総合製品情報概要には、開発の経緯について以下の記載があります。(引用1)
アルツハイマー病(AD)は高齢者の認知症で最もよくみられる疾患であり、記憶およびその他の認知機能、行動、並びに日常生活機能が緩徐に障害される進行性の神経変性疾患である。国内では、2012年時点の認知症患者総数が約462万人、軽度認知障害(MCI*)患者数が約400万人であり、65歳以上の高齢者の約25%が認知症またはその予備群であると推計されている。(引用2) 高齢化の進展に伴い、この数はさらに増加し、2025年には国内で700万人以上が認知症となり、その2/3以上がアルツハイマー型認知症であると想定されている。(引用3)
レケンビ点滴静注(有効成分:レカネマブ[遺伝子組換え]、以降本剤)は、早期AD(アルツハイマー病による軽度認知障害[MCI due to AD]および軽度認知症)を対象に開発されたヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体である。アミロイドβ(Aβ)は、単量体(モノマー)、小さな二量体および三量体から、より大きなオリゴマーおよびプロトフィブリルまでの可溶性Aβ凝集体、そして不溶性のフィブリルと、さまざまな形態で存在する。このうちAβプロトフィブリルがシナプス機能を障害し、神経細胞毒性を示すことが示唆されており、これがADの進行に伴って臨床的に観察される認知機能低下、そして最終的には認知症を引き起こすと考えられている。(引用4)
本剤は、ADの病理の一つであるAβのうち、毒性が示唆されているAβプロトフィブリルに対して選択的に結合し、脳内のAβプロトフィブリルおよびアミロイド斑(Aβプラーク)を減少させると考えられ、ADによる軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制が期待される。(引用4、5、6、7)
本剤の臨床試験は、早期ADを対象とした国際共同第Ⅱ相プラセボ対照比較試験(日本人を含む)であるBAN2401-G000-201試験 Core Study(201試験Core Study)、早期ADを対象とした国際共同第III相プラセボ対照比較試験(日本人を含む)のBAN2401-G000-301試験(Clarity AD)Core Study(301試験Core Study)、2024年3月時点で試験進行中である201試験の非盲検継続投与期(201試験OLE)および301試験の非盲検継続投与期(301試験OLE)の中間解析によって有効性、安全性が検討された。
本剤は、米国では2023年7月承認を取得した。本邦においては上記の国際共同の臨床成績により評価され、2023年9月に「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得した。
*MCI:mild cognitive impairment(軽度認知障害)
【引用】
1)レケンビ点滴静注200mg・500mg総合製品情報概要 開発の経緯 p3 (LEQ1001CSG)
2)厚生労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業:都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 平成23年度~平成24年度総合研究報告書, 2013 [NEURO-1182]
3)公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団:平成29年度国内基盤技術調査報告書「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)に関する医療ニーズ調査」, 2017 [NEURO-1183]
4)Ono K, et al.: Int J Mol Sci. 2020; 21(3): 952. [NEURO-1158]
5)社内資料:種々アミロイドβへの結合性比較 [LEQ-0017]
6)社内資料:ラット海馬神経細胞へのアミロイドβ凝集体の結合阻害 [LEQ-0018]
7)社内資料:APPNL-G-F マウスにおける脳内アミロイドβに対する効果 [LEQ-0019]
【更新年月】
2024年9月