肝疾患患者では、ワルファリンの感受性が増加していると思われる(引用1)。
その理由として、以下の点が考えられる。
1)肝疾患では肝で産生されるビタミンK依存性血液凝固因子の合成能が低下していること(引用1)(肝疾患、ウイルス性肝炎時(引用2))。
2)ワルファリンの代謝は肝で行われるため、肝疾患ではその代謝が低下すること。
3)閉塞性黄疸、胆道瘻では、胆汁中へのワルファリンの排泄障害や胆汁分泌不全による消化管からのビタミンK吸収障害を伴うため(引用2)。
ワルファリンの投与量は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間など)を実施しその値によって設定する。血小板数減少についても考慮する。肝疾患での具体的な投与量の基準はない。
しかし、上記の理由によりワルファリン投与前から血液凝固能がすでに低下している症例もある。
従って、通常のワルファリン投与量よりは少量ですむことが予想されるので、ワルファリンの導入は血液凝固能検査を頻回に行い慎重に投与すること。
ただし、重篤な肝障害患者(食道静脈瘤を伴うような非代償性肝硬変など)では投与禁忌である。
【引用】
1)Shetty HGM et al.: Clin.Pharmacokinetics、16、238(1989) WF-0667
2)青﨑 正彦: 呼吸と循環、39、779(1991) WF-0685
【更新年月】
2021年1月