ワルファリン投与後の消失動態は、1コンパートメント・オープンモデル(one compartment open model)に従う。
Toonら1)は、ワルファリンの見かけの分布容積は、0.109 L/kgから0.199 L/kgの範囲にあると報告している。
O'Reillyら3)は健康成人3名(図1中のN-1,2,6)にワルファリン(50mg、100mg、200mg)を投与したところ、その分布容積は体重の平均12.5%であると報告している。
ワルファリンの一対の光学異性体(S-ワルファリン及びR-ワルファリン)間には消失動態が異なることが知られているが、分布容積ではあまり相違がないようである。
Banfieldら2)は、ワルファリン(ラセミ体)1.5mg/kgを単回経口投与した場合の分布容積はS-ワルファリン、R-ワルファリンともに0.14L/kgであり、光学異性体で差はないと報告している。
参考として、最近の報告を以下に示す。
Jiangらの報告11)では、ワルファリン10mgの単回経口投与において、S-ワルファリン及びR-ワルファリンの分布容積はともに0.12 L/kgであった。
Liljaらの報告12)では、ワルファリン25mgの単回経口投与において、S-ワルファリン及びR-ワルファリンの分布容積はそれぞれ0.15 L/kg 及び0.20 L/kgであった。
Kingら13)は、健康成人男子にワルファリン2mg、5mg及び10mgを経口投与した際の薬物動態を検討している。分布容積は2mg、5mg及び10mgそれぞれで21 L、12 L、そして10Lとなり、血中濃度依存的に薬物動態パラメータが異なることを報告している。
ワルファリンの薬物動態に関するほとんどの報告は、単回投与では30mg前後あるいはそれ以上の投与量であり、2mg未満の投与量における体内動態には不明な点がある15)。日本人の健康成人男子においてワルファリン5mg、1mg及び0.5mgを単回経口投与した報告16)では、最終消失相の分布容積がそれぞれ平均14 L、23 L及び26 Lであり、投与量との負の相関をもって増加することが観察された。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Toon S et al.: Br. J. Clin. Pharmacol., 21, 245(1986) WF-0270
2)Banfield C et al.: Br. J. Clin. Pharmacol., 16, 669(1983) WF-0399
3)O’Reilly RA et al.: Thromb. Diathsis Haemorrh., 1, 1(1964) WF-0036
4)Anderson GF : Thromb. Diathsis Haemorrh., 18, 754(1967) WF-0715
5)Coldwell BB et al. : Toxicol. Appl. Pharmacol., 28, 374(1974) WF-0063
6)Shetty HGM et al. : Clin. Pharmacokinetics, 16, 238(1989) WF-0667
7)Orme ML’E et al. : Br. Med. J., 1, 1564(1977) WF-0610
8)Piroli RJ et al. : Clin. Pharmacol. Ther., 30, 810(1981) WF-0183
9)Ganeval D et al. : Clin. Nephrol., 25, 75(1986) WF-0668
10)壬生 真人ら : 小児科臨床, 51, 2156(1998) WF-1122
11)Jiang X et al.: Br. J. Clin. Pharmacol., 59, 425(2005) WF-2014
12)Lilja JJ et al. : Br. J. Clin. Pharmacol., 59, 433(2005) WF-2015
13)King S-YP et al. : Pharm. Res., 12, 1874(1995) WF-0990
14)Thijssen HHW et al. : J. Pharmacol. Exp. Ther., 243, 1082(1987) WF-0496
15)Lappin G et al.: Clin. Pharmacol. Ther., 80, 203(2006) WF-2362
16)土肥口 泰生ら: 薬理と治療, 36, 401(2008) WF-2800
【更新年月】
2021年1月