• No : 1489
  • 公開日時 : 2017/10/16 00:00
  • 更新日時 : 2019/04/26 18:17
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【ワーファリン】 Ⅷ‐23.3.抗腫瘍性植物成分製剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)

【ワーファリン】  Ⅷ‐23.3.抗腫瘍性植物成分製剤との相互作用(適正使用情報別冊(Ⅷ 相互作用各論) 第3版 2019年3月更新第9版)
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回答

[相互作用を示す薬剤名(代表的商品名)]

〔薬効分類 424 抗腫瘍性植物成分製剤〕


[相互作用の内容]

本剤の作用を増強したとの報告がある。


[併用時の注意]

抗腫瘍薬は多剤併用による治療が行われるため、本剤の作用に対する影響を把握しにくい。他の抗腫瘍薬の影響なども考慮し、併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。

また、抗腫瘍用剤による副作用発生(骨髄障害など)にも注意し、出血症状をおこさないよう注意すること。

 

[相互作用の機序]

不明。

 

 

[相互作用の事例]

<症例報告事例>1)【ビンデシン、エトポシドによるワルファリンの作用増強】

78才男性。肺の腺癌で骨、胸膜、胸壁への転移が認められた。血栓性静脈炎を来たし、抗凝固療法を開始した。また、ビンデシン(5mg)、エトポシド(500mg)、シスプラチン(200mg)による癌化学療法を導入した。ワルファリンは第6、7病日に15mg投与、第8、9病日は休薬、第10、11病日は10mg投与、第12~15病日は5mg投与とし、第10~15病日のプロトロンビン時間は18.0~21.3秒であった。第7病日、ビンデシン+エトポシド+シスプラチンの投与を行っていた。第15病日、ビンデシン+エトポシドを投与した。第16病日、プロトロンビン時間が29秒となり、第16~18病日はワルファリンを休薬した。第19病日、プロトロンビン時間は21.3秒で、ワルファリン2.5mgを第19~22病日に投与した。この間のプロトロンビン時間は21.0~21.3秒であった。第22病日、ビンデシン+エトポシドを投与した。第23病日、プロトロンビン時間が30秒となり、ワルファリンを休薬した。第30病日、プロトロンビン時間は19.5秒で、ワルファリンを2.5mgで再開した。第37病日、ビンデシン+エトポシド+シスプラチンを投与すると、第38病日にはプロトロンビン時間が31.3秒となり、ワルファリンを休薬した。第42病日、癌の進行により化学療法を中止した。第44病日以降はワルファリン2.5mgで抗凝固療法を施行した。(海外)

 

<症例報告事例>2)【エトポシドによるワルファリンの作用増強】

74才男性。心房細動のためワルファリン 42.5 mg/週を服用中であった。右非精上皮腫を認めたので精巣除摘術をうけた。その6ヵ月後、縦隔に転移を認めたため、カルボプラチン 310 mg、エトポシド 765mgの投与をうけた。この時のINRは2.11であった。その16日後、患者は発熱、下痢、吐気、嘔吐を訴えて入院した。INRは12.6に上昇していた。ワルファリンを中断し、ビタミンK1 1 mgを静注した。翌日、INRは1.61に低下した。2日後、ワルファリン2mg/日の服用を再開した。(海外)

 

<症例報告事例>3)【パクリタキセルによるワルファリンの作用増強】

75才女性。ワルファリンを投与し、INRは2.5~3.0であった。ワルファリン開始2ヵ月後、ステージ4の卵巣癌に対し、パクリタキセルとカルボプラチンによる化学療法を開始した。パクリタキセルは175mg/cm2を3時間以上かけて投与し、続いてカルボプラチンをAUCは5mg・min/mLとなる様に投与した。INRは、この化学療法第1クール前は3.0だったが、化学療法開始2日目には5.2となった。ワルファリンを休薬し、第8日目に再開した。その後も4週毎の化学療法の度にINRが上昇した。第5、第6クールの3日目と4日目には、ワルファリンを減量した。パクリタキセルがワルファリンの蛋白結合を置換したと推測された。(海外)

 

<症例報告事例>4)【エトポシド、シスプラチン等によるワルファリンの作用増強】

49才男性。悪性リンパ腫にR-CHOP療法無効でR-ESHAP療法(エトポシド、シスプラチン、高用量シタラビン、メチルプレドニゾロン+リツキシマブ)に変更、同治療を3回施行した。初回R-ESHAP療法後の造影CTで深部静脈血栓症、肺塞栓症が見つかり、目標INR 2~2.5でワルファリン3mg/日を開始、8mg/日まで漸増したがINR 0.88で開始11日後、3mg/日に減量しブコローム併用を開始した。次いでワルファリン漸増にて開始20日後INRは目標域となった。第22日INR上昇のためワルファリン減量、2回目のR-ESHAP療法を行った。INR 5.28となり、ワルファリン4日間休薬で2.73に低下した。しかし第34日ワルファリン再開後、INR 6となり、再度休薬した。その後1mg/日で再開、同量維持でINRは治療域となる。3度目のR-ESHAP療法施行後、INR 4.71となった。本症例の遺伝子型はCYP2C9 *1/*1、VKORC1 1173T/Tであった。

 

 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Ward K et al.: Cancer Treat. Rep.,    68,    817(1984)    WF-0434

2)Le AT et al.: Ann. Pharmacother.,    31,    1006(1997)    WF-1030

3)Thompson ME et al.: Ann. Oncol.,    14,    500(2003)    WF-1545

4)Suzuki,Takaaki et al.: Clin.Ther.,     30,     1155 (2008)    WF-2891

【図表あり】