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  • No : 998
  • 公開日時 : 2018/09/21 00:00
  • 更新日時 : 2018/10/04 18:26
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【タイサブリ】 PMLについて教えてください。

【タイサブリ】 

PMLについて教えてください。

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回答

①疫学

PMLは、亜急性に進行するJCVによる中枢神経系の感染症です。1930年代から報告されており、最初に「PML」という病名が使用されたのは1958年でした。当初は中高年患者におけるリンパ増殖性疾患のまれな合併症として報告されました(Åström, 1958年)。また、自己免疫疾患及び臓器移植に対する免疫抑制治療の結果としても引き起こされることが報告されています(Amend, 2010年)。

HIV感染症の流行により、PMLの発症率が上昇しました。AIDS患者におけるPMLの有病率は5%と報告されています。近年、HIV感染者におけるPML発症率に変化はありませんが、強力な抗レトロウイルス療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)の導入により、死亡率は低下しています(Koralnik, 2004年)。

6,000例以上のMS患者を対象とした抗JCV抗体検査(STRATIFY JCV)結果の解析によると、陽性率は55%でした。MS患者を対象としたすべてのコホート研究において、抗JCV抗体の陽性率は年齢とともに上昇し、女性よりも男性の陽性率が高いことが示されています。これは、同様の手法を用いた健康成人を対象とした研究報告とほぼ一致しました(Egli, 2009年;Kean, 2009年;Knowles, 2003年)。

また概して、抗JCV抗体の陽性率は、免疫抑制剤の使用歴、タイサブリの投与歴又はタイサブリ投与期間の影響を受けないことが示唆されました(Bozic, 2011年)。

 


 
 
 

②病因

PMLはヒトポリオーマウイルスであるJCVの再活性化により発症し(Berger, 1998年)、脳の皮質下白質が侵される疾患です(Safak, 2003年)。何がJCV増殖の引き金になるかは不明ですが、複数の危険因子が重なって発症すると考えられており、その危険因子のひとつが細胞性免疫の機能低下です。これは、HIV感染、全身性の免疫不全、抗悪性腫瘍薬の投与及び一部の悪性腫瘍に起因するとされています。

 

③病理

PMLでは、脳におけるJCVの増殖によりオリゴデンドロサイトの変性を伴う破壊(溶解感染)が生じ、髄鞘が広範囲にわたり破壊されます。皮質下白質に発現した病巣が拡大し、MRIで特徴的な画像が認められます。

 

④症状

主な症状は多様な脱髄パターンを反映しており、多くの場合、視覚、運動機能、認知機能の低下が認められ、皮質盲や、片麻痺といった著しい脱力及び行動障害を伴うことがあります。また、感覚障害、回転性めまい、けいれん発作等が認められることもあります(Berger, 1998年)。これらの症状とその進行は、PMLの発症とMS再発の典型的な症状との鑑別に役立ちますが、一方で両者には同様の症状もみられるため注意が必要です。
 
 

⑤診断

欧州神経学会(European Federation of Neurological Societies:EFNS)は「PMLを含むHIV感染症の神経学的合併症の診断と治療に関するガイドライン」を発表しています(Portegies, 2004年)。診断基準は次のとおりです。

● MRIで非対称性の白質異常が観察され、緩徐に進行する局所の神経障害が認められる場合はPMLが疑われる。

概して、皮質に向かって指のように突出した病巣が皮質下に認められる。mass effect(周囲組織の変形)*は認めない。T1強調画像では低信号、T2強調画像、FLAIR(fluid-attenutated inversion recovery;水抑制画像)、DWI(diffusion weighted imaging;拡散強調画像)では高信号を示し、一般的にコントラスト増強は示さない。

● 髄液のPCR検査(JCV遺伝子検査)によるJCV DNAの検出感度は72~100%であり、特異度は92~100%であることから、この検査はPMLの診断に非常に有用である(Cinque, 1997年)。JCV遺伝子検査が陰性の場合には再検査が推奨される〔タイサブリ治療の結果PMLと確定診断された症例の多くは、JCV DNAのコピー数が少なかったことから、JCV DNA検出には、超高感度PCR検査(例:定量限界≦50copies/mL)を行うことが重要である(社内資料)〕。脳生検は依然として診断の最終的な手段であるが、JCV遺伝子検査が陽性であれば、診断根拠として妥当とされる。

MRIはタイサブリ治療患者における症候性ならびに無症候性PMLを検出するための有用な検査です(Wattjes and Barkhof, 2014)。

● MRI検査は、PMLを早期発見する上で優れており、過去のMRIとの比較が、MS病巣等の神経疾患との鑑別に有用である(Kappos, 2011年; Dong, 2012年)。

なお、タイサブリ治療中の患者において、神経学的症状の新規発現又は悪化が認められた場合の臨床的評価については、p28のアルゴリズム(図6)を参照してください(Kappos, 2011年)。

*: mass effect(周囲組織の変形):MSでは、大型の急性期病巣でmass effectが認められる場合がある。一方、PMLでは大型病巣でもmasseffectは認められない。

 

 

 


 
 
 

⑥JCV GCN(JCV小脳顆粒細胞障害)

オリゴデンドロサイトのほかにも、JCVは小脳顆粒細胞に感染し、JCV小脳顆粒細胞障害(GCN)を引き起こします。

JCV GCNは、メジャーカプシド蛋白をコードするJCV VP1遺伝子C末端における突然変異と関連しています。

JCV GCNは単独で発現、あるいはPMLと併発する可能性があります。ナタリズマブ治療を受けた患者においてJCV GCNはきわめて稀に報告されています(Agnihotri, 2014; Schippling, 2013)。JCV GCNは、数ヵ月間にわたる脳の連続MRI撮像において重篤な進行性小脳萎縮を呈し、脳脊髄液(CSF)中にJCV DNAが検出されます。PMLを示唆する新規の神経症状が現れた場合と同じように、JCV GCNが疑われた場合には、タイサブリを中断してください。また、JCV GCNと診断された場合にはタイサブリの使用を完全に中止してください。

 

◎ページ数の詳細は適正使用ガイドを参照ください。

 

【引用】

・タイサブリ点滴静注300mg適正使用ガイド 4.進行性多巣性白質脳症(PML)等の日和見感染症(2)PMLとは p18-19(DI-J-652)

・Åström KE, Mancall EL, Richardson EP Jr. Progressive multifocal leuko-encephalopathy; a hitherto unrecognized complication of chronic lymphatic leukaemia and Hodgkin’s disease. Brain 1958; 81(1): 93-111.

・Amend KL, Turnbull B, Foskett N, et al. Incidence of progressive multifocal leukoencephalopathy in patients without HIV. Neurology 2010; 75(15): 1326-1332.

・Koralnik IJ. New insights into progressive multifocal leukoencephalopathy. Curr Opin Neurol. 2004; 17(3): 365-370.

・Egli A, Infanti L, Dumoulin A, et al. Prevalence of polyomavirus BK and JC infection and replication in 400 healthy blood donors. J Infect Dis. 2009; 199(6): 837-846.

・Kean JM, Rao S, Wang M, et al. Seroepidemiology of human polyomaviruses. PLoS Pathog. 2009; 5(3):e1000363.

・Knowles WA, Pipkin P, Andrews N, et al. Population-based study of antibody to the human polyomaviruses BKV and JCV and the simian polyomavirus SV40. J Med Virol. 2003; 71(1): 115-123.

・Bozic C, Richman S, Plavina T, et al. Anti-John Cunnigham virus antibody prevalence in multiple sclerosis patients: baseline results of STRATIFY-1. Ann Neurol. 2011; 70(5): 742-750.

・Molloy ES, Calabrese LH. Progressive multifocal leukoencephalopathy: a national estimate of frequency in systemic lupus erythematosus and other rheumatic diseases. Arthritis Rheum. 2009; 60(12): 3761-3765.

・岸田修二、黒田康夫、余郷嘉明、ほか.進行性多巣性白質脳症の診断基準に基づいた全国疫学調査結果.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染に関する調査研究. 平成15年度研究報告書. 2004. pp227-232.

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・Safak M, Khalili K. An overview: Human polyomavirus JC virus and its associated disorders. J Neurovirol. 2003;9 Suppl 1: 3-9.

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・Dong ST, Weber T, Richert N, et al. Classification of natalizumab case report with progressive multifocal leukoencephalopathy. AAN 2012(New Orleans LO; Apr 21-28)

・Agnihotri SP, Dang X, Carter JL, et al. JCV GCN in a natalizumab-treated MS patient is associated with mutations of the VP1 capsid gene. Neurology. 2014; 83(8): 727-732.

・Schippling S, Kempf C, Büchele F, et al. JC virus granule cell neuronopathy and GCN-IRIS under natalizumab treatment. Ann Neurol. 2013; 74(4): 622-626.


 

【作成年月】

2018年9月

【図表あり】

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