• No : 1709
  • 公開日時 : 2017/10/25 00:00
  • 更新日時 : 2024/05/21 17:35
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【メリスロン】 作用機序について教えてください。

【メリスロン】 
 
作用機序について教えてください。
 
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回答

電子添文の18.薬効薬理の項には、以下の記載があります。(引用1)
 
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
本剤の有効成分であるベタヒスチンの作用機序は不明である。
18.2 内耳循環障害の改善作用
モルモットの実験的内耳微小循環障害に、本薬を腹腔内投与し、30分後に、対照群に比較して148%の血流増加が認められている。また、この現象は、病的状態において特異的にみられる。(引用2)
18.3 蝸牛管血流量の増加作用
内リンパ水腫モルモットに本薬を経口投与すると、蝸牛管血流量は5.5mL/min/100gから8.1mL/min/100gとなり、有意に増加した。これは、蝸牛放射状動脈の血管平滑筋弛緩作用により、血流量増加を生じたものと推察される。(引用3)
18.4 脳内血流量の改善作用
アカゲザルの実験によると本薬の静脈内投与により、大脳組織及び小脳組織の血流をそれぞれ70.4から81.4mL/100g/min.73.2から84.0mL/100g/min.に増加させることが認められている。(引用4)
 
【関連情報】
■図書「めまい診療ハンドブック 最新の検査・鑑別診断と治療」には、「ベタヒスチンは、ヒスタミンH1受容体作動薬として内耳の血流改善作用によりめまいを抑制されているとされており、抗めまい薬として臨床で用いられている。その後、ベタヒスチンがヒスタミンH3受容体拮抗作用を持つことが明らかになった。動物モデルにおいて、ベタヒスチンが前庭代償を用量依存的に促進することが明らかとなっている。(引用5)」との記載があります。(引用6)
 
※前庭代償(引用6より一部抜粋)
前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、内耳炎などの末梢性前庭疾患により、または前庭神経切除術、内耳破壊術、超神経腫瘍摘出術などの手術により一側の末梢前庭神経系が障害されると、著明な自発眼振や平衡失調が現れる。急激に生じた一側性末梢前庭障害による前庭系の左右差により惹起される前庭動眼系および前庭脊髄系症状が、障害された末梢前庭機能が回復しなくても、中枢前庭系の可塑性により時間経過とともに次第に軽快する現象を前庭代償とよぶ。
●一側前庭障害の前庭代償不全によるめまい
一側の前庭障害により生じためまいや平衡障害は、障害された末梢前庭機能が回復しなくても、前庭代償により次第に軽快する。しかし、前庭代償、とくに動的前庭代償が遅延したり停止すると(代償不全)、頭部の運動や体動により誘発されるめまいや平衡障害が軽快せず残存する。そのため、一側前庭障害後の前庭代償不全の患者は、持続性のめまいを訴える。
前庭代償は中枢前庭系の可塑性に基づくことから、高齢者では一側性の末梢前庭障害後の前庭代償が遅延しやすい。高齢者の前庭不全によるめまいや平衡障害は転倒の重要なリスク因子であり、転倒や骨折による長期臥床は歩行機能だけでなく認知機能も低下させ、高齢者が要介護となる主な原因の一つである。
 
■H3受容体について(引用5)
H3受容体はシナプス前ヒスタミン作動性線維に存在し、抑制性自己受容体として働きます。(引用7) 
H3受容体拮抗薬は内側前庭核におけるヒスタミンの放出を増加させ、前庭病変後の行動回復を促進すると考えられています。H3受容体拮抗薬であるベタヒスチンは、ネコの視床下部結節乳頭核におけるヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素の遺伝子発現を上昇させたことから、ベタヒスチンがヒスタミンの代謝と放出を増加させることが示唆されています。(引用8)

【引用】
1)メリスロン錠6mg 12mg電子添文 2023年9月改訂(第2版) 18.薬効薬理
2)斉藤 等ら:耳鼻咽喉科臨床. 1967;60(12):1112-1115 [MRS-0009](本研究はエーザイ株式会社の支援を受けて実施された)
3)北野 仁:耳鼻咽喉科臨床. 1985;78(8):1615-1626 [MRS-0090]
4)Tomita M. et al.:Stroke. 1978; 9(4):382-387 [MRS-0020](本研究はエーザイ株式会社の支援を受けて実施された)
5)Fukuda J. et al.; Brain Sci. 2021, 11(3), 360 [MRS-0135](The authors declare no conflict of interest in this study.)
6)めまい診療ハンドブック 最新の検査・鑑別診断と治療 中山書店 p153-157 [ZZZ-1298]
7)Arrang, J.M. Garbarg, M. Schwartz, J.C. Nature 1983, 302, 832–837
8)Tighilet, B.Trottier, S. Mourre, C. et al., Eur. J. Pharmacol. 2002, 446, 63–73. [MRS-0110]
 
 
【更新年月】
2024年5月
 

 
 
【図表あり】
KW:前庭神経、前庭代償、ヒスタミン、メカニズム