ワルファリンはin vitroで血液に対する直接の抗凝固作用はないので、既に形成された血栓は溶解しない。血小板に対して直接的な作用は持たないので、血小板の関与が強い動脈血栓の形成初期段階では、血栓形成に対して抑制効果が少ない。
ワルファリンの抗凝固作用は、血液のうっ滞や凝固系の関与が強い静脈血栓に対して効果的である。しかし、主として塞栓症の場合には、凝血塊の発育・成長が生じて塞栓症が発症することを防止する目的で、静脈血栓症だけでなく末梢動脈塞栓症や脳動脈塞栓症に対しても用いられることがある1)。
現在、本邦の効能・効果に該当するワルファリン治療・予防の対象を表1に示す。
また、経口抗凝固薬の適応と投与が不適な患者について、国際血液学会標準化委員会の経口抗凝固薬療法のガイドライン2)や総説3)などを参考とした表2を示す。
海外のガイドラインとしては抗血栓療法を体系的にまとめたACCP Conference on Antithrombotic and Thrombolytic Therapy(2004)4)(2008))5)(2012)6) を参考とした。HirshらのAHA/ACC Foundation Guide to Warfarin Therapy(2003)7)はwarfarinの基本的なGuideとして参考とされてきた。一方、国内では「循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン」(2009)8)が重要であり、各疾患や分野のガイドラインが整備され、日本人のエビデンスも増加することが期待される。
ワルファリン療法が必須となるのは人工弁置換術後および発症6ヵ月以内の肺塞栓症である。
併用禁忌の薬剤として、骨粗鬆症治療用ビタミンK2(メナテトレノン)製剤、イグラチモド、ミコナゾール(ゲル剤・注射剤)がある(「Ⅵ-8.投与禁忌」の項 参照)。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)青﨑 正彦: 循環器科, 10, 218(1981) WF-0017
2)風間 睦美ら: 血液と脈管, 16, 431(1985) WF-0031
3)青﨑 正彦(前川 正ら監修):
ワーファリン, Ⅳ.投与の実際(メディカルジャーナル社、東京) 55(1998) WF-2253
4)Ansell J et al.: Chest, 126, 204S(2004) WF-2234
5)Ansell,J. et al.: Chest, 133, 160S(2008) WF-3000
6)Ageno,W. et al.: Chest, 141, e44S(2012) WF-3659
7)Hirsh J et al.: Circulation, 107, 1692(2003) WF-1665
8)堀 正二ら: 【ダイジェスト版】循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版), 1(2010) WF-4122