電子添文には末梢神経障害の副作用(疾患共通)について以下の記載があります。
11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.1.3 末梢神経障害(末梢性ニューロパチー)(28.0%)(引用1)
観察を十分に行い、しびれ等の症状が認められた場合には、減量や休薬等の適切な処置を行うこと。
<乳癌>
発現状況、発現時期、転帰、対処法、長期投与による懸念及び発症機序は以下の通りです。
■ 発現状況(引用2)
国内臨床試験(221試験)、外国臨床試験(201、211、305試験)において、末梢神経障害が下表の通り認められました。また、重篤と判断されたのは、外国臨床試験での5例でした。
なお、投与前の末梢神経障害の発現状況や前治療歴の種類により、末梢神経障害が発現しやすくなったり、より高いGradeのものが発現するという傾向はみられませんでした。
■発現時期(引用2)
末梢神経障害が発現するまでの期間の中央値は、国内臨床試験(221試験)では投与開始39.1週後、外国臨床試験(201、211、305試験)では投与開始23.4週後でした。
■転帰(引用2)
外国臨床試験(201、211、305試験)において、末梢神経障害が投与前までに回復するまでの期間の中央値は、最終投与日から8.1週後でした。
なお、末梢神経障害による投与中止は、国内臨床試験(221試験)では1例、外国臨床試験(201、211、305試験)では47例(5.7%)でした。
[参考]末梢神経障害のGrade※別の処置状況および転帰(引用2)
乳癌患者を対象とした国内使用成績調査で末梢神経障害を発現した174例について、処置薬投与の有無、本剤の投与状況および転帰についてGrade別に示しました。
■対処法(引用2)
末梢神経障害が認められた場合には、下図を参考に必要に応じて、投与を延期または休薬してください。
■長期投与による懸念(引用3)
ハラヴェンの長期投与に伴う末梢神経障害の発現に蓄積毒性は認められませんでした。(引用4)
なお、ハラヴェン投与中[国内臨床試験(221試験)および外国臨床試験]に発現したGrade2以上の末梢神経障害の累積発現率をKaplan-Meier法を用いて検討した結果、投与が長期にわたるに伴い累積発現率は直線的に増加しており、発現率が高くなる可能性は否定できませんでした。したがって、個々の患者のリスクとベネフィットのバランスを勘案して、適宜、減量や休薬などを行ってください。
■発症機序(引用5)
●ハラヴェンによる末梢神経障害は軸索障害に分類され、微小管阻害作用により軸索輸送が障害されると考えられます。
●軸索障害では、手袋靴下型の感覚障害(触覚、温痛覚、振動覚などの感覚鈍麻や異常感覚)や遠位部優位の筋萎縮を呈します。
<薬剤性末梢神経障害の発症機序>
一般に末梢神経障害の発症機序は、病理組織学的障害による分類にて、軸索障害、神経細胞体障害、髄鞘障害に分けられます。ハラヴェンによる末梢神経障害は軸索障害(A)に分類され、微小管阻害作用により軸索輸送が障害されると考えられます。
【関連情報】
<処置薬として使用された薬剤(参考)>(引用6)
現在、末梢神経障害が発症した場合の治療法は確立されていませんが、国内第II相試験(221試験)、使用成績調査(乳癌)および特定使用成績調査(乳癌)では以下のような薬剤が使用されていました。
なお、本情報は医師が処置薬として報告した薬剤を記載しており、各薬剤の適応については添付文書情報などをご確認ください。
【引用】
1)ハラヴェン静注1mg電子添文2022年1月改訂(第1版) 11. 副作用 11.1 重大な副作用 11.1.3 末梢神経障害(末梢性ニューロパチー)
2)【手術不能又は再発乳癌】ハラヴェン静注1mg適正使用ガイド II重大な副作用とその対策 3.末梢神経障害(末梢性ニューロパチー) p9-11(DI-J-806)
3)【手術不能又は再発乳癌】ハラヴェン静注1mg適正使用ガイド VI Q&A 2.投与継続時 Q5 p41(DI-J-806)
4)ハラヴェン静注1mg審査報告書(2011年04月22日) p51-52
www.pmda.go.jp/drugs/2011/P201100077/170033000_22300AMX00520000_A100_1.pdf (最終閲覧日2024年7月9日)
5)ハラヴェン静注1mg適正使用情報<末梢神経障害> 発症機序 薬剤性末梢神経障害の発症機序 p22(DI-J-787)
6)ハラヴェン静注1mg適正使用情報<末梢神経障害> 処置 3処置薬として使用された薬剤(参考) p20(DI-J-787)
【更新年月】
2024年9月
【図表あり】
KW:錯感覚、末梢性運動ニューロパチー、末梢性感覚ニューロパチー、多発ニューロパチー、末梢性感覚運動ニューロパチー