• No : 10591
  • 公開日時 : 2019/04/04 00:00
  • 更新日時 : 2021/01/29 14:04
  • 印刷

【ワーファリン】 V‐6.3.周術期管理の方針決定の事例(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

【ワーファリン】 
 
V‐6.3.周術期管理の方針決定の事例(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)
カテゴリー : 

回答

1)周術期管理のフロー図の事例

Douketisらの総説(2011)4)での周術期管理のフロー図を以下に示した。血栓塞栓症の「中等度リスク」の対応では、ワルファリン中止のヘパリンブリッジングを考慮している。DouketisやSpyropoulosらの提案(2016)2)では、プリッジングなしの見解を示しており、今後の議論のポイントと考えられる。
 


 

2)周術期管理の重要な確認の事例

Douketisらの総説(2011)4)では、ワルファリン療法の患者での周術期管理に関して、エビデンスを提供した。GRADEアプローチに基づいて、以下の重要な5つのクリニカルクエスチョンに従い、患者管理法を決定するための枠組みを用意した。

① 血栓塞栓症と出血のリスクに基づく患者の層別化をどのように行うか。

② ワルファリンの中止を要しないのはどのような場合か。

③ ワルファリンの中止を要する場合に、中止および再開の時期をどうするか。

④ ワルファリンを中止した場合にヘパリンブリッジングは必要か。

⑤ ヘパリンブリッジングを要する場合にその用量はどうするか。

 

・手術・手技における出血のリスクが低い場合は、抗凝固療法を継続する。

・一方、手術・手技における出血リスクが高い場合は、ワルファリン療法を中断してヘパリン等に置き換え、抗凝固療法を継続する。

しかし、Bridge Study(2015)5)では、周術期においてはブリッジングを行っても血栓塞栓症のリスクに差が認められなかったことなどから、ブリッジングを伴わないワルファリン療法の中断も選択肢として考慮されるようになってきた。

・血栓塞栓症リスクが低ければワルファリン療法を中断する。ワルファリン療法では、元々血栓塞栓症リスクの高い患者に適用するのが一般的であったが、近年は心房細動患者の一次予防などで血栓塞栓症リスクが比較的低い患者への抗凝固療法が普及してきた背景も影響していると考える。

・血栓塞栓症の絶対的なリスクの評価は、抗凝固療法を必要とする基礎疾患、合併する心血管危険因子の存在、手術のタイプを考慮すべきである。

 

3)ブリッジングの適応範囲の見直しの事例

Bridge Study(2015)5)以降、DouketisやSpyropoulosらの提案〔国際血栓止血学会(ISTH)〕2)では、血栓塞栓症の「中等度リスク」の対応で、ブリッジングの適応範囲の見直しが提案されており、以下に示した。なお、未分画ヘパリンに代わり、海外の臨床試験で汎用される低分子量ヘパリン(LMWH)で説明されている。今後国内でも層別リスク評価と共に検討が期待される。
 


 
 

【参考文献】    [文献請求番号]

1)Douketis,J.D. et al.: Chest,     141,    e326S(2012)    WF-3661

2)Spyropoulos,A.C. et al.: J.Thromb.Haemost.,     14,    875(2016)    WF-4453    

3)Keeling,D. et al.: Br.J.Haematol.,     175,    602(2016)    WF-4593

4)Douketis,J.D. et al.: Blood,     117,    5044(2011)    WF-4289

5)Douketis,J.D. et al.: N.Engl.J.Med.,     373,    823(2015)    WF-4284

【図表あり】
 
【更新年月】
20221年1月