1)TTR(time in therapeutic range)の種類
INRが治療域内に維持されることが求められ、TTRがその把握に適した指標と考えられる。米国胸部疾患学会(American College of Chest Physicians(ACCP)) 2008 ガイドライン1)、ACCP 2012 ガイドライン2)にてTTR算出方法として下記の3つの方法が記載されている。いずれのTTR算出方法も利点と欠点を有しており、他の方法と比較し、その結果を副作用と関連付けられていない。そのため、一つの方法を推薦することはできず、読者がこれらの相違に十分注意し認識すべきとの見解を示した。
2)TTR (time in therapeutic range)算出方法の利点と欠点
TTR算出方法の利点と欠点3)
OBS Schmittら(2003)3)は、抗凝固療法の用量管理の質の評価法の1つであるTTRについて、3種の一般的な測定法を比較するため、同一コホート内でレトロスペクティブ解析を行った。2ヵ月間、3ヵ月間、6ヵ月間の測定において、INRが治療域にある時間割合とcross-section of the files法では同様の結果を得たが、線形補間(Rosendaal法)によって得られた治療域にある時間割合(time-in-range)は有意に短かった。いずれの方法を用いるかは、施設の規模、望まれる情報、施設が有する資源によって決定すべきである。各々の方法はそれぞれ欠点を有しており、いずれの方法が抗凝固管理の質をよく反映するかについては疑問が残ると報告した。
OBS GARFIELD-AFにてFitzmauriceら(2016)4)は、コントロール状況を把握する方法として、近年の臨床研究で普及しているRosendaalらの方法(TTR)と測定値が治療域内に入っている頻度を求める方法(frequency in range: FIR)を比較検討した。TTRとFIRの変動の差は17.4%と算出され、同等性がなくお互いに代替できないことが示された。
【参考文献】 [文献請求番号]
1)Ansell,J. et al.: Chest, 133, 160S(2008) WF-3000
2)Ageno,W. et al.: Chest, 141, e44S(2012) WF-3659
3)Schmitt,L. et al.: J.Thromb.Thrombolysis, 15, 213(2003) WF-4221
4) Fitzmaurice,D.A. et al.: Br.J.Haematol., 174, 610 (2016) WF-4472