腎疾患での臨床研究では、出血リスクや脳卒中リスクの増大を示す報告や抗血小板薬より生存率を改善するとの報告など、様々な結果が得られている。いずれも観察研究のため、検討条件の制限や限界があり、今後の検討が望まれる。
OBS Chanら(2009)90)は、レトロスペクティブなコホート研究にて、心房細動を有する末期腎不全患者へのワルファリン投与は、脳卒中発症リスクを高める可能性があると報告した。
OBS Olesenら(2012)91)は、心房細動、慢性腎不全では、いずれも脳梗塞、血栓塞栓症のリスクが上昇すると報告した。
OBS Changら(2013)92)は、慢性腎疾患を有し、CHADS2スコア2、60才以上の永続性非弁膜症性心房細動患者をレトロスペクティブに調査し、ワルファリンを抗血小板薬と比較した。12年の長期観察期間の生存率はワルファリン群が抗血小板薬群より有意に高く、ワルファリンは慢性腎疾患を有する心房細動患者の腎機能悪化を緩徐にし、生存率を改善する可能性があると報告した。
OBS Carreroら(2014)93)は、慢性腎不全患者では血栓塞栓症のリスク、出血のリスクがともに増大すると報告した。
OBS Shahら(2014)94)は、心房細動患者を有する透析患者に対するワルファリン投与は脳梗塞リスクを減らさず、出血リスクが増大するとの結果を報告した。
【参考文献】 [文献請求番号]
90)Chan,K.E. et al.: J.Am.Soc.Nephrol., 20, 2223(2009) WF-3188
91)Olesen,J.B. et al.: N.Engl.J.Med., 367, 625(2012) WF-4090
92)Chang,C.-C. et al.: Clin.Interv.Aging, 8, 523(2013) WF-3971
93)Carrero,J.J. et al.: JAMA, 311, 919(2014) WF-4066
94)Shah,M. et al.: Circulation, 129, 1196(2014) WF-4060
【更新年月】
2021年1月