静脈血栓塞栓症に対する抗血栓療法について検討した無作為臨床試験では、永続的な血栓性素因を有する患者を除外した対象症例または特発性静脈血栓塞栓に該当する対象症例などで抗凝固療法の期間などについて投与の継続期間や再発の指標などについて検討が行われた。
特発性静脈血栓塞栓症の患者に対して、抗凝固療法を中止すると再発が問題となり、投与継続期間が長くなれば出血が課題となることから、いつまで治療を継続するか、再発の予測に適した診断や検査はどれが適するかなどの疑問を解決するため、いくつかの臨床試験が行われてきた。
1)投与の継続期間の比較
特発性静脈血栓塞栓症については、いつまで投与を継続すべきか、6週間と6ヵ月、6ヵ月かそれ以上、3ヵ月か12ヵ月、3ヵ月かそれ以上、さらに6ヵ月と24ヵ月などを比較した臨床試験が報告されている。
RCT DURAC (The Duration of Anticoagulation )にてSchulmanら(1995)5)は、初回発症の静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)後の経口抗凝固薬(ワルファリンまたはジクマロール) を6週間投与した群と6ヵ月間投与した群との無作為割付比較試験で検討した。目標INR2.0~2.85で2年間の追跡にて、死亡率、大出血では有意差はなかった。静脈血栓塞栓症の再発は6週間群20.3%、6ヵ月間群9.5%でオッズ比 2.1と有意差が認められた。静脈血栓塞栓症の累積再発率は6週間群では投与終了後から急速に上昇し、6ヵ月間後から安定し直線的に上昇した。6ヵ月間群ではほぼ一定の割合で上昇し、6ヵ月以降の1年半は両群の再発率はほぼ並行に上昇した。
RCT DURACにてSchulmanら(1997)6)は、静脈血栓塞栓症を再発した患者227例を2群に分け、経口抗凝固剤(ワルファリンまたはジクマロール)の投与が6ヵ月間の群と無期限の群を4年間追跡して比較した。目標INR 2.0-2.85に設定した。結果は6ヵ月間群111例の静脈血栓塞栓症の再発は23例(20.7 %)、無期限群116例の再発は3例(2.6 %)で相対リスク8.0であった。重篤な出血は6ヵ月間群3例(2.7 %)、無期限群10例(8.6 %)で相対リスク0.3だった。患者の死亡率では有意な差はなかった。
RCT LAFIT (Long-term prevention of recurrent idiopathic VTE)にてKearonら(1999)7)は、特発性静脈血栓塞栓症に対するワルファリンの有用性をプラセボ群と無作為割付・二重盲検比較試験にて検討した。静脈血栓塞栓発症後のヘパリン・ワルファリンによる3ヵ月以上の治療患者において、ワルファリン投与群(目標INR 2-3)とプラセボ群とで血栓塞栓症の再発を24ヵ月間観察する予定であったが、中間評価にて本試験は終了した。ワルファリン群79例、プラセボ群83例にて、血栓塞栓症の再発はワルファリン群1例でプラセボ群17例に比べて有意に少なかった。出血はワルファリン群9例でプラセボ群1例に比べて有意に多かった。初発の特発性静脈血栓塞栓症の患者には3ヵ月以上の抗凝固療法が実施されるべきとの結論を示した。
2)投与終了後の再発抑制効果の維持
投与継続期間中の再発は抑制されるが、投与継続期間を1年、2年と延長して検討されたが、投与終了後は、再発の抑制効果を維持できなかった。
RCT WODIT(Warfarin Optimal Duration Italian Trial)-DVTにてAgnelliら(2001)8)は、特発性深部静脈血栓症の初回発症後3ヵ月抗凝固療法を行った患者に対して、抗凝固療法の中止群133例、9ヵ月(計12ヵ月)の治療継続群134例に無作為割付した臨床試験を行った。追跡期間各々37.2ヵ月、37.8ヵ月で、抗凝固療法(ワルファリンが97%)の目標INR2.0~3.0であった。抗凝固療法中止後の再発率は中止群5.1%/患者・年(中止後平均37.2ヵ月)、継続群5.0%/患者・年(同29.4ヵ月)であった。特発性深部静脈血栓症の抗凝固療法期間を1年に延長しても投与中止後のイベント発生抑制を維持しないと考えられた。
RCT WODIT(Warfarin Optimal Duration Italian Trial)-PEにてAgnelliら(2003)9)は、初回発症の肺塞栓症で3ヵ月の経口抗凝固薬(ワルファリンまたはアセノクマロール)療法(目標INR2.0~3.0)を満了した患者において、中止群161例と継続群165例に無作為に割り付け、OAC投与期間が肺塞栓症、深部静脈血栓症の再発に与える影響を検討した。継続群では一過性のリスクを有する肺塞栓症(一過性)にはさらに3ヵ月(計6ヵ月)、特発性肺塞栓症(特発性)にはさらに9ヵ月(計12ヵ月)投与した。継続群(一過性)/中止群(一過性)/継続群(特発性)/中止群(特発性)の患者・年当りの再発は1.8%/3.5%/4.2%/4.6%で特発性では療法中に関わらず、中止後の再発高リスクが示唆された。大出血は中止群1例、継続群3例に認めた。
RCT PADIS-PE(The Prolonged Anticoagulation During Eighteen Months vs Placebo After Initial Six-month Treatment for a First Episode of Idiopathic Pulmonary Embolism)にてCouturaudら(2015)10)は、特発性肺塞栓症の初回発作後における抗凝固療法の至適期間について、6ヵ月間のビタミンK拮抗薬投与後、さらに18ヵ月間ワルファリン投与を延長するワルファリン群(目標INR 2.0-3.0)、治療終了のプラセボ群と無作為割付による二重盲検比較試験で検討した。特発性肺塞栓症の初回発作で6ヵ月の抗凝固療法を受けた患者が、さらなる18ヵ月ワルファリン投与はプラセボに比べ、静脈血栓塞栓症再発/大出血を抑制した。しかし,抗凝固療法中止後にベネフィットは維持されなかった。
3)投与終了から長期経過後の比較
RCT DURAC(The Duration of Anticoagulation )にてSchulmanら(2006)11)は、静脈血栓塞栓症の初回発症に対して血栓塞栓症の再発予防の治療期間を6週間群または6ヵ月間群に無作為割付した試験5)の症例を10年後まで追跡し、再発率、死亡率を検討した。再発率及び死亡率は高く、再発予防期間を6週間から6ヵ月間に延長しても低下しなかった。再発は、1?6年後において6ヵ月間群が6週間群より低かったが、10年後では6週間群138例(31.2%)、6ヵ月間群123例(27.1%)と有意差は認められなかった。
RCT Campbellら(2007)12)は、深部静脈血栓症または肺塞栓症に対するワルファリンの至適投与期間について、3ヵ月投与群、6ヵ月投与群と無作為割付による臨床研究で検討した。3ヵ月投与群369例、6ヵ月投与群380例、目標INR 2.0~3.5で原則当初5日間ヘパリン併用後、ワルファリン投与、12ヵ月後まで追跡した。追跡期間全体で深部静脈血栓症/肺塞栓症による死亡は、3ヵ月投与群1例/2例、6ヵ月投与群3例/3例であった。深部静脈血栓症または肺塞栓症の非致死的遷延や再発は3ヵ月投与群29例、6ヵ月投与群26例、重大な出血事故は3ヵ月投与群0例、6ヵ月投与群8例であった。これらイベントの発現症例は3ヵ月投与群31例(8%)、6ヵ月投与群は35例(9%)であり、両群の予後に有意差は認めなかった。
Meta Boutitieら(2011)13)は、静脈血栓塞栓症発症後の抗凝固療法(ビタミンK拮抗薬)の治療期間と治療終了後の血栓再発リスクとの関連を7つの臨床試験データのプール解析で検討した。癌と診断されていない深部静脈血栓塞栓症の初発患者2,925例に対し、血栓再発リスクを最小化できる抗凝固療法の最短治療期間を検討した。静脈血栓塞栓症の再発リスクは抗凝固療法を3ヵ月で終了した場合とそれ以上継続した場合とは同等であり、特発性の近位側深部静脈血栓症、肺塞栓症は抗凝固療法の終了時期に関わらず再発リスクが高いことを報告した。
4)治療強度に関する検討
PREVENT (Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism)1)では特発性静脈血栓塞栓症の再発予防のため3ヵ月以降のINR1.5-2.0の低強度ワルファリンの長期療法は治療中止に比べ、有効性を示した。ELATE (Extended Low-Intensity Anticoagulation for Thrombo-Embolism)2)ではINR1.6-1.9の低強度群(目標INR 1.6-1.9)に対して、標準強度群(目標INR 2.0-3.0)が重大な出血リスクは変わらず、有意な再発抑制効果を示した。
RCT PREVENTにてRidkerら(2003)1)は、特発性静脈血栓塞栓症を発症後3ヵ月以上(中央値6.5ヵ月)のワルファリン療法を受けている患者を目標INR1.5~2.0の低強度ワルファリン療法群(255例、以下ワルファリン群)とプラセボ群(253例)の無作為割付・二重盲検試験にて血栓塞栓症の再発予防効果を比較した。追跡期間は中央値2.1年でINR中央値はプラセボ群1.0、ワルファリン群1.7であった。イベントの例数(患者100人当り年間再発数)は、血栓塞栓症の再発でプラセボ群では37例(7.2 /100人・年)とワルファリン群の14例(2.6 /100人・年)と有意な差を認め、ワルファリン投与により相対リスクは64%の有意な減少を示した。入院を要した出血事故ではプラセボ群が2例(0.4 /100人・年)、ワルファリン群が5例(0.9 /100人・年)で有意差はなかった。検討期間中の患者死亡はプラセボ群8例(1.4 /100人・年)ワルファリン群4例(0.7 /100人・年)で有意差はなかった。
RCT ELATEにてKearonら(2003)2)は、特発性静脈血栓症患者にてワルファリン療法の低強度群(目標INR 1.6-1.9)369例と標準群(目標INR 2.0-3.0)369例に無作為割付して、二重盲検比較試験を行った。静脈血栓症再発は低強度群(年当り1.9/100例)、標準群(年当り0.7/100例)で有意差を認めた(ハザード比2.8、95%信頼区間;1.1-7.0, P=0.03)。大出血は低強度群(年当り1.1/100例)、標準群(年当り0.9/100例)で有意差を認めなかった(ハザード比1.2、95%信頼区間;0.4-3.0, P=0.76)。通常群は低強度群に比べ、静脈血栓症再発の長期予防効果が高く、重大な出血リスクは変わらなかった。
5)再発の予測に関連する検討
・D-ダイマー測定の意義
RCT Palaretiら (2006)14)は、特発性症候性の深部静脈血栓症の初回発症後の抗凝固療法3ヵ月投与で再発なしの患者にて、投与終了1ヵ月後の D-ダイマー測定の意義について無作為割付試験にて検討した。D-ダイマー正常値例は正常値・再投与なし群、D-ダイマー異常値例はビタミンK拮抗薬の再投与なし群と再投与あり群(103例)(目標INR2.0~3.0)を無作為に割付した。全例が9ヵ月以上、平均1.4年フォローした。深部静脈血栓症再発は正常値・再投与なし群24例6.2%、異常値・再投与なし群18例15.0%、異常値・再投与あり群3例2.9%に認めた。正常値・再投与なし群に対して調整ハザード比2.27倍、異常値・再投与あり群に対して4.26倍で異常値・再投与なし群の再発が有意に高かった。抗凝固療法の中止1ヵ月後のD-ダイマー異常値の症例で再発リスクが高いが、抗凝固療法の再開にてリスクが低下することを示した。
・低リスクの肺塞栓症患者の管理
RCT Aujeskyら(2011)15)は、救急部門にて、症候性急性肺塞栓症患者の管理において、外来と入院との無作為割付による臨床試験を行った。低リスクの肺塞栓症患者に限れば外来患者用ケアでも安全で効果的に治療ができる。
・コントロール不良の影響
OBS Palaretiら(2005)16)は、経口抗凝固療法のコントロール状態が経口抗凝固薬中断後の静脈血栓塞栓症再発の長期的危険因子となる可能性について検討した。特発性急性静脈血栓塞栓症の患者が抗凝固薬開始後3ヵ月間に目標INRに維持する時間が抗凝固薬実施期間中および中断後のD-ダイマー高値と関連するとともに、遠隔期の静脈血栓塞栓症の再発の有意なリスク因子であることが示された。
・D-ダイマー及びF1+2の上昇と再発との関連性
RCT Poliら(2010)17)は、肺血栓塞栓症患者を36ヵ月(中央値)観察し、静脈血栓塞栓の再発率、慢性血栓塞栓性肺高血圧の発生率を検証した。経口抗凝固療法を3~6ヵ月実施後、9例は右室-右房間圧較差の範囲が30~35mgHg以下、1例は37mgHgであった。経口抗凝固療法を中止した206例中、静脈血栓塞栓再発23例(11.2%)、肺血栓塞栓症11例(48%)であった。抗凝固療法中止後のD-ダイマー及びプロトロンビン フラグメント1+2 (F1+2)の上昇及び特発性肺血栓塞栓症は再発と有意に関連していた。静脈血栓塞栓を再発した患者で右室-右房間圧較差の上昇はなかった。肺塞栓患者239例のうち慢性血栓塞栓性肺高血圧の発生率は0.4%であった。静脈血栓塞栓症の再発率とD-ダイマー及びF1+2の上昇は、慢性血栓塞栓性肺高血圧の進展に関連ないと考えられた。
6)新規の経口抗凝固薬(抗トロンビン薬、Ⅹa阻害薬)との臨床試験
・代替療法として新たな経口抗凝固薬が加わり、治療の選択肢が拡大
抗トロンビン薬(ダビガトラン:Dabigatran、キシメラガトランXimelagatran)やⅩa阻害薬(リバーロキサバン:Rivaroxaban、アピキサバン:Apixaban、エドキサバン:Edoxaban)などの薬剤(DOAC)がワルファリンの代替療法として検討され、静脈血栓塞栓症に対して、対照群との非劣性が証明され、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンが臨床で使用されるようになった。なお、キシメラガトランは肝障害の副作用などの理由により販売中止・開発中止となっている。
・DOACとの比較臨床試験からのデータ
RCT Francisら(2003)18)は、EXULT A研究として膝関節全置換術施行患者にて、キシメラガトランの静脈血栓塞栓症予防についてワルファリン(目標INR 1.8~3.0)との無作為割付による二重盲検比較試験を実施した。
RCT Fiessingerら(2005)19)は、THRIV研究として急性深部静脈血栓症患者にて、キシメラガトランの静脈血栓塞栓症の再発、出血、全死亡についてエノキサパリン/ワルファリンとの無作為割付による二重盲検比較試験を実施した。
RCT Schulmanら(2009)20,21)は、RE-COVER研究として6ヵ月の抗凝固療法を要する急性症候性深部静脈血栓症または肺血栓塞栓症の患者にて、ダビガトランの症候性静脈血栓塞栓症の再発の予防効果などについてワルファリン(目標INR 2.0~3.0)との無作為割付による二重盲検比較試験を実施した。
RCT Schulmanら(2013)22)は、RE-MEDY/RE-SONATE研究として症候性近位部深部静脈血栓症または肺塞栓症で3ヵ月以上抗凝固療法を受けていた患者を対象に治療延長によるダビガトランの有効性、安全性を検討するため、ワルファリン(目標INR 2.0~3.0)もしくはプラセボとの無作為割付による二重盲検比較試験を実施した。
RCT Bauersachsら(2010)23)は、EINSTEIN-DVT研究として症候性深部静脈血栓症の患者に対して、リバーロキサバン
(15mg1日2回で3週投与後20mg1日1回)とエノキサパリン/ワルファリン (目標INR2.0~3.0) のPROBE試験を実施した。
RCT Bullerら(2012)24)は、EINSTEIN-PE研究として急性症候性肺塞栓症の患者に対して、リバーロキサバン (15mg1日2回で3週投与後20mg1日1回)とエノキサパリン/ワルファリン (目標INR2.0~3.0) のPROBE試験を実施した。
RCT Agnelliら(2012)25)は、AMPLIFY研究として急性静脈血栓塞栓症(近位部深部静脈血栓症または肺塞栓症)の患者に対して、アピキサバン (20mg/日で7日投与後10mg/日)とエノキサパリン/ワルファリン(目標INR2.0~3.0) との無作為割付による二重盲検比較試験を実施した。
RCT Botticeliら(2012)26)は、急性症候性深部静脈血栓症に対する有効性、安全性をリバーロキサバン 5mg1日2回、10mg1日2回、20mg1日2回、1日1回のいずれかとエノキサパリン/ワルファリン (目標INR2.0~3.0) との二重盲検比較試験を実施した。
RCT Bullerら(2013)27)は、HOKUSAI-VTE研究として急性症候性の静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症または肺塞栓症)に対する3~12ヵ月投与での有効性、安全性をエドキサバンとワルファリンとの無作為二重盲検比較試験を実施した。
・ワルファリンの適正使用とは異なる投与群
ワルファリンの適正使用の面から、対象患者、治療方法、モニタリングなどについて考察が必要である。しかしながら、ほとんどの臨床試験で、対象となる疾患の重篤性を読み取ることが難しい。臨床試験毎の症例登録基準・除外基準が異なっており、血栓塞栓症の発現リスクにも幅があり、各臨床試験の対象患者の比較も難しい。
特に「急性肺塞栓症」では各試験の登録の条件から、ほとんどがnon-massiveと考えられるが、評価困難である。対象を「肺塞栓症」とする場合、さらに対象患者の把握が難しい。また、低強度の抗凝固療法が適しているケースも知られているが、一律にワルファリンをフルドーズで継続する群を対照として設定して、評価している。
各臨床試験での治療方法の比較、各臨床試験の投与期間、追跡期間、各臨床試験のエンドポイントの比較についても検証が必要と考えられる。臨床試験計画の設定に伴う制限の中で実臨床と異なり、適正使用の面から、個別化の点でも、各臨床試験で「標準治療群」とされる群の全例が、実際の臨床で適応すべき治療対象とは言えない。
同じ「肺塞栓症」、「静脈血栓塞栓症」と言っても血栓塞栓症の発現リスクには幅がある。従来検討の対象とされてきた抵抗性、難治性の血栓塞栓症だけでなく、それ以外に幅広い対象患者も含まれていることを認識し、一律の抗血栓療法を適応するのではなく、将来に向けて引き続き、血栓塞栓症の発現リスクや適応の判別方法を検討し、より明確な投与対象を把握する努力が今後の抗血栓療法のために必要と考える。
7)その他の臨床研究
・急性肺塞栓症発症後の患者の臨床転帰とそのリスク因子
OBS Pallaら(2010)28)は、急性肺塞栓症発症後1年間継続した抗凝固療法(目標INR 2.0~3.0)を実施された患者の臨床転帰とそのリスク因子を前向きコホート研究にて検討した。従来の抗凝固療法実施にて、肺塞栓症再発は大部分が最初の数日間に発症し、6ヵ月後以降の出血を認めなかったことから、抗凝固療法を1年間に延長することの安全性および有用性が示された。
・漸減による中止の検討
RCT Ascaniら(1999)31)は、ワルファリンを急に中止した際のリバウンドについて検討した。3-6ヵ月間のワルファリン療法中INR 2.0-3.0で特発性深静脈血栓41例をワルファリンの急な中止(A群20例)とワルファリン 1.25 mg/dayを1ヵ月継続した後に中止(B群21例)の2群を無作為割付試験にて比較した。結果はINR、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)、プロテインC、血液凝固第Ⅶ因子の推移は両群間に有意な差がなかった。深部静脈血栓症の再発はA群1例、B群3例に認められた。ワルファリン中止後の過凝固状態に対して低用量固定のワルファリンを継続した後に中止する方法は効果がなく、その役割は否定された。
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【更新年月】
2021年1月