ワルファリンはアルブミン結合性が高いことから、低アルブミン血症患者におけるワルファリンの体内動態やアルブミン結合部位に対して競合する薬物の効果、ならびに蛋白結合に影響する疾病状態について検討することは重要である(Ⅳ-2「蛋白結合」の項参照)。
特発性低アルブミン血症患者におけるワルファリン体内動態の研究から、血漿中のワルファリン遊離形分率が増加し、血中総濃度で評価した経口クリアランスが上昇、血中半減期が短縮することが示唆された。この場合、ワルファリンの分布容積は正常であることが見いだされた。患者におけるアルブミン1分子当たりのワルファリン結合部位の数や結合部位の親和力は対照被験者に比較して同一のレベルで、患者におけるワルファリンの蛋白結合率の低下は低アルブミン血症に起因し、アルブミンの質的な異常のためではないことが指摘された8)。
低アルブミン血症を呈するネフローゼ症候群患者では、対照被験者と比較して、ワルファリン遊離形分率は2倍、血中総濃度で評価した経口クリアランスは3倍の見かけ上の上昇が認められた。分布容積は差がなく、抗凝固作用についても大きな差はなかった9)(Ⅲ-17「腎疾患患者への使用」の項参照)。
慢性肝疾患患者におけるワルファリンの分布は知られていない。
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