［相互作用を示す薬剤名（代表的商品名）］

〔薬効分類　314　ビタミンC剤〕

［相互作用の内容］

本剤の作用を減弱したとの報告がある。（大量投与時）

［併用時の注意］

通常量（2g以下）ではおきない相互作用であると思われるが、ビタミンCによる下痢などの副作用が生じた場合には注意する｡

臨床上問題にならない程度と思われるが、併用開始時および併用中止時は、血液凝固能検査値の変動に注意すること。

［相互作用の機序］

不明。

［相互作用の事例］

＜症例報告事例＞1)【ワルファリンの作用減弱】

52才女性。呼吸時に増悪する胸痛と右脛部に出現した皮下出血斑を伴う疼痛で受診、静脈炎に続発する肺塞栓症と診断された。当初ヘパリンにて加療し、9日後にワルファリン投与を開始、ヘパリンは漸減として開始11日後に中止した。入院17日目、ワルファリン7.5mg/日投与でプロトロンビン時間を23秒として退院となった。他に投与している薬剤はなかった。プロトロンビン時間は退院4週後までは著しい変動は示さなかったが、その後の3週ではワルファリンを10mg/日、15mg/日、20mg/日へと増量したにも関わらず19秒、17秒、14秒と短縮した。患者は薬剤の服用や食生活の変化を否定していた。しかしプロトロンビン時間が低値のままなので、患者に再確認を行った。すると、患者が風邪を引き、アスコルビン酸が良いとの話を聞いたので、ワルファリンと一緒にアスコルビン酸を服用していたことが判明した。患者はアスコルビン酸を薬物と認識していなかった。アスコルビン酸を中止したところ、プロトロンビン時間は2日後には28秒となった。（海外）

＜臨床研究報告＞2)【ワルファリンの作用減弱】

安定した長期ワルファリン療法を施行中の14例に、3週の観察期の後、アスコルビン酸を3 g/日で1週、次いで5g/日で1週投与した。また、安定した長期ワルファリン療法を施行中の5例に、2週の観察期の後アスコルビン酸10g/日を1週間投与した。ワルファリン投与量は試験期間を通じて不変とした。アスコルビン酸投与により血漿ワルファリン濃度は有意に低下した。アスコルビン酸中止直後に比し、中止1週後の血漿ワルファリン濃度は高値であったが、アスコルビン酸開始前の値には回復していなかった。一方、プロトロンビン時間比はアスコルビン酸投与によっても有意な変動は示さなかった。アスコルビン酸10g/日投与中、5例全例で下痢が認められた。（海外）

＜症例報告事例＞3)【ワルファリンの作用減弱】

（症例報告）70才女性。急性血栓性静脈炎の治療を受け、ワルファリン5mg/日の処方で退院した。退院6週後、左鼠径部に腫脹、圧痛を伴う疼痛、下腹部に腫脹、圧痛が現れ、翌日入院した。左鼠径部、下腹部域の血栓性静脈炎と診断された。ワルファリン投与下にも関わらず、プロトロンビン時間は12秒であった。ワルファリンを漸増し25mg/日として、プロトロンビン時間は延長した。患者はアスコルビン酸が健康に良いとの話を聞き、再入院の前数週にわたり、アスコルビン酸500mg 4錠を平均1日8回服用していたことが判明した。その後はワルファリン10mg/日の投与のみで改善し、退院となった。（海外）

＜臨床研究報告＞4)【相互作用なし】

ワルファリンを長期投与中の5例にアスコルビン酸1g/日を14日間投与した。ワルファリンの投与量は不変とした。アスコルビン酸によるワルファリンの効果の変動は認められなかった。（海外）

＜基礎研究報告＞3,5)【相互作用なし】

ウサギ3)およびイヌ5)において、ワルファリンの抗凝固作用は、アスコルビン酸の影響を受けなかった。

【参考文献】    ［文献請求番号］
1）Rosenthal G: JAMA,    215,    1671（1971)    WF-0852
2）Feetam CL et al.: Toxicol. Appl. Pharmacol.,    31,    544（1975)    WF-0853
3）Smith EC et al.: JAMA,     221,    1166（1972)    WF-0735
4）Hume R et al.: JAMA,    219,    1479（1972)    WF-1748
5）Weintraub M et al.: Toxicol. Appl. Pharmacol.,    28,    53（1974)    WF-1738