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  • No : 1013
  • 公開日時 : 2018/11/01 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/08 09:49
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【ワーファリン】 III‐12.4.コントロールの指標・評価~INR変動性による評価(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
III‐12.4.コントロールの指標・評価~INR変動性による評価(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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回答

コントロールではINRが安定していることが求められ、INR変動(INR Variability)がその把握に適した指標と考えられる。いくつかの臨床研究ではINR変動が小さい集団が良好な成績を示し、それぞれの臨床研究の集団の中での検討ではINR変動はイベントやコントロール状況との間でおおよその関連性が認められる。TTRとは独立した因子であることが示されており、TTR良好な集団でもINR変動が大きければ、リスクが高くなることが示されている。

 

1)代表的なINR変動の指標

OBS Finら(1993)1)(1995)2)は、プロトロンビン時間比の偏差の計算式を考案し、要因の一つに加え、ワルファリン療法中の高齢者の出血性合併症の重篤性に関するリスクを検討した。

標準偏差では個々の数値の平均値との差分を乗じた数列の総和に基づき偏差が算出される。この方法を変形し、個々のINRの数値と平均値の代わりに目標INRとの差分を乗じた数列を用いている。さらに個々の数値の測定間隔の要素を反映した。また、別の方法として目標INRとの差分ではなく、測定値毎に前値との差分を乗じた数列を算出し、より変動のみを反映しやすい計算式として考案した。

OBS Ibrahimら(2013)3)は、ワルファリン療法施行中の患者で、イベント予測因子としてVGR(Variance growth rate)を用い、INR変動性評価の意義を検討した。TTR(INRが目標域にあった期間の比率)と一緒に、3種類のVGR定量法(A法、B1法、B2法)を評価し、抗凝固が不安定な患者はイベント前3、6ヵ月の臨床イベントリスクが有意に高く、VGRにより経口抗凝固療法のモニタリングがさらに安全なものになると考えられた。目標INRとの差分はA法、前値との差分はB法で算出する。

 

 
 
 

OBS Lindら(2012)4)は、"INR変動性"として必要な変換を施したINRの標準偏差(standard deviation transformed INR;SDT-INR)がTTRよりも、ワルファリン治療の心房細動患者の死亡率、脳卒中、出血、入院に関して、適切な予測因子であると報告した。 

OBS Labaf ら(2015)5)は、血栓塞栓、大出血、死亡の複合エンドポイントの予後因子として、INR変動性の適切性を検討するため、同一施設内の機械弁患者の有害事象と死亡率を前向きに追跡した。TTR 2.0~4.0と、対数変換されたINR変動性が全患者について算出され、標準偏差ごとのリスクの勾配が評価された。INR変動性はTTR 2.0~4.0と同等に機能した。INR変動性は適切な死亡率として機能し、ハザード比は1.47(同 1.1~1.9)、0.70(同0.6~0.8)であった。INR変動性はhigh variability(INR変動が大きい)、low variability(INR変動が小さい)、TTRはhigh TTR、moderate TTR、low TTRに分類されて、Low TTR/ high variability、high TTR/ high variabilityのハザード比はそれぞれ2.0(同1.7~3.6)、2.2(同1.1~4.1)であった。INR変動性は複合エンドポイント(血栓塞栓、大出血、死亡)のTTR(2.0~4.0)の予後因子と同等であり、High TTRでもINR変動が大きければ、イベント減少に十分でなく、INR変動を加えることを示唆した。

 


 
 

OBS Sandenら(2015)6)は、医療施設毎の平均TTR(time in therapeutic range for each center; cTTR)70%以上で、cTTRと合併症の発生率との相関を検証した。cTTRが高いレベルの場合、cTTRをさらに改善しても心房細動では合併症は減少しないと結果であった。cTTRが70%以上ある医療施設でさらに望まれる患者ケアは患者教育や高血圧管理との見解であった。

OBS Razoukiら(2014)7)は、TTRとINR変動を用いたワルファリンの有害事象予測について検討した。心房細動に対する抗凝固療法施行の65才以上の患者個々にTTRと対数値INR変動を算出し、虚血性脳卒中と大出血のハザード比をCox回帰モデルで推定した。対数値INR変動の高値はTTRにかかわらず、虚血性脳卒中(ハザード比1.45)と大出血(ハザード比1.57)に対して独立した有意な予測能を示した。交互作用項を用いたモデルでは、対数値INR変動の高値は、TTR 50~70%(虚血性脳卒中HR 1.27、大出血HR 1.29)および>70%(各々1.55、1.56)では両転帰の有意なリスク増大を予測したが、TTR<50%では認めなかった。不安定な抗凝固能はTTRに依存せずワルファリンの有害事象を予測し、TTRレベルでさらに層別化できることが示された。

OBS van den Hamら(2013)8)は、TTRによるコントロールの概括が多いが、INR変動のタイミングと程度を表さないため、INRの推移パターンを考慮し、TTR活用方法の改善を評価した。CPRDデータベースで、INR値を有する40才以上の心房細動患者でINRの推移パターンのクラスター分析を行い、ネステッド・ケースコントロール研究により脳卒中、出血、死亡のオッズ比をTTRおよびINRの推移パターン別に算出した。TTR<30%の患者における死亡のオッズ比は100%の患者と比較した場合に3.76であった。転帰予測をTTRより改善し、より密接な抗凝固モニタリングを要する患者の同定に有用であると考えられる。

OBS 勝木ら(1994)9)は、国内単一施設の観察研究として、6ヵ月以上の観察を行ったワルファリン投与中の患者157例、長期単独療法(抗血小板薬投与例は除外)のコントロールレベルと合併症の関連を検討した。抗凝固療法の目標はINR2.5~3.5(トロンボテスト値8~15%)を目安とし、770患者・年の観察期間中に重大な出血性合併症は7例に発生し、発症時のINR(トロンボテスト値)は2.75以上(10%以下)であった。重篤な塞栓性合併症は16例(弁膜症例、虚血性心疾患例各8例)に発症し、弁膜症例では7例でINRが2.0以下の時で、一時的コントロール不良時の発生がほとんどであった。一方、虚血性心疾患例では、目標治療域内でも心筋梗塞再発が認められた。

2)その他

ビタミンK拮抗薬(VKA)治療下で高いTTRを持続する患者を特定するために、SAME-TT2R2スコア(女性、<60才、内科既往症[併発疾患2つ以上]、治療[相互作用薬]、喫煙[2倍]、人種[2倍])を提唱する報告10, 11)がある。

背景因子などでTTRの持続を予測する発想であり、解釈が難しく、課題の多い方法と考える。

・コントロールとD-ダイマ-との関係

OBS Nakatani ら(2012)12)は、J-RHYTHM Registryに登録された心房細動患者の内95例でワルファリンのコントロールとD-ダイマ-との関係をプロスペクティブな観察研究で検討した。ワルファリンのコントロール状態は、INRが治療域内にあった期間(TTR)、INR値が目標域内の回数を全測定回数で除したINR治療域内比率(%INR)、患者毎のINR変動係数(CV-INR)で検討した。追跡期間中のTTR、%INR、CV-INRは平均で各々62%、59%、0.19、中央値で各々67%、63%、0.19であった。TTRは%INRと有意に相関し、CV-INRとは相関せず、D-ダイマーと同時に測定したINRは有意な負の相関を示したことを報告した。

・INRコントロール不良の確率を評価するスコア

OBS Apostolakisら(2013)13)は、AFFIRM studyのデータを用いて、ビタミンK拮抗薬療法を行っている心房細動患者において、患者関連の臨床パラメータを用いたINRコントロール不良の確率を評価するSAME-TT2R2スコアを作成し、その妥当性を検証した。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Fihn,S.D. et al.: Ann.Intern.Med.,     118,     511(1993)    WF-4356

2)Fihn,S.D. et al.: Ann.Intern.Med.,     124,     970(1996)    WF-4357

3)Ibrahim,S. et al.: J.Thromb.Haemost.,     11,     1540(2013)    WF-4136

4)Lind,M. et al.: Thromb.Res.,     129,     32(2012)    WF-4319   

5)Labaf,A. et al.: Thromb.Res.,     136,     1211(2015)    WF-4325   

6)Sanden,P. et al.: Thromb.Res.,     136,     1185(2015)    WF-4324   

7)Razouki,Z. et al.: Circ.Cardiovasc.Qual.Outcomes,     7,     664(2014)    WF-4134

8)van den Ham,H.A. et al.: J.Thromb.Haemost.,     11,     107(2013)    WF-4220

9)勝木 孝明ら: J.Cardiol.,     24,     203(1994)    WF-2340

10)Poli,D. et al.: Intern.Emerg.Med.,     9,     443(2014)    WF-4290

11)Lip,G.Y.H. et al.: Chest,     146,     719(2014)    WF-4260

12)Nakatani,Y. et al.: Circ.J. ,     76,     317(2012)    WF-3624

13)Apostolakis,S. et al.: Chest,     144,     1555(2013)    WF-4400

【図表あり】
 
【更新年月】
2021年1月
 

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