レビー小体型認知症における国内製造販売後臨床試験(419試験)について製品情報概要に以下の記載があります。(引用1)
■レビー小体型認知症を対象とした国内製造販売後臨床試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)(419試験)
目的:レビー小体型認知症(DLB)患者を対象に、全般臨床症状を主要評価項目として、アリセプト12週投与のプラセボに対する優越性を検討した。また、DLB患者を対象に、48週間の継続投与期を設定し、アリセプト長期投与の有効性、安全性を検討した。
試験デザイン:プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、無作為化、並行群間比較試験(12週以降は非対照、18週以降は非盲検)
対象:レビー小体型認知症患者※1 160例
プラセボ群 79例、アリセプト群 81例
有効性解析対象例※2 151例
安全性解析対象例 160例を解析対象とした。
※1 probable DLB(第3回国際ワークショップ版診断基準に基づく)MMSE10~26点、CDR0.5以上、NPI-2 2点以上
※2 FAS
方法:治療期(12週間)、継続投与期(48週間)の2期に分け試験した。
<治療期>
観察期間(2週間)ののち、アリセプトまたはプラセボを1日1回朝、経口投与した。アリセプト群は最初の2週間は3mgを投与し、その後4週間は5mg、さらにその後10mgへ増量した。
なお、7週目以降、5mg/日に減量した場合、治療期中の10mg/日への再増量は不可とした。
<継続投与期>
アリセプトを1日1回朝、経口投与した。アリセプト群は10mg/日で投与した。プラセボ群は継続投与期からアリセプトを投与することとし、最初の2週間は3mgで投与、その後4週間は5mg、さらにその後10mgへ増量した。
なお、10mg/日で投与後、5mg/日に減量した場合、10mg/日への再増量を可能とした。
評価項目
有効性評価項目:主要評価項目(検証的解析結果) CIBIC-plus(全般臨床症状評価)※3
副次評価項目 MMSEの投与開始時からの変化量※4、NPI-2の投与開始時からの変化量※3、
NPI-10の投与開始時からの変化量※3
安全性評価項目:有害事象、臨床検査値、血圧、脈拍数、体重、12誘導心電図
※3 12週
※4 投与開始時、投与6、12、24、36、48、60週
解析計画
主要評価項目である12週時のCIBIC-plus(全般臨床症状評価)は、2標本Wilcoxon検定(両側0.046)で解析した。副次評価項目である12週時のMMSE、NPI-2、NPI-10は、投与群を因子、ベースライン値を共変量とした共分散分析モデルで解析した。また、60週時までのMMSEの推移は、投与群、時点、投与群と時点の交互作用を因子とし、MMSEのベースライン値及びスクリーニング期間の変化量を共変量としたMMRMで解析した。
安全性評価項目は有害事象、臨床検査値、血圧、脈拍数、体重、12誘導心電図について集計、評価した。
●全般臨床症状評価:CIBIC-plus(全般臨床症状評価)(12 週時)[主要評価項目(検証的解析結果)]
主要評価項目(検証的解析結果)であるCIBIC-plus(全般臨床症状評価)(12週時)において、アリセプト群とプラセボ群に有意差は認められず、優越性は検証されなかった(2標本Wilcoxon検定)。
●認知機能評価:MMSEの投与開始時からの変化量
MMSEの投与開始時からの変化量(12 週時)[副次評価項目]
MMSEの12週時における投与開始時からの変化量(最小二乗平均値)は、プラセボ群0.7点、アリセプト群1.6点であり、差は0.9点であった。
MMSEの投与開始時からの変化量(各評価時点)[副次評価項目]
治療期を含む各評価時点のMMSEの投与開始時からの変化量(最小二乗平均値)は以下のとおりであった。
安全性
有害事象
治療期
治療期において、プラセボ群の79例中34例(43.0%)、アリセプト群の81例中56例(69.1%)に有害事象が認められた。主な有害事象は、プラセボ群ではウイルス性上気道炎3例(3.8%)、下痢、パーキンソニズム、緑内障が各2例(2.5%)、アリセプト群ではウイルス性上気道炎10例(12.3%)、悪心9例(11.1%)、嘔吐、体重減少が各4例(4.9%)であった。
重篤な有害事象は、プラセボ群4例(薬物性肝障害、尿路感染、脊椎圧迫骨折、肺炎・意識レベルの低下)、アリセプト群5例(咽頭炎、大腿骨頚部骨折、パーキンソニズム、意識レベルの低下/幻視、歩行障害)に認められた。
死亡はアリセプト群1例(心房細動/肺炎)に認められた。
投与中止に至った有害事象は、プラセボ群5例(徐脈、尿路感染、せん妄、脊椎圧迫骨折、意識レベルの低下)、アリセプト群12例(悪心2例、大腿骨頚部骨折、妄想症、嘔吐、認知障害/妄想/幻視/易刺激性、意識レベルの低下/幻視、歩行障害、心房細動/肺炎、異常感/傾眠、下痢/悪心、妄想)に認められた。
継続投与期
継続投与期においては、プラセボ群(以降、プラセボ−アリセプト群)ではアリセプト投与後の48週間、アリセプト群では通期(治療期及び継続投与期)の60週間を評価した。
有害事象は、発現割合は、プラセボ−アリセプト群73例中64例(87.7%)、アリセプト群81例中77例(95.1%)に認められた。主な有害事象は、プラセボ−アリセプト群では食欲減退12例(16.4%)、ウイルス性上気道感染10例(13.7%)、悪心7例(9.6%)、下痢、パーキンソニズム、嘔吐が各5例(6.8%)、アリセプト群ではウイルス性上気道感染16例(19.8%)、悪心10例(12.3%)、食欲減退、下痢、体重減少が各9例(11.1%)に認められた。
重篤な有害事象は、プラセボ−アリセプト群18例、アリセプト群16例に認められ、いずれかの投与群で複数例に認められた事象は、誤嚥性肺炎(プラセボ−アリセプト群1例、アリセプト群2例)、肺炎(プラセボ−アリセプト群2例、アリセプト群1例)、脊椎圧迫骨折(アリセプト群2例)であった。
死亡は、プラセボ−アリセプト群2例(肺炎1例、脊椎圧迫骨折/肺塞栓症1例)、アリセプト群1例(間質性肺疾患/誤嚥性肺炎)に認められた。
投与中止に至った有害事象は、プラセボ−アリセプト群11例(食欲減退2例、精神症状、活動性低下、血圧上昇、脳出血、緊張性頭痛/悪心、悪心、大腿骨頚部骨折、構語障害、大腿骨骨折)、アリセプト群10例(体重減少、心電図QT延長、うつ病、肺気腫/間質性肺疾患/誤嚥性肺炎、パーキンソニズム、過換気、食欲減退/体重減少、激越、大腿骨頚部骨折、せん妄)に認められた。
レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制の用法及び用量は以下の通りです。
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
投与開始12週間後までを目安に、認知機能検査、患者及び家族・介護者から自他覚症状の聴取等による有効性評価を行い、認知機能、精神症状・行動障害、日常生活動作等を総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止すること。
投与開始12週間後までの有効性評価の結果に基づき投与継続を判断した場合であっても、定期的に有効性評価を行い、投与継続の可否を判断すること。
【関連情報】
●電子添文「5.効能又は効果に関連する注意」に以下の記載があります。(引用2)
5.6精神症状・行動障害、全般臨床症状に対する本剤の有効性は確認されていない。
●CIBIC plusについてはインタビューフォーム「V.治療に関する項目」に以下の記載があります。(引用3)
■CIBIC plus
患者の臨床症状を4領域(状態のあらまし、認知機能、行動、日常生活動作能力)に分けて評価する方法である。それぞれの項目について患者と介護者に面接し、患者の症状について投与前と比較し、全般的な変化を「大幅な改善、中程度の改善、若干の改善、不変、若干の悪化、中程度の悪化、大幅な悪化」の7段階の評価と判定不能で評価する。CIBIC plusの評価は、評価の偏りを避けるために患者の担当医とは異なる医師を評価者としており、患者だけでなく介護者にも面接をする。
●MMSE、NPIについてはインタビューフォーム「V.治療に関する項目」に以下の記載があります。(引用4)
■MMSE
認知機能を評価する方法で、「見当識、記銘、注意、計算、近時・遠隔記憶、了解、読書、書字・デザイン」から評価する。簡単に種々の認知能力を評価でき、さらに動作性能力も評価できる。得点の範囲は 30~0点(正常→重度)である。
■NPI
介護者による精神症状を評価するための方法。妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、多幸、無感情、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目につき、それぞれの頻度を1~4の4段階で、重症度を1~3の3段階で評価する。点数が高いほど頻度、重症度が大きいことを示している。各項目のスコアは頻度×重症度で表され(1~12点)、10項目で合計1~120点となる。
●再審査結果により電子添文を改訂いたしました。(引用5)
[改訂理由]
本剤の「レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制」の効能又は効果は、日本人のレビー小体型認知症患者様を対象として当社が実施した臨床第II相試験(431試験)、臨床第III相試験(341試験)などに基づき、2014年9月に承認されました。当社は、本効能又は効果の承認条件である「レビー小体型認知症を対象に、本剤の有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出すること」に従い、本剤のDLBに対する有効性と安全性を評価する製造販売後臨床試験(419試験)を実施しました。419試験の結果、主要評価項目である全般臨床症状(CIBIC plus総合評価)について、プラセボ群と本剤群の間に統計学的有意差は認められませんでしたが、419試験結果を含む製造販売後調査等に基づく再審査では、「DLBにおける認知 症症状に対する効能又は効果で承認された医薬品は本剤以外存在せず、関連ガイドラインにおいてDLBに対して、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用が推奨されている状況も踏まえると、DLBの必須症状である認知機能障害に対して有効性が期待できる本剤による治療には依然として臨床的意義はある一方で、419試験においてCIBIC plus総合評価を用いた全般臨床症状評価でプラセボ群と本剤群との間に有意差が認められなかった点等を踏まえ、承認事項及び添付文書の記載を適切に修正する必要がある」との結論(カテゴリー2)となりました。なお、本承認条件については、再審査結果通知日をもって解除されました。
【引用】
1)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1% 製品情報概要 臨床成績 レビー小体型認知症を対象とした国内製造販売後臨床試験(プラセボ対象二重盲検比較試験)(419試験) p19 (ART1692CSG)
2)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%電子添文 2023年5月改訂(第3版) 5.効能又は効果に関連する注意 5.6
3)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%インタビューフォーム 2023 年5月改訂(改訂第33 版) V.治療に関する項目 5.臨床成績(4)検証的試験 1)有効性検証試験・臨床試験 2.高度のアルツハイマー型認知症
4)アリセプト錠3mg・5mg・10mg・細粒0.5%・D錠3mg・5mg・10mg・内服ゼリー3mg・5mg・10mg・ドライシロップ1%インタビューフォーム 2023年5月改訂(改訂第33版) V.治療に関する項目 5.臨床成績 (4)検証的試験 1)有効性検証試験・臨床効果 3.レビー小体型認知症
5)再審査結果、電子添文改訂のお知らせ (DI-J-923)
【更新年月】
2024年4月