• No : 1409
  • 公開日時 : 2017/10/12 00:00
  • 更新日時 : 2021/03/08 09:45
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【ワーファリン】 IV‐7.効果発現時間と持続時間(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】
 
IV‐7.効果発現時間と持続時間(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
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ワルファリンの作用機序は、ビタミンK代謝サイクルのビタミンKエポキシドレダクターゼとビタミンKキノンレダクターゼ(別名DT‐ジアフォラ-ゼ)の両酵素活性を不可逆性に強く阻害することにある(Ⅱ-1-3.「ワルファリンの作用機序」の項参照)。従って、ワルファリンはin vitroでは効果を示さず、in vivoで初めて効果を発揮する薬物である。この点がヘパリンと大きく異なる。ワルファリンの効果は、上記酵素の阻害によりカルシウム結合ドメイン形成にビタミンK依存性のγグルタミル化反応が必要である血液凝固因子の生成量が低下することにより発揮されるため、ワルファリンの抗凝固効果は血中濃度の時間推移よりも遅れて発現する。ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子の生合成を抑制するが分解速度には影響を及ぼさないので、すでに血中に存在している凝固因子が代謝されるまでには各凝固因子の分解速度に依存して(表1参照)時間がかかるのである。ワルファリンの経口投与後の血中濃度は1~12時間で最大となり、健康成人では半減期は36.3±3.5時間で消失する。一方、臨床的に意義のある抗凝固効果は投与後12~24時間目に初めて発現し、十分な効果は36~48時間後に得られる。また、その作用はその後48~72時間持続する1,2)。


なお、CYP2C9遺伝子多型がS-ワルファリン代謝に影響する報告3)や、消失半減期、全身クリアランスなどの薬物動態パラメータの血中濃度依存性を示唆する報告4,5)があり、効果発現時間や持続時間にも影響する可能性を考慮する必要がある。

 


【参考文献】    [文献請求番号]
1)Vesell ES et al.: Science,184,466(1974) WF-0819
2)前川 正ら: Biomed. Sci.,1,160(1980)  WF-0370
3)Takahashi H et al.: Clin. Pharmacol. Ther., 63, 519(1998)  WF-1118
4)King S-YP et al.: Pharm. Res.,12,1874(1995)  WF-0990
5)土肥口 泰生ら: 薬理と治療,36, 401(2008)  WF-2800

【図表あり】
 
【更新年月】
2021年1月