、その後の臨床研究(引用22~24)ではその見解を支持する結果が報告されてきた。なお、人工弁置換術後、急性冠症候群(ACS)などの一部の適応疾患では抗血小板薬との併用が有効な状況も考えられるが、ワルファリンの単独療法や抗血小板療法との適切な条件の検証が今後必要である。
 
5) ワルファリン単独群及び抗血小板薬併用群と異なる「併用が混在する群」の扱い
従来の臨床試験では、ワルファリン単独群と抗血小板薬併用群は、明確に区別して評価されてきた(引用13~17)。しかしながら、近年の直接型経口抗凝固薬(DOAC)に関連する臨床試験(引用25~28)ではワルファリン投与群として比較されているが、実際には使用理由の判然としない抗血小板薬の併用が混在する群となっていることが多い。適正使用の観点から、心房細動患者の血栓塞栓症予防に関してワルファリンとDOAC を比較した試験結果では、ワルファリン投与症例に必要のない抗血小板薬を併用している状況について考察もしくは評価されなくてはならない。抗血栓薬を評価する上で不適切に抗血小板薬が併用されている抗血栓療法では、安全性だけでなく、有効性の解釈も困難となる。
 
6) 血栓塞栓症の発現頻度と臨床的介入の必要性
対象となる血栓塞栓症の発現頻度は、ワルファリンが評価された当時の医療環境におけるデータであり、今日では、以前の発現頻度より低下している可能性も考えられる。例えば、他の臨床試験からも高血圧、高脂血症、糖尿病などの合併症に対する治療の進歩により、各要因の治療やコントロールの状況が改善したと考えられる(引用29)。
 
7) 現在の発現頻度の見直しの必要性
冠動脈疾患の一次予防に対するアスピリンは死亡率では有効性が得られず、プラセボ群に対して有効性のベネフィットはないが、出血頻度を増加させた。予防の意義を考慮する際、例えば、従来心房細動の発現頻度2~5%程度のケースが現在1%前後となれば、ベネフィット・リスクバランスの見直しが必要となる。
 
8) 心房細動患者でのステント留置など、抗血小板薬との併用
心房細動でステント留置された患者などにおけるワルファリンと抗血小板薬2 剤(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)の3 剤併用について、エビデンスが不十分であるが、使用実態の中で使用される場合がある。しかし、WOEST study(2013)(引用30)などの臨床研究ではワルファリンと抗血小板薬クロピドグレル1 剤の併用が、ワルファリンと抗血小板薬アスピリン+クロピドグレル2 剤併用より有用性が認められ、治療法の選択には十分な注意が必要となる。
問題点として、WOEST 以降にDOAC とワルファリンを比較する複数の試験が行われているが、いずれもワルファリンと抗血小板薬2 剤併用群を対照にしている。安全性・有効性で劣る治療群の設定について、適正使用及び被験者の保護の観点からその適切性、妥当性及び評価内容について再検証が必要と考える。
 
9) 抗凝固療法の中止と血栓塞栓症のリスク増加
頭蓋内出血、消化管出血などの大出血の増加で抗凝固療法が中断・中止される機会が増加すると血栓塞栓症のリスクが増加し、安全性のリスク増加が有効性へも悪影響を及ぼす懸念が考えられる。適正使用の観点から、過剰な抗凝固療法を避けるため、抗血小板薬の併用の要否を明確に十分考慮するべきである。
 
 
【引用】
1)Donadini、MP et al.: J.Thromb.Thrombolysis、29、208 (2010) WF-4178
2)堀 正二ら: 【ダイジェスト版】循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン (2009 年改訂版)、 1 (2010) WF-4122
3)井上 博ら: 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012 年度合同研究班報告)、1 (2013) WF-4053
4)Keeling,D et al.: Br.J.Haematol.、154, 311 (2011) WF-4347
5)Johnson,SG et al.: Chest、133、948 (2008) WF-4129
6)Sorensen,R et al.: Lancet、374、1967 (2009) WF-3130
7)Toyoda,K et al.: Cerebrovasc.Dis.、27、151 (2009) WF-4232
8)McBride,R et al.: Lancet、 348、633 (1996) WF-0979
9)Goodman,SG et al.: Am.J.Cardiol.、74、657 (1994) WF-0896
10)Fuster,V et al.: Lancet、350、389 (1997) WF-1071
11)Fiore,LD et al.: Circulation、105、557 (2002) WF-2115
12)Herlitz,J et al.: Eur.Heart J.、25、 232 (2004) WF-4131
13)Petersen,P et al.: Lancet、1、175 (1989) WF-0518
14)Kistler,J.P et al.: N.Engl.J.Med.、323、1505 (1990) WF-0663
15)McBride,R et al.: Circulation、 84、 527 (1991) WF-0782
16)McBride,R et a.:: Lancet、343、687 (1994) WF-0813
17)Ezekowitz,MD et al.: N.Engl.J.Med.、327、1406 (1992) WF-0709
18)Lip,GYH et al.: BMJ、336、614 (2008) WF-4173
19)Lip,GYH et al.: Heart、92、155 (2006) WF-4177
20)Donadini,MP et al.: J.Thromb.Thrombolysis、29、208 (2010) WF-4178
21)Lip,GYH et al.: Thromb.Res.、118、429 (2006) WF-4183
22)Steinberg,BA et al.: Circulation、128、721 (2013) WF-4002
23)Azoulay,L et al.: Thromb.Haemost.、109、431 (2013) WF-3940
24)Hansen,ML et al.: Arch.Intern.Med.、170、1433 (2010) WF-3346
25)Connolly,SJ et al.: N.Engl.J.Med.、361、1139 (2009) WF-3073
26)Patel,MR et al.: N.Engl.J.Med.、365、 883 (2011) WF-3585
27)Granger,CB et al.: N.Engl.J.Med.、365, 981 (2011) WF-3601
28)Giugliano,RP et al、: N.Engl.J.Med.、369、2093 (2013) WF-3958
29)Sato H et al.: Stroke、37、447 (2006) ZZZ-0029
30)Dewilde.WJM et al.: Lancet、381、1107 (2013) WF-3815
 
 
【更新年月】
2021年1月
【図表あり】

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