(1)徴候・症状
ビタミンA過剰症はビタミンA摂取後12時間前後で発病する急性過剰症(急性症)とビタミンAを数ヵ月以上摂取して次第に症状の現われる慢性過剰症(慢性症)とがあります。
1)急性症状
ビタミンA摂取後数時間~24時間(約12時間)で現われ、摂取中止後1~2日後に症状は消失し何ら後遺症を残しません。主症状は小児では急性脳水腫に起因し、嘔吐、不眠、嗜眠、興奮のほか大泉門が膨隆して茸状に膨れあがります。乳幼児ではそのほか吐乳、下痢、不機嫌、不安症状、痙攣、水頭症の報告もあります。髄膜症はみられません。成人では全身倦怠、悪心、嘔吐、腹痛、めまい、運動鈍化が起こり、嗜眠状態となり、その後全身の皮膚が離し回復します。臨床検査成績としては脳脊髄液圧がやや亢進するほか病的所見はみられず、大泉門膨隆程度と脳圧間に必ずしも平行関係はないといわれ、脳波にも異常なく眼底変化はみられません。
急性症は成人にはまれで大多数は乳幼児です。
2)慢性症状
主症状は小児では食欲不振、体重増加停止、便秘、不機嫌、不眠、興奮、ときに肝肥大などの一般症状、中枢神経症状としては頭痛、嘔吐、神経過敏、痙攣、複視、斜視、脳圧亢進、脳水腫など、骨症状は四肢の有痛性長管骨腫脹が特徴的で、骨幹が紡錘状に腫脹し、X線で骨膜増殖、尺骨、蹠骨の限局性皮質性骨肥厚、限局性骨粗鬆症を起こし歩行障害を訴えます。成人では最も著明な症状は全身倦怠です。皮膚症状はまず毛髪乾燥、ついで脱毛、脂漏、痒症、尋常性瘡、落屑、口唇乾燥亀裂、口角亀裂、舌縁疼痛、水疱形成など、腹部では肝・脾肥大、リンパ腺軽度肥大、泌尿器では尿意頻回などが起こり、神経系の障害は小児ほど著明ではありません。血液では軽い貧血、白血球増多又は減少などが起こりますが血液化学や肝機能検査では著しい障害は認められません。血漿中ビタミンA量が上昇しエステル型よりアルコール型ビタミンAの増量が著しく、血清リポイド、アルカリ性フォスファターゼ値が増加します。
(2)処置
ビタミンA摂取を中止することで容易に治癒します。
このほかの処置としては下剤服用、必要なら補液を行ってください(急性症)。出血性素因にはビタミンK使用、罹患肢の固定を行ってください。
(参考)
・チョコラA筋注5万単位 添付文書 2016年8月改訂(第9版)【使用上の注意】 7.過量投与