電子添文には、薬物動態について以下の記載があります。
16. 薬物動態(引用1)
本剤は、腫瘍切除腔に留置後、ポリフェプロサン20の加水分解とともに、カルムスチン、1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)及びセバシン酸(SA)を放出すると考えられている。
ヒトでのポリフェプロサン20の薬物動態は不明である。
16.1 血中濃度
日本人初発悪性神経膠腫患者及び再発膠芽腫患者6例に、本剤を平均7.3枚(5~8枚)留置して全血中カルムスチン濃度を測定した結果、留置後約3時間に6.5~19.4ng/mLの濃度が得られたが、24時間又はそれ以降では定量下限(2.0ng/mL)未満であった。なお、本剤留置後ヒト脳組織に移行するカルムスチンの濃度は確認されていない。(引用2)
16.2 吸収
サル脳内に3H標識カルムスチン20%含有ポリマー(カルムスチン含有量は本剤の約5倍)を留置したとき、放射能の脳組織への浸透範囲(放射能濃度がポリマー/組織接触面の10%以上の範囲)は、留置後1日で6.1mm、留置後14日で2.9mmであったことが報告されている。(引用3)
16.3 分布
In vitro(0℃)におけるカルムスチンのヒト血漿たん白結合率は、約80%であったことが報告されている。(引用4)
16.4 代謝
ヒト肝ミクロソーム及びサイトソールを用いたin vitro代謝試験結果から、カルムスチンは、ミクロソームでの脱ニトロソ反応によって1,3-ビス(2-クロロエチル)ウレアに代謝されると推察された。また、非酵素的に2-クロロエチルイソシアネートに分解した後、グルタチオンと抱合体を形成すると推察された。(引用5)
16.5 排泄
16.5.1 外国人悪性腫瘍患者注)に14C標識カルムスチン200mg/m2を単回静脈内投与したとき、投与後96時間までに尿及び糞中にそれぞれ投与放射能の約60%及び1%未満が排泄され、また、投与放射能の約6%は14C-CO2として呼気中に排泄されたことが報告されている。(引用6)
16.5.2 ラット及びウサギの脳内に14C標識SA又は14C標識CPPを用いて合成したポリフェプロサン20(カルムスチン含有)を留置した。ラットでは14C-SA由来の放射能は、投与後7日までに尿、糞及び呼気(14C-CO2として)中にそれぞれ11%、1%及び46%が排泄され、脳内遺残物に8%が残存した。また、ウサギでは14C-CPP由来の放射能は、投与後21日までに尿及び糞中にそれぞれ62%及び2%が排泄され、脳内遺残物に29%が残存した。(引用7)
注)ギリアデルの効能又は効果、用法及び用量は以下のとおりです。
・ 効能又は効果: 悪性神経膠腫(引用8)
・ 用法及び用量: 通常、成人には、腫瘍切除腔の大きさや形状に応じて、本剤8枚(カルムスチンとして61.6mg)又は適宜減じた枚数を脳腫瘍切除術時の切除面を被覆するように留置する。(引用9)
【引用】
1)ギリアデル脳内留置剤7.7mg電子添文 2023年3月改訂(第1版) 16. 薬物動態
2)Aoki T, et al.: Neurol Med Chir(Tokyo)2014; 54: 290-301 [GLI‐0106] (本研究はエーザイ株式会社の支援を受けて実施された。)
3)Fung LK, et al.: Cancer Res 1998; 58: 672-684 [GLI‐0047]
4)Loo TL, et al.: J Pharm Sci 1966; 55: 492-497 [GLI‐0023]
5)社内資料: カルムスチンのヒト肝ミクロソーム、ヒト肝サイトソールに対する影響 [GLI‐0051]
6)DeVita VT, et al.: Clin Pharmacol Ther 1967; 8:566-577 [GLI‐0002]
7)社内資料: ラット及びウサギにおけるポリフェプロサン20の薬物動態 [GLI‐0052]
8) ギリアデル脳内留置剤7.7mg電子添文 2023年3月改訂(第1版) 4. 効能又は効果
9) ギリアデル脳内留置剤7.7mg電子添文 2023年3月改訂(第1版) 6. 用法及び用量
【更新年月】
2024年9月