ワルファリンは胎盤を通過することが知られており、臨床的にも点状軟骨異栄養症などの奇形1,2,3,4,5)および出血による胎児死亡の症例報告6)がある。Hallらがワルファリン投与を受けた妊婦418症例の報告で催奇形性などの問題点を考察している7)。
妊婦への投与は添付文書の禁忌に「投与しないこと」と記載してある。特に妊娠初期(妊娠3ヵ月まで)には絶対に禁止すべきである。
現実には人工弁置換術後のワルファリン服用患者が出産を希望する場合もある。妊婦への具体的な抗凝固薬療法について、専門医8,9,10,11,12,13)が見解を述べているが、いまだ結論は得られていない。(Ⅵ-4「催奇形性」の項参照)
対策として人工弁置換術の選択を含めた計画的な妊娠・出産を紹介する14,15)。
人工弁置換術後患者の計画的妊娠で良好な結果を得た報告16,17)と妊娠後期に心不全徴候を呈した報告事例18)がある。その他にも、人工弁置換術後患者の妊娠管理で良好な経過をたどった報告19,20)がある。
一方では、Nassarらは人工弁置換術後の妊娠管理33例82妊娠について検討し、ワルファリン単独管理の群で自然流産が多く、出産の率が低いと報告している21)。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)厚生省薬務局: 医薬品副作用情報 No.22, 195(1976) WF-0531
2)Zakzouk MS: J. Laryngol. Otol., 100, 215(1986) WF-0259
3)竹内 正七ら: 周産期医学, 13, 575(1984) WF-0480
4)Shaul WL et al.: Am. J. Dis. Child., 129, 360(1975) WF-0001
5)大谷 信一ら: 血液と脈管, 12, 49(1981) WF-0079
6)Kleinebrecht J: Dtsch. Med. Wochenschr., 107, 1929(1982) WF-0476
7)Hall JG et al.: Am. J. Med., 68, 122(1980) WF-0464
8)上田 浩ら: 産科と婦人科, 54, 1181(1987) WF-0375
9)生田 雅昭ら: 日本産婦人科・新生児血液学会誌, 1, 72(1991) WF-0631
10)Lee PK et al.: J. Am. Coll. Cardiol., 8, 221(1986) WF-0299
11)川端 寛ら: 産科と婦人科, 49, 1902(1982) WF-0156
12)上塚 芳郎ら: J. Cradiol., 20, 929(1990) WF-0939
13)笠貫 宏: Circ. J., 68(S-4) 1153(2004) WF-2229
14)岩出 和徳ら: 臨床婦人科産科, 48, 846(1994) WF-0942
15)中林 正雄ら: 産婦人科の世界, 45, 969(1993) WF-0941
16)松本 直ら: 日本産婦人科学会 神奈川地方部会会誌, 38, 23(2001) WF-1810
17)木村 加奈子ら: 胸部外科, 49, 821(1996) WF-1870
18)箕輪 隆ら: 日本臨床外科医学会雑誌, 51, 2211(1990) WF-1868
19)大谷 哲郎ら: 産科と婦人科, 59, 919(1992) WF-1805
20)金 成一ら: 日本産科婦人科学会 東京地方部会会誌, 51, 107(2002) WF-1382
21)Nassar AH et al.: Am. J. Obstet. Gynecol., 191, 1009(2004) WF-1885