• No : 20172
  • 公開日時 : 2024/10/22 18:28
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【タスフィゴ】 作用機序について教えてください。

【タスフィゴ】 
 
作用機序について教えてください。
 
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回答

電子添文には、作用機序に関する以下の記載があります。
 
18. 薬効薬理
18.1 作用機序(引用1)
タスルグラチニブは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子化合物である。タスルグラチニブは、FGFR融合タンパク等のリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。(引用2、3)
 
総合製品情報概要には、作用機序に関する以下の記載があります。(引用4)
 
タスルグラチニブは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1、2、3に対するチロシンキナーゼ阻害剤です。(引用3) タスルグラチニブは、FGFR融合タンパクのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。(引用2、3)
タスルグラチニブとFGFR1の複合体におけるX線結晶構造解析の結果から、タスルグラチニブはタイプVのキナーゼ阻害剤に分類されます。タスルグラチニブから3.9オングストローム以内の位置にあるキナーゼのアミノ酸残基は、FGFR1チロシンキナーゼドメインのアデノシン三リン酸(ATP)結合部位(キナーゼに共通する領域)、それに隣接するアロステリック領域(キナーゼごとに異なる調節領域)、両者の境界に位置するゲートキーパーに分類されました。(引用2)
FGFRはFGFR1–4の4種類が知られている膜貫通型の受容体チロシンキナーゼです。(引用5) FGFRへの線維芽細胞増殖因子(FGF)の結合によりFGFRのキナーゼが活性化し、その下流シグナルとしてMAPキナーゼ経路(RAS/RAF/MEK/ERK経路)やPI3K/AKT経路に代表される細胞増殖・生存をはじめとする様々な細胞機能に関与する経路が活性化されます。(引用5、6、7)
がん細胞では、FGFあるいはFGFRの発現上昇やがん組織周囲からのFGFの供給などにより、FGFRシグナルが活性化するだけでなく、さらに遺伝子融合を含む転座、点変異、増幅など種々のFGFR遺伝子異常によってFGFRの恒常的活性化が引き起こされます。それに伴う腫瘍の発生、転移・浸潤能の増加、薬剤耐性化などが報告されています。(引用5、6、7)
肝内胆管癌で検出されるFGFR2融合遺伝子をマウス由来線維芽細胞及びTp53遺伝子ノックアウトマウス由来肝オルガノイドに強制発現させることで造腫瘍性が付与されること(引用8、9)、胆道癌においてFGFR2融合遺伝子はKRAS、BRAF、IDH1/2の遺伝子異常とは排他的であること(引用9、10)から、FGFR2融合遺伝子は胆道癌におけるoncogenic driverであると報告されています。(引用8)

 
●タスフィゴの適正使用情報は、下記サイトでも提供します。
medical.eisai.jp/products/tas/tas_t35

 
【引用】
1)タスフィゴ錠35mg電子添文 2024年9月作成(第1版) 18. 薬効薬理 18.1 作用機序
2)社内資料:In vitro試験(作用機序)(2024年9月24日承認、CTD2.6.2.2.1) [TAS-0007]
3)Watanabe Miyano S. et al. : Mol Cancer Ther.2016 ; 15(11) : 2630-2639 [TAS-0008](著者はすべてエーザイ株式会社の社員です)
4)タスフィゴ錠35mg 総合製品情報概要 薬効薬理 1. 作用機序 p39 (TAS1001ASG)
5)Turner N, Grose R: Nat Rev Cancer. 2010; 10(2): 116-129 [ONCOL-1435]
6)Haugsten EM, et al.: Mol Cancer Res. 2010; 8(11): 1439-1452 [ONCOL-1564]
7)Dieci MV, et al.: Cancer Discov. 2013; 3(3): 264-279 [ONCOL-1565]
8)Cristinziano G, et al.: J Hepatol. 2021; 75(2): 351-362 [ONCOL-1566]
9)Arai Y, et al.: Hepatology. 2014; 59(4): 1427-1434 [ONCOL-1567]
10)Farshidfar F, et al.: Cell Rep. 2017; 18(11): 2780-2794 [ONCOL-1568] 
 
【作成年月】
2024年10月作成