(Ⅷ-14「ダナゾール」の項参照)
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)、722 機能検査用試薬〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を増強する。【グルカゴンの添付文書に併用注意の記載がある】
[併用時の注意]1)
相互作用の報告は多くはないが、高用量のグルカゴン(25mg/日以上)を連日併用する時は、相互作用が生じる可能性が大きい。
このような例では、血液凝固能検査を頻回に行い、本剤を減量すること。
通常量のグルカゴン投与では相互作用は生じないと思われるが、血液凝固能検査値の変動には注意すること。
[相互作用の機序]1,2)
不明。
・肝での血液凝固因子の合成阻害による。
・本剤の作用部位への親和性を高める(未確定)。
[相互作用の事例]
<症例報告事例>3)【ワルファリンの作用増強】
ワルファリン服用患者で心筋収縮障害に対しグルカゴン(2~96mg)を併用していた24例の内、13例がグルカゴンを2日間総量で50mg以上投与された(この内4例がプロトロンビン時間の変動が激しいので除外した)。2日間で85mg投与された61才の女性では影響は認められなかったが、残り8例ではグルカゴン投与中に、ワルファリンに対する感受性が著しく増加し(3.2~12.2倍)、プロトロンビン時間が30~50秒と正常値の2.5倍以上にも達した。このうち3例が出血症状を呈した(2例は軽度の血尿とメレナ、1例は重篤な胃腸管出血)。しかし、グルカゴン総量30mg以下を1~2日で投与されたワルファリン服用患者(11例)では、相互作用は生じなかったとしている。
注)グルカゴン1mg:約1U.S.P.単位(海外)
【参考文献】 [文献請求番号]
1)USP-DI,22nd ed.,Vol.Ⅰ, 265(2002) WF-1157
2)Stockley IH: Drug Interactions 5th ed.(Blackwell Scientific Publications, Oxford), 238(1999) WF-1432
3)Kock-Weser J: Ann. Intern. Med., 72, 331(1970) WF-0729
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)〕
[相互作用の内容]
本剤の作用を減弱する可能性がある。
[併用時の注意]
十分な情報で評価が確立するまで、一応の注意が必要である。
[相互作用の機序]
不明。
[相互作用の事例]
<症例報告事例>1)【ワルファリンの作用減弱】
58才女性。副腎腫瘍患者が血栓症でワルファリン療法を入院9日目より開始した。ミトタンによる抗腫瘍化学療法は、入院6日目より開始した。ワルファリンは5mgと2.5mgの1日交替投与で、プロトロンビン時間は17.4~19.0秒であったが、投与開始8週後12.5秒、約11週後11.7秒へと低下した。ワルファリンを7.5mgと5.0mgの1日交替投与、次いで12.5mg/日投与として、プロトロンビン時間は19.4~22.7秒となった。ワルファリン開始4ヵ月後、肘頭皮下包の血腫で救急受診した。ワルファリン開始5ヵ月後、プロトロンビン時間25.3秒となり、ワルファリンを10.0mgと12.5mgの1日交替投与に減量した。ワルファリン開始6ヵ月後、プロトロンビン時間27.1秒で、ワルファリンを10mg/日に減量とし、プロトロンビン時間は20.8秒と安定した。ワルファリン開始8ヵ月後、吐血、歯肉出血、嗜眠を来し入院、昏睡状態となった。CTにて転移性脳腫瘍からの出血を認め、プロトロンビン時間は74.6秒、部分トロンボプラスチン時間は100.0秒であった。患者はその夜に死亡。ミトタンの長期投与によるワルファリンの抗凝固効果の変動が疑われた。(海外)
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Cuddy PG et al.: South. Med. J., 79, 387(1986) WF-1725
[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]
〔薬効分類 249 その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)〕
[相互作用の内容]
本剤との相互作用はないと考えられる。
【インスリンの血糖降下作用を増強する可能性がある:ヒトインスリン(遺伝子組換え)、インスリンアスパルト(遺伝子組換え)、インスリングラルギン(遺伝子組換え)、インスリンリスプロ(遺伝子組換え)、インスリンデテミル(遺伝子組換え)の添付文書に併用注意の記載がある】
[併用時の注意]
相互作用は生じないか、または生じても臨床上問題にならない程度であると思われる。
併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。
[相互作用の機序]
不明。
[相互作用の事例]
<臨床研究報告>1)【相互作用なし】
糖尿病でトルブタミドまたはインスリンを投与中の患者で、ワルファリンを10日以上併用した症例をレトロスペクティブに調査した。トルブタミド投与群とインスリン投与群のワルファリン初回投与量、ワルファリン維持用量、ワルファリン投与開始時のプロトロンビン活性、ワルファリン維持療法時のプロトロンビン活性には何れも有意差はなかった。(海外)
<基礎研究報告>2)【インスリン分泌に対するワルファリンの影響】
(研究1)ワルファリン10-2M~10-8Mの存在下または非存在下に、ラット摘出膵臓を0.6g/Lまたは3.0g/Lのグルコース含有緩衝液で30分インキュベートし、インスリン分泌に対するワルファリンの影響を検討した。いずれのグルコース濃度でも、ワルファリンによるインスリン分泌の有意な変動は認められなかった。
(研究2)ラットにワルファリン1mg/kgを14日間腹腔内投与した。ワルファリン開始前日と終了翌日、12時間の絶食後にラットにグルコース2g/kgを腹腔内投与し、グルコース投与の直前、15分後、30分後に血糖値と血漿インスリン濃度を測定した。ワルファリン投与後、投与前に比しグルコース負荷前~30分後の血糖値、血漿インスリン濃度はいずれもわずかに高値を示したが、統計学的に有意ではなかった。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Poucher RL et al.: JAMA, 197, 1069(1966) WF-0720
2)Bailey CJ et al.: Gen. Pharmacol., 7, 63(1976) WF-2173