[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 117 精神神経用剤〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を減弱する可能性がある。【トラゾドンの添付文書に併用注意の記載がある】
[併用時の注意]
併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。
[相互作用の機序]
不明。
[相互作用の事例]
<症例報告事例>1)【ワルファリンの作用減弱】
(症例1)61才男性。脳梗塞後にワルファリン40mg/週を服用し、INRは2.0~3.0に安定していた。トラゾドン50mg/日を3夜、100mg/kgを3夜服用した翌日のINRは1.07で、ワルファリンを50mg/週に増量した。
(症例2)69才男性。心房細動に対しワルファリン28mg/週を服用して、INRは2.0~3.0に安定していた。特筆すべき事由なくINRが4.46に上昇し、その約2ヵ月後もINRは4.28であったため、ワルファリンを24mg/週に減量した。その約1ヵ月後、INRが1.42に低下した。INRの上昇は服用中であったトラゾドン50mg/日を中断したため、INRの低下はトラゾドン50mg/日を約2週前より再開したためであった。
(症例3)84才男性。脳梗塞後にワルファリン45mg/週を服用し、INRは2.0~3.0に安定していた。トラゾドン50mg/日を開始した1ヵ月後のINRは1.22に低下した。ワルファリンを62.5mg/週に漸増した。(海外)
<症例報告事例>2)【ワルファリンの作用減弱】
40才女性。僧帽弁置換術後にワルファリン6.4mg/日を服用していた患者が、高度のうつとなり、トラゾドンの投与を開始した。トラゾドンは漸増し、300mg/日とした。トラゾドン投与開始前、プロトロンビン時間は20秒、部分トロンボプラスチン時間は44秒であった。トラゾドン開始5週後、プロトロンビン時間は14秒、部分トロンボプラスチン時間は36秒へと短縮した。ワルファリンを7.5mg/日に増量して、従前の値に復した。トラゾドンは過鎮静、効果不十分により、ドキセピンへと変更した。ワルファリンを従来の投与量に戻した後、1ヵ月後には5.5mg/日へと減量した。(海外)
<症例報告事例>3)【ワルファリンの作用増強】
65才男性の症例報告。前立腺癌手術後、肺血栓塞栓症発症にて、ワルファリン療法(目標INR2.0~3.0)が導入された。INRは安定していたが、INR6.08となった。出血性合併症は認めなかった。2週前より不眠等にトラゾドン50mg/日+魚油2g/日の投与が開始されていた。開始時INR2.56、この他に食事、運動、服薬状況の変化などは認められなかった。トラゾドン、魚油を中止し、2日後INRは正常域に戻った。以前の用量でワルファリン再開、トラゾドンと魚油は中止とし、退院とした。2週後 INR2.56で以降は良好にコントロールされている。(海外)
<臨床研究報告>4)【出血リスク上昇、抗うつ薬併用関連なし、SSRI併用関連あり】
(Ⅷ-5「アミトリプチリン塩酸塩」の項参照(海外))
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Small NL et al.: Ann. Pharmacother., 34, 734(2000) WF-1255
2)Hardy J-L et al.: Can. Med. Assoc. J., 135, 1372(1986) WF-1726
3)Jalili,M. et al.: Arch.Med.Res., 38, 901 (2007) WF-2652
4)Cochran,K.A. et al.: Ther.Drug Monit., 33, 433 (2011) WF-3732