[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 641 抗原虫剤〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強する。【キニーネの添付文書に併用注意の記載がある】
[併用時の注意]
キニーネによる本剤の作用増強は臨床上問題にならない程度と思われるが、一応の注意が必要である。
[相互作用の機序]1)
キニーネが肝の血液凝固因子合成を阻害し、低プロトロンビン血症を生じることによる。
[相互作用の事例]
<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用増強】
ワルファリン服用中にキニーネを79mg/L含有する強壮ドリンクの大量飲用をはじめたところ、それまで安定していたワルファリン投与量の減量を必要とした2女性例の報告がある。1例はドリンクを1~1.5L/日飲用しており、ワルファリンをそれまでの6mg/日から4mg/日未満に減量した。もう1例はドリンクを2L/日飲用しており、ワルファリンを4mg/日から2mg/日に減量しても、抗凝固効果増強が回復するのに数日を要した。(海外)
<臨床研究報告>1)【ワルファリンの作用増強】
健康成人男子5名に硫酸キニーネ330mg/日を6~16日間経口投与したところ、全例でプロトロンビン時間の5~11.8秒の延長を示した。この内4例に、硫酸キニーネ330mg/日とビタミンK3(リン酸メナジオール:現在、本邦販売なし)10mg/日を併用で経口投与したところ、キニーネ誘発プロトロンビン時間延長に対する完全な防御効果を示した。(海外)
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Pirk LA et al.: JAMA, 128, 1093(1945) KTZ-0992
2)Clark DJ et al.: Br. Med. J., 286, 1258(1983) WF-1328
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 641 抗原虫剤〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強したとの報告がある。
[併用時の注意]
十分な情報で評価が確立するまで、一応の注意が必要である。
併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。
[相互作用の機序]
不明。
[相互作用の事例]
<症例報告事例>1)【ワルファリンの作用増強】
(症例1)66才男性。腹膜炎疑いで受診。安静時脈拍125拍/分、臥位血圧80/50mmHg、腸音は消失し、中等度の腹水を認めた。血圧は補液で回復。ワルファリン、合併症(うっ血型心筋症、緑内障)治療薬に加え、旅行1週前よりメフロキン服用を開始したことが判明。プロトロンビン時間著明延長。ワルファリンを中止し、新鮮凍結血漿、ビタミンK、オメプラゾールを投与して、急速な回復を示した。
(症例2)63才男性。クマリン系抗凝固剤、ジゴキシン、ソタロール、グリベンクラミド、クロルプロパミドを服用中であったが、旅行前よりメフロキンを開始。メフロキン開始約3週後、錯乱、攻撃、右足腫脹を来した。血糖値1.04mmol/L、プロトロンビン時間72.2秒。メフロキン、クマリン系抗凝固剤、抗糖尿病薬を中止して加療した。(海外)
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Loefler I: J. Travel Med., 10, 194(2003) WF-1614
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 641 抗原虫剤、252 生殖器官用剤(性病予防剤を含む)〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強する。【メトロニダゾールの添付文書に併用注意の記載がある】
[併用時の注意]
臨床的に重篤な相互作用が生じることが明らかにされている。
できるだけ併用を避けた方が良いと思われるが、やむを得ず併用する時は、本剤の減量(1/3~1/2)を要する可能性がある。
併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意し、必要に応じて本剤の用量調節を行うこと。
[相互作用の機序]1)
メトロニダゾールが本剤の肝薬物代謝酵素を阻害する。
[相互作用の事例]
<臨床研究報告>1)【ワルファリンの作用増強】
健康成人8名に、メトロニダゾール750mg/日の投与下および非投与下にワルファリンのラセミ体、S体、R体を単回投与した。メトロニダゾールの併用はラセミ体およびS体投与後の、プロトロンビン時間とワルファリン半減期を有意に延長したが、R体はメトロニダゾール投与の影響を受けなかった。(海外)
<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用増強】
31才女性。僧帽弁置換術後にワルファリンを投与して、プロトロンビン時間は17~19秒でコントロールされていた症例が、メトロニダゾール750mg/日を10日間投与された。メトロニダゾール投与終了7日以内にプロトロンビン時間は147秒にまで延長し、下肢に出血所見を認めた。(海外)
<症例報告事例>3)【ワルファリンの作用増強】
大動脈弁置換術後にワルファリンを服用していた患者が、ペニシリンGとメトロニダゾールの併用を開始した1週間後、尿管に血腫を生じ急性腎不全を生じた。(海外)
<症例報告事例>4)【ワルファリンの作用増強】
52才女性。うっ血性心不全、心房細動、僧帽弁置換術既往のある症例で、血栓形成予防目的にてワルファリン5mg/日を投与中であった。2週間ほど続く下痢、水様便のため受診し、便検体中よりランブル鞭毛虫が検出されたためメトロニダゾール500mg 1日3回投与を開始した。3回投与後に下痢は治まり、メトロニダゾール10日分を処方して退院となった。退院4日後、背痛、頭痛、発熱、下痢を来たした。下痢には黒い微粒があったが、明らかなメレナは認められなかった。翌日、頭痛、右大腿二頭筋の有痛性の塊、右腓の皮下出血斑が認められ、次いで右腓にも硬い塊を生じ、起立時に蒼白、めまいを来たし受診した。プロトロンビン時間は75秒、活性化部分トロンボプラスチン時間は>120秒、ヘマトクリット値は27.6%、ヘモグロビンは8.5g/dL、血圧は104/56mmHg、便潜血陽性で、胸部X線にて左下葉浸潤影が認められた。ワルファリンとメトロニダゾールを中止し、新鮮凍結血漿1単位、赤血球2単位を投与した。プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、ヘモグロビン、ヘマトクリット値は徐々に改善した。(海外)
<基礎研究報告>5)【ワルファリンのクリアランス低下】
ラットでR-ワルファリン、S-ワルファリンとメトロニダゾールの相互作用を検討した。血漿中の遊離R-ワルファリン、遊離S-ワルファリンのクリアランスは各々約30%、約60%の有意な低下を示した。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)O’Reilly RA et al.: N. Engl. J. Med., 295, 354(1976) WF-0866
2)Kaznier FJ et al.: Mayo Clin. Proc., 51, 782(1976) WF-0865
3)Kolko A et al.: Nephron, 65, 165(1993) WF-0788
4)Dean RP et al.: Drug Intell. Clin. Pharm., 14, 864(1980) WF-2086
5)Yacobi A et al.: J. Pharmacol. Exp. Ther., 231, 72(1984) WF-1311