小児の機械弁置換術後の血栓症予防では、長期にわたる安定した療法が困難であること、外傷の機会が多く小児は怪我をしやすいこと、10代の服薬コンプライアンスが低いこと、出血による合併症が成人よりも多いことなど、成人に比べ多くの問題点がある。小児でのデータが十分でないこと、ワルファリン療法の課題などから、小児における検討も行われている53-59)。
OBS Bradleyら(1997)60)は、18才以下で機械弁置換術後の患者にて、プロトロンビン時間比1.5倍のワルファリン群48例(男27例、女21例、手術時0.5~18.6才)、アスピリン(5~6mg/kg/日)+ジピリダモール(6mg/kg/日)の抗血小板薬群16例(男10例、女6例、手術時3.9~16.4才)に分け、比較した。観察開始時/終了時の年齢は10ヵ月~25才/3~35才であり、追跡期間はワルファリン群272患者・年、抗血小板薬群116患者・年であった。両群の患者背景に有意差はなかった。ワルファリン群vs抗血小板薬群の生存率、血栓塞栓症発生率(2.6%/患者・年 vs 1.7%/患者・年)、出血事故発生率(1.5%/患者・年 vs 0%/患者・年)、血栓塞栓症または出血事故の発生率(4%/患者・年 vs 1.7%/患者・年)に有意差はなかった。
【参考文献】 [文献請求番号]
53)Evans D.I.K. et al.: J.Clin.Pathol., 45, 707(1992) WF-0784
54)金沢 宏ら: 胸部外科, 44, 887(1991) WF-0745
55)Ibrahim M. et al.: J.Thorac.Cardiovasc.Surg., 108, 52(1994) WF-0826
56)曲 人伸ら: 胸部外科, 38, 5(1985) WF-0537
57)青柳成明ら: 日本小児外科学会雑誌, 23, 539(1987) WF-0377
58)鈴木 直人ら: 日本胸部外科学会雑誌, 40, 2222(1992) WF-0814
59)Andrew M. et al.: Thromb.Haemost., 71, 265(1994) WF-0823
60)Bradley S.M. et al.: Ann.Thorac.Surg., 64, 30(1997) WF-3209
【更新年月】
2021年1月