通常の量であれば毎日摂取してもほとんど問題はない。
アルコール性肝障害(急性および慢性)に陥るほど一時に大量摂取したり、毎日大量摂取をしてはいけない。
ワルファリンを服用する時は、アルコール摂取から6~7時間以上の間隔をあけること1)。(血中にアルコールが存在する場合、P-450抑制が起こり、ワルファリンの作用が増強されるため)
慢性アルコール中毒患者では、ワルファリンの作用が減弱する可能性がある。アルコールによる肝障害例では、ワルファリンに対する感受性は高くなる可能性もある。
アルコールは血液凝固第Ⅱ、Ⅶ、Ⅹ因子活性を抑制するので、凝固能の測定による正味の影響を調べる必要がある。
ワルファリン服用者でお酒を好む人は肝機能等の変化にも注意すること。
なお、主な参考資料には、ワルファリンとアルコールの相互作用は以下のように記載されている。
1.通常量(晩酌程度)摂取時の血液凝固能検査への影響
ワルファリン投与により低プロトロンビン血症を誘発させた8名の健康成人に対し、カリフォルニア白ワイン(12%アルコール(体積比)を1日10オンス(エタノールとして28.2g)または20オンス(エタノールとして56.4g)、21日間にわたり食事時に摂取させたが、ワルファリンの血中濃度およびワルファリン投与量には変化は認められなかった3)。
健康成人に20%アルコール(体積比)のワイン296mL(エタノールとして47.0g)の就寝前(空腹時)摂取させた際4)も、アルコール摂取によるワルファリンへの影響は認められていない。
また、ワルファリン長期投与中の10例にテーブルワイン375mL(エタノールとして41g)を単回摂取させた際も、トロンボテスト値には影響は認められていない2)。
アルコール容量から考えると、例えば約5%アルコールのビール大瓶1本分位は影響がないものと考えられる。
2.慢性飲酒等(大酒家)または慢性アルコール中毒患者におけるワルファリンの影響
慢性的なアルコール摂取により肝細胞の滑面小胞体の増生が起こる。これはP-450の増加を伴うので、結果として薬物の代謝を亢進させる。このように大酒家やアルコール中毒患者にワルファリンを投与すると通常より作用が減弱される。
酒をほとんど飲まない健康成人あるいは患者をコントロールとして15例のアルコール中毒患者(3ヵ月以上アルコール250g/日 以上を多飲)にワルファリン40mgを経口投与し、半減期を比較した臨床報告によると、アルコール中毒患者の半減期は平均26.5時間であったのに対し、コントロール群は平均41.1時間であった。しかし、プロトロンビン時間の延長の程度には両者に差異はなかった5)。
一方、ワルファリン服用者(肝硬変患者)にアルコールを投与したところ、プロトロンビン時間が延長したとの報告がある6)。
また、アルコール(ウイスキー50mL/日程度)を毎日飲用していたワルファリン服用患者がアルコール飲用をやめたところ抗凝固効果が減弱し、アルコールを再開したところ抗凝固効果が増強され、鼻出血を来たしたとの報告がある7)。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)野村 文夫ら: Medicina, 23, 394(1986) WF-0702
2)Karlson B et al.:Acta Med.Scand., 220, 347(1986) WF-0488
3)O’Reilly RA: Am. J. Med. Sci., 277, 189(1979) WF-1336
4)O’Reilly RA: Arch. Intern. Med., 141, 458(1981) WF-1334
5)Kater RMH et al.: Am. J. Med. Sci., 258, 35(1969) WF-1335
6)Udall JA: Clin. Med., 77, 20(1970) WF-1331
7)Breckenridge A et al.: Ann. N.Y. Acad. Sci., 179, 421(1971) WF-2097