[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 213 利尿剤〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強または減弱したとの症例報告がある。
但し、コントロールされた臨床研究では相互作用は否定的である。
[併用時の注意]
臨床上問題にならない程度と思われるが、併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。
[相互作用の機序]
利尿剤により血液量が減少し、血液凝固因子の濃度が上昇することが原因と考えられている。
フロセミドが本剤を血漿蛋白から遊離させる。
[相互作用の事例]
<臨床研究報告>1)【相互作用なし】
健常成人10名にワルファリン0.8mg/kgを単回投与したときと、ブメタニド1mg/日を14日間連続投与してその8日目にワルファリンを単回投与したときの血中濃度、プロトロンビン活性を測定したところ、いずれも有意差は見られなかった。(海外)
<症例報告事例>2)【フロセミドによるワルファリンの作用減弱】
45才男性。アルコール、コカインの乱用で、解毒のため入院した。患者にはコカイン乱用用の注射器からの感染による細菌性心内膜炎、大動脈弁置換術の既往があった。大動脈弁置換術後、ワルファリン40mg/週、KCl 10 mEq/日、キナプリル5 mg/日、フロセミド20 mg/日が処方されていたが、患者の話ではワルファリン以外は真面目に服用しなかったとのことであった。患者のINRは1.93であった。入院後、上記薬剤にロラゼパム、葉酸、チアミンが追加された。入院8日後、INRは1.44に低下した。ワルファリン 42.5mg/週に増量した。入院12日後のINRは2.08に上昇した。入院14日後にフロセミドを中止した。以後、INRは徐々に上昇した。(海外)
<臨床研究報告>3)【相互作用なし】
健康成人男子6名にフロセミド80mg/日、5名にブメタニド2mg/日を8日間投与した。利尿剤の投与前と投与開始5日目、ワルファリン50mgを単回経口投与した。ワルファリン投与8時間後と48時間後の血漿ワルファリン濃度、ワルファリンの半減期には、いずれも利尿剤投与による有意な変動はなかった。また、ワルファリン投与48時間後のプロトロンビン時間も、利尿剤投与による有意な変動は示さなかった。(海外)
<基礎研究報告>4)【フロセミドによるワルファリンの作用減弱】
ワルファリンとフロセミドの相互作用をラットで検討した。
(1)ワルファリン1.2mg/kgを単独またはフロセミド1.67mg/kg、5mg/kg併用にて、単回静注した。フロセミド5mg/kg併用で、ワルファリンの消失速度定数と総クリアランスは有意に上昇、半減期は有意に短縮、AUCは有意に減少した。
(2)ワルファリンを第1日は0.6mg/kg、第3日と第5日は0.3mg/kg経口投与した。半数には第1日~第5日、フロセミド2mg/kgを併用にて経口投与した。併用群では、ワルファリンの消失速度定数は上昇、半減期は短縮、AUCは減少、最高血漿中濃度は低下したが、いずれも有意ではなかった。
(3)ワルファリン1.2mg/kgを単独またはフロセミド5mg/kg併用にて、単回静注した。プロトロンビン複合体活性の回復は、投与60時間後以降は併用群が有意に速かった。ワルファリン0.6mg/kgとフロセミド10mg/kgを単回静注すると、投与12~24時間後のプロトロンビン複合体活性は、併用群が有意に低値を示した。
(4)ワルファリン1.2mg/kgを単独またはフロセミド5mg/kg併用で単回静注した時、血漿遊離脂肪酸値は群間に差はなかった。
(5)ワルファリン2.5mg/kgとフロセミド10mg/kgを併用にて単回静注すると、ワルファリン単独時に比し遊離形ワルファリン濃度、肝内ワルファリン濃度が有意に上昇した。
(6)In vitroで、ワルファリンのウシ血清アルブミン、ラット血漿蛋白への結合は、フロセミドにより阻害された。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Nipper H et al.: J. Clin. Pharmacol., 21, 654(1981) WF-0754
2)Laizure SC et al.: Ther. Drug Monit., 19, 361(1997) WF-1172
3)Nilsson CM et al.: J. Clin. Pharmacol., 18, 91(1978) WF-1739
4)Ogiso T et al.: J. Pharmacobio-Dyn., 5, 829(1982) WF-1754