ワルファリンは循環血液中の血液凝固因子を直接抑制して効果を示す薬剤ではなく、肝臓でビタミンK依存性凝固因子の第Ⅱ(プロトロンビン)、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の生合成を抑制することにより抗凝固作用、血栓形成の予防作用を示す。
ビタミンK依存性凝固因子は、合成の最終段階でKH2(還元型ビタミンK)およびビタミンK依存性カルボキシラーゼの存在下で、その凝固因子前駆体分子のアミノ末端側のグルタミン酸(Glu)残基がγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基に変換され、正常な機能を持った糖蛋白となる。プロトロンビン、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子は、このGla残基を有することによりCa2+と結合することが可能となり、血液中で凝固作用を発現することができる。ワルファリンはこのビタミンK代謝サイクルの中のビタミンK依存性エポキシドレダクターゼとビタミンKキノンレダクターゼ(またはDT-ジアフォラーゼ)の両酵素活性を非可逆的に強く阻害し、その結果として凝固活性を有しない(Glu残基のままの)凝固因子(PIVKA:Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist)を増加させることにより抗凝固作用、血栓形成の予防作用を現す1)(図4)。
ワルファリンは、ビタミンKの代謝サイクルを阻害し、ビタミンKの肝における再利用を止めることによって、効果を発揮する。
そのため効果発現が遅く、かつin vivoでしか効果を発揮しない。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)青﨑 正彦: 循環器科,10,218(1981) WF-0017